43 / 72
本編
42 最終学年
しおりを挟む
僕たちは最終学年となった。この居心地の良い学園に居られるのもあと一年だ。
お揃いのピアスも無事届いた。僕の耳にはイエロー・サファイア、クライヴ様のお耳にはブルー・ダイヤモンドが輝いている。デザインは対になるようになっていて、二人並べばお揃いだと分かるのが、とてもいい。
気がつくとしょっちゅう触れてしまう。
嬉しい気持ちが湧水のように溢れて、胸を満たす。
好きな人とお揃いのものと思うだけで、この小さなピアスが愛おしくなるなんて。
僕とクライヴ様は相変わらず仲良し。休日はデートも行くし、れ、練習だって、している。
けれど……ここ最近、スッと腰を引かれたり、視線を逸らされることが増えてきた。
何故だろう。
触れ合いの練習中も、苦悶の表情をなさることが増えてきた。
「くっ……!」
「んんっ……、はぁ、はぁ、……クライヴ様?」
向かい合わせに座って抱き合い、欲望を放った後。僕はクライヴ様の胸に頭を預けようとして、失敗した。
ぐっと腰を持ち上げられ、すとんと横へ下される。裸のももが柔らかな絨毯の毛にくすぐられて、クライヴ様のお膝の温もりが消えてしまったことに気付く。
「……少し、冷やしてくる。待っていてくれ」
上の服は着たまま、クライヴ様は浴室へと消えていく。確かに、下半身は白濁まみれ。
僕は浄化で綺麗に出来るが、クライヴ様は浴室で拭ってくるのだろう。……そのくらい、言われずとも僕が浄化して差し上げるのに。
もしかしたら、浄化を受けるのを遠慮されている……?
『水の巫子の浄化をお掃除に使うなんて』とは、教会ではよく言われていたことを思い出す。
「もっと、くっついていたかったな……」
あの、気を放った後のぽやぽやした心地の時、クライヴ様にくっついていると、これ以上無く満たされるのだ。
クライヴ様は、違うのだろうか。
気にかかることは、それだけではなかった。
入学したての新入生は、僕に甘いクライヴ様を見て勘違いする生徒が多くなっていた。
僕の同学年と、一つ下の学年なら、眼光で人を刺せる『鬼神』クライヴ様を知っているから彼に言い寄る人なんていなかったのだけど、新入生は違う。
「クライヴ様?どうされましたか?」
「いや……」
クライヴ様と隣り合って勉強をしていると、あの長い指が僕の方に向かって伸び、途中で萎れたように空を掴み、元に戻っていく。
その不思議な動きに小首を傾げると、クライヴ様は疲れたように目を伏せるのだ。
ああ、その目の下の隈を、癒して差し上げたい。
「クライヴ様、その、」
「クライヴで~んかっ!きゃっ!今日も格好良い~!」
「……。」
「お隣いいですか?!わたしも勉強するのでっ!」
僕の言葉は黄色い声によってかき消えた。このところクライヴ様に近寄る、ブリジット・ポップロディ男爵令嬢だ。
僕は正直、この一年生が苦手である。真っ赤な髪とダークブラウンの瞳は綺麗だし、一年生らしいフレッシュな感じで可愛いはずなのに。
僕たちがいるのは図書室の中でも自習に使われる卓。ブリジット嬢はクライヴ様の隣の席に滑り込むようにして座り、クライヴ様の腕に身体を寄せようとしてーー。
クライヴ様が無言で指をくるりと回す。
「きゃっ!?」
影を操作されたブリジット嬢もまたくるりと回転し、元来た道に戻される。そのまま、クライヴ様の指の動きに合わせてテクテクと歩かされている。
「ちょっ、えっ、何、も~!?」
「あれの親はどんな教育をしている。俺の手を煩わせるとはいい度胸だな。ジタリヤ、もう一度抗議文を出せ。何度目だ?」
「三回目です。向上心の強さを他の分野に発揮して欲しいものですね……」
僕はほっと息を吐く。ブリジット嬢は、指先一つもクライヴ様に触れることなく、排除された。それもご本人の力によって。
プリシラ嬢の時とは違う。クライヴ様はまるで小蠅でも追い払うように、こともなげに対処して頂ける。
その、他の人が無下にされているのを喜ぶだなんて僕の性格の悪さが露呈してしまうのだが、じんわりと感動してしまうのは止められなかった。
そう、だから、この人が好き。だから、僕も、頑張らなくちゃ。
「クライヴ様。今日はもう勉強は辞めにして、僕とお話ししてくださいませんか?」
「えっ……しゅり、エル?どうし……」
「お願いします。このままでは、僕、……また後悔しそうなので」
僕はいつになく強行作戦に出た。
お揃いのピアスも無事届いた。僕の耳にはイエロー・サファイア、クライヴ様のお耳にはブルー・ダイヤモンドが輝いている。デザインは対になるようになっていて、二人並べばお揃いだと分かるのが、とてもいい。
気がつくとしょっちゅう触れてしまう。
嬉しい気持ちが湧水のように溢れて、胸を満たす。
好きな人とお揃いのものと思うだけで、この小さなピアスが愛おしくなるなんて。
僕とクライヴ様は相変わらず仲良し。休日はデートも行くし、れ、練習だって、している。
けれど……ここ最近、スッと腰を引かれたり、視線を逸らされることが増えてきた。
何故だろう。
触れ合いの練習中も、苦悶の表情をなさることが増えてきた。
「くっ……!」
「んんっ……、はぁ、はぁ、……クライヴ様?」
向かい合わせに座って抱き合い、欲望を放った後。僕はクライヴ様の胸に頭を預けようとして、失敗した。
ぐっと腰を持ち上げられ、すとんと横へ下される。裸のももが柔らかな絨毯の毛にくすぐられて、クライヴ様のお膝の温もりが消えてしまったことに気付く。
「……少し、冷やしてくる。待っていてくれ」
上の服は着たまま、クライヴ様は浴室へと消えていく。確かに、下半身は白濁まみれ。
僕は浄化で綺麗に出来るが、クライヴ様は浴室で拭ってくるのだろう。……そのくらい、言われずとも僕が浄化して差し上げるのに。
もしかしたら、浄化を受けるのを遠慮されている……?
『水の巫子の浄化をお掃除に使うなんて』とは、教会ではよく言われていたことを思い出す。
「もっと、くっついていたかったな……」
あの、気を放った後のぽやぽやした心地の時、クライヴ様にくっついていると、これ以上無く満たされるのだ。
クライヴ様は、違うのだろうか。
気にかかることは、それだけではなかった。
入学したての新入生は、僕に甘いクライヴ様を見て勘違いする生徒が多くなっていた。
僕の同学年と、一つ下の学年なら、眼光で人を刺せる『鬼神』クライヴ様を知っているから彼に言い寄る人なんていなかったのだけど、新入生は違う。
「クライヴ様?どうされましたか?」
「いや……」
クライヴ様と隣り合って勉強をしていると、あの長い指が僕の方に向かって伸び、途中で萎れたように空を掴み、元に戻っていく。
その不思議な動きに小首を傾げると、クライヴ様は疲れたように目を伏せるのだ。
ああ、その目の下の隈を、癒して差し上げたい。
「クライヴ様、その、」
「クライヴで~んかっ!きゃっ!今日も格好良い~!」
「……。」
「お隣いいですか?!わたしも勉強するのでっ!」
僕の言葉は黄色い声によってかき消えた。このところクライヴ様に近寄る、ブリジット・ポップロディ男爵令嬢だ。
僕は正直、この一年生が苦手である。真っ赤な髪とダークブラウンの瞳は綺麗だし、一年生らしいフレッシュな感じで可愛いはずなのに。
僕たちがいるのは図書室の中でも自習に使われる卓。ブリジット嬢はクライヴ様の隣の席に滑り込むようにして座り、クライヴ様の腕に身体を寄せようとしてーー。
クライヴ様が無言で指をくるりと回す。
「きゃっ!?」
影を操作されたブリジット嬢もまたくるりと回転し、元来た道に戻される。そのまま、クライヴ様の指の動きに合わせてテクテクと歩かされている。
「ちょっ、えっ、何、も~!?」
「あれの親はどんな教育をしている。俺の手を煩わせるとはいい度胸だな。ジタリヤ、もう一度抗議文を出せ。何度目だ?」
「三回目です。向上心の強さを他の分野に発揮して欲しいものですね……」
僕はほっと息を吐く。ブリジット嬢は、指先一つもクライヴ様に触れることなく、排除された。それもご本人の力によって。
プリシラ嬢の時とは違う。クライヴ様はまるで小蠅でも追い払うように、こともなげに対処して頂ける。
その、他の人が無下にされているのを喜ぶだなんて僕の性格の悪さが露呈してしまうのだが、じんわりと感動してしまうのは止められなかった。
そう、だから、この人が好き。だから、僕も、頑張らなくちゃ。
「クライヴ様。今日はもう勉強は辞めにして、僕とお話ししてくださいませんか?」
「えっ……しゅり、エル?どうし……」
「お願いします。このままでは、僕、……また後悔しそうなので」
僕はいつになく強行作戦に出た。
611
あなたにおすすめの小説
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
もう一度君に会えたなら、愛してると言わせてくれるだろうか
まんまる
BL
王太子であるテオバルトは、婚約者の公爵家三男のリアンを蔑ろにして、男爵令嬢のミランジュと常に行動を共にしている。
そんな時、ミランジュがリアンの差し金で酷い目にあったと泣きついて来た。
テオバルトはリアンの弁解も聞かず、一方的に責めてしまう。
そしてその日の夜、テオバルトの元に訃報が届く。
大人になりきれない王太子テオバルト×無口で一途な公爵家三男リアン
ハッピーエンドかどうかは読んでからのお楽しみという事で。
テオバルドとリアンの息子の第一王子のお話を《もう一度君に会えたなら~2》として上げました。
※画像は男の子メーカーpicrewさんよりお借りしました。
そばかす糸目はのんびりしたい
楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。
母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。
ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。
ユージンは、のんびりするのが好きだった。
いつでも、のんびりしたいと思っている。
でも何故か忙しい。
ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。
いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。
果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。
懐かれ体質が好きな方向けです。
優秀な婚約者が去った後の世界
月樹《つき》
BL
公爵令嬢パトリシアは婚約者である王太子ラファエル様に会った瞬間、前世の記憶を思い出した。そして、ここが前世の自分が読んでいた小説『光溢れる国であなたと…』の世界で、自分は光の聖女と王太子ラファエルの恋を邪魔する悪役令嬢パトリシアだと…。
パトリシアは前世の知識もフル活用し、幼い頃からいつでも逃げ出せるよう腕を磨き、そして準備が整ったところでこちらから婚約破棄を告げ、母国を捨てた…。
このお話は捨てられた後の王太子ラファエルのお話です。
5回も婚約破棄されたんで、もう関わりたくありません
くるむ
BL
進化により男も子を産め、同性婚が当たり前となった世界で、
ノエル・モンゴメリー侯爵令息はルーク・クラーク公爵令息と婚約するが、本命の伯爵令嬢を諦められないからと破棄をされてしまう。その後辛い日々を送り若くして死んでしまうが、なぜかいつも婚約破棄をされる朝に巻き戻ってしまう。しかも5回も。
だが6回目に巻き戻った時、婚約破棄当時ではなく、ルークと婚約する前まで巻き戻っていた。
今度こそ、自分が不幸になる切っ掛けとなるルークに近づかないようにと決意するノエルだが……。
嫌われ魔術師の俺は元夫への恋心を消去する
SKYTRICK
BL
旧題:恋愛感情抹消魔法で元夫への恋を消去する
☆11/28完結しました。
☆第11回BL小説大賞奨励賞受賞しました。ありがとうございます!
冷酷大元帥×元娼夫の忘れられた夫
——「また俺を好きになるって言ったのに、嘘つき」
元娼夫で現魔術師であるエディことサラは五年ぶりに祖国・ファルンに帰国した。しかし暫しの帰郷を味わう間も無く、直後、ファルン王国軍の大元帥であるロイ・オークランスの使者が元帥命令を掲げてサラの元へやってくる。
ロイ・オークランスの名を知らぬ者は世界でもそうそういない。魔族の血を引くロイは人間から畏怖を大いに集めながらも、大将として国防戦争に打ち勝ち、たった二十九歳で大元帥として全軍のトップに立っている。
その元帥命令の内容というのは、五年前に最愛の妻を亡くしたロイを、魔族への本能的な恐怖を感じないサラが慰めろというものだった。
ロイは妻であるリネ・オークランスを亡くし、悲しみに苛まれている。あまりの辛さで『奥様』に関する記憶すら忘却してしまったらしい。半ば強引にロイの元へ連れていかれるサラは、彼に己を『サラ』と名乗る。だが、
——「失せろ。お前のような娼夫など必要としていない」
噂通り冷酷なロイの口からは罵詈雑言が放たれた。ロイは穢らわしい娼夫を睨みつけ去ってしまう。使者らは最愛の妻を亡くしたロイを憐れむばかりで、まるでサラの様子を気にしていない。
誰も、サラこそが五年前に亡くなった『奥様』であり、最愛のその人であるとは気付いていないようだった。
しかし、最大の問題は元夫に存在を忘れられていることではない。
サラが未だにロイを愛しているという事実だ。
仕方なく、『恋愛感情抹消魔法』を己にかけることにするサラだが——……
☆お読みくださりありがとうございます。良ければ感想などいただけるとパワーになります!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる