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第二章 二回目の学園生活
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しおりを挟む自分はもしかしてマルセルクと似た者同士なのだろうか。
そう考えて鬱々としたリスティアの気持ちは、すぐにぎくしゃくした態度に表れた。そうなることは、二人にはお見通しだったらしい。
あれから数日後、ノエルに呼び出されて寮の部屋に行くと、アルバートと並んで二人で出迎えられた。
なんとなく魔力交換の話題に触れないようそわそわ、当たり障りない会話をしていたのに、ついに、来た。
「リスティア。まずは、アルバートが言いたい事があるみたいなので、聞いてくれますか?」
「は……ハイ」
アルバートが緊張した面持ちで口を開く。
「あの時は、すまない。その……物凄く、ティアを、な、な、鳴かせたくなって……、混乱した。多分、物凄く相性が良かったのだと思う」
鳴かせたい、とは。
ボンッと火のついたように火照ってしまった。
あの遠慮がちで、思慮深い、アルバートが?
今だって自分で言った言葉にすら恥じらっているような、アルバートが?
「自分でも自分の凶暴さに驚いた。怖かったと思う……申し訳ない。ノエルを選ぼうとも…………納得、いや……ンンッ……」
「……?」
アルバートが言い淀む。また言葉を選んで考え込んでいるのだろう。リスティアはそれをゆっくりと待った。
やがて決意したように顔を上げたアルバートに、もう迷いはなかった。
「ノエルを選んだとしても、俺はティアの側にいたい。それだけは許して欲しい。何年かかろうとも、爺になっても、ティアを愛し抜く。あなたの側に居られないのなら、手早くこの世界から去ろう」
「ちょ……ちょっと待って。本当に、君たち似ているね……?本当は双子じゃない?」
「いや?」
「まさか」
リスティアは頭を抱える。どちらも熱烈なまでに自分を欲してくれている。そんなの、選べる訳がない。
そこで静観していたノエルが、口を開く。
「つまりリスティアは、私とアルバートという、少し癖のあるアルファ二人に好かれてしまった訳です。どちらかを選んでも、もう一人は諦められないし、厄介なことに、多分死んでまで取り憑きます」
「なんて……?」
それはとても不穏な言葉であり、一方で、嬉しさもあった。喜んでいいのかどうか迷いながら、熱くなる頬を誤魔化しきれない。
「それに、……自惚れでなければ、リスティアは、私たちを二人とも気に入ってくれて、いますよね。そこで、提案。私たち二人共を、受け入れてくれませんか?」
「え"っ」
リスティアの頭の中に、あのおぞましい光景が甦る。
宰相令息のものを口に咥え、泣きながら、騎士団長令息のものも受け入れていた、フィルの姿だ。
(……あれを?僕が?)
顔を青ざめさせたリスティアに気付き、アルバートが低く落ち着いた声で言う。
「ティア。いつか、どちらか一人を選べるかもしれない。けれど、それは今じゃない。俺たち二人と付き合っているうちに気付くかもしれない、それまででいい。一人と二人で、恋人になろう。その……少しでもいい、好ましいと思っていてくれているなら」
「そうだね。リスティアも、その……二人を相手にするなら、オメガ本能である番にはなれない、そのリスクを負ってもらうことになります。心苦しいですが……」
「それは……オメガでも、一生頸を噛まれずに過ごす人もたくさんいる。むしろ、その、誰であっても、番になる気はないから……」
番関係で割を食うのは、いつだってオメガの方。
未だ臆病なリスティアの心が癒えるまで、噛まれるのは遠慮したい所だった。今の所、そんな日が来るとは思えず、二人には話しておくべきことだった。
「ティア……もちろんだ。ティアの考えを尊重する」
「そ、それに!その……、その、僕は、君たちの言うとおり、二人のうちどちらかなんて、選べません。ごめんなさい。君たちがいいと言っても、二人を好ましいと思っている僕自身に、嫌悪感を感じているんです……」
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