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40 最終話※
「…………んぅ」
「起きたかな?おはよう、ディア」
朝日に照らされた美貌が、爽やかに笑っている。
昨晩あれだけディディアに注ぎ込んだエロ魔人であるのに、今は『性欲?そんなの知りません』みたいな爽やかさで笑っていた。
裸のまま。シーツがさらさらであることを考えると、猫童子がこっそりお世話しに来てくれたのかもしれない。
「お、お“ばよ"ゔ、ござい"ま"ず……」
喉が枯れている。アレクサンダーは軽く笑うと、窓辺の水差しから水を口に含み、覆い被さって、唇を合わせてきた。
薄く開いた唇がしっとりと濡れて、生温い水が落ちてくる。ディディアは雛鳥のように、こくこくと飲んだ。
アレクサンダーは愛おしそうにディディアを撫でながら、二回、三回と繰り返す。
「ん…………はぁ。ありがとうございます、アレク様」
「ううん。お腹空いたよね。ご飯、食べられそう?」
「はい……あ、」
起きあがろうとしたディディアは、全く腰がたたないのに気付いた。力が入らない。それに、まだ何か挟まっているような気もする。
身体を見下ろすと、呆れるほどの愛跡。恥ずかしくなって着るものを探すが、何も無い。
「主人、お持ちしましたニャー。栄養ドリンク付きニャー」
「んん、ありがとう……」
サクラには常日頃から裸は見せ慣れているものの、こういう、明らかな事後は気恥ずかしい。しかしそれはディディアのみの感情らしく、サクラはいつも通りに配膳し、せかせかと去っていく。
「本当はこの色っぽいディアは誰にも見せたくないんだけど……サクラは猫さんだから、私も嫉妬しなくて助かるよ。はい、あーん」
アレクサンダーは流れるようにディディアの腰を支え、粥をひと匙、ひと匙、ふうふうと冷まして与えてくれた。
体はとても重だるく、力が抜け切ってフニャフニャになっている。アレクサンダーも嬉しそうに介護してくれているし、と、ディディアは流されるまま食事をした。
(【治癒】で治せない疲れだけど…………この疲れも、悪くない)
食事を終えてまたうとうととしていると、アレクサンダーはディディアの上へ覆い被さってキスをした。
優しい、ほどけるようなキスだ。まるで果実を啄ばみに来た小鳥のように、キスをして、顔を見て満足げに微笑み、またキスをしている。
「ん、……ん、なに、か?」
「んーん。可愛いが止まらなくて。胸がいっぱいなんだ」
「……ふふ」
「あーもう。可愛い……」
すべらかな肌が擦れるのも、気持ち良い。次第にディディアを撫でる手は下へ降りていき、鎖骨や、胸の飾り、脇腹など、肌と言う肌を撫でていった。
「ん…………っ」
愛しい人に触られると、ディディアの肌は自分の思うよりずっと敏感になるらしい。ふぅ、ふぅ、と上がっていく熱い息を漏らしていると、アレクサンダーがぺろ、と自身の唇を舐めた。
「――あ、」
その表情は、ディディアに衝撃を与えるほど淫靡だった。明るい部屋なのに、アレクサンダーは全身から色気を匂い立たせており、またも捕食される予感にぶるりと震えた。
じわっ。
腹の奥から、昨日の蜜が、とろり、溢れる。
期待をするかのように、ひく、ひく、と媚肉が蠢く。
「っん……」
「……大丈夫、全部、私がしてあげるからね」
小ぶりな双丘を割り開いて、まだ潤っている後孔に手が伸びてくる。力の入らない脚は無防備に曝け出すこととなり、明るいこともあって非常に恥ずかしい。
「や、アレク……様……、そんなに見ないでください!」
「ううん、見るよ。だってディアのほくろの数も性感帯も、全て把握したいんだもの」
「ううう…………」
アレクサンダーは昨日の余裕のなさから一変し、じっくり、ねっとりと、獲物を嬲る方針にしたらしい。
後孔の縁には、指が添えられたまま。
もう片方の手は軽く羽のような手付きで、触れられるたびぴくぴくと震える。アレクサンダーの動きは最小限で、ゆっくりであるのに、ディディアに与えられる快感は的確だった。
アレクサンダーの学習能力が高すぎるのだ。特に、ディディアという科目においては。
「はっ…………はぅ…………っ、も、早く、アレク様……っ、」
「んー?」
「早く、入れて……ください……っ」
「んー」
桃色の花芯はすっかり先走りで艶々に濡れ、直接的な刺激が欲しくて泣いている。かといってディディアの下半身はもう役立たずなので、与えられるのを今か今かと待つしかない。
「おねがいっ……!アレクさま……っ!」
「あはっ…………好き…………」
アレクサンダーはうっそりと笑うと、ディディアの細腰を捕まえた。そして直立する熱棒を秘所へ当てると、グチュンッ!一気に貫いたのだった。
「…………――――――ッ!」
視界がスパークする。瞬間的に絶頂したディディ
アは、背中が弓なりに反ったまま、ガクガクと震えた。
「…………あっ、………………アッ……」
「持っていかれるところだった……危ない……」
「ウッ……あ、あ、あ、あ、」
ゆったりとした、散漫な動きだ。それなのにいちいち良いところを突いてくるものだから、ディディアは休む間もなくイキ続けることになった。
ぱちゅっ。ぱちゅ。パチュンッ
「ぁ……っ、ふ、ぁ……っ!」
自分の声は、自分でないかのような色を乗せていた。
はしたなくて恥ずかしくて、涙目で見上げるアレクサンダーの、意地悪そうな顔にさえ腹の奥がキュンと勝手に締め付けて、また達してしまう。
「気持ちいいね、ディア…………すごく綺麗で、色っぽい。どエロいよ……はぁ、止まらない」
「ひぅ……っ、んっ、にゃ、ぁ……っ」
くちゅくちゅ。はむはむ。弱い耳のあたりも喰みながら囁かれると、それだけで頭の芯が痺れてしまう。
(好き、愛している。気持ち良い、気持ち良くて堪らない。好き。好き…………っ)
ディディアの身体は持ち主の意思に関係なく、絶頂する。夜も、昼も。
食事と睡眠の時間を除いて、ディディアはたっぷりと愛され尽くされるのであった。
若さ溢れる蜜月も、十日ほど経ったところで、ディディアはようやくアレクサンダーの寝顔を拝めることとなった。
(可愛い顔をして……)
あどけない寝顔に騙されてはいけない。本来のアレクサンダーの体格から想像通りの、いや、想像以上に強靭な腰と逸物は、事典通りに『絶倫』だった。
ディディアだって体力はつけている方であるのに、それを凌駕してくる。
しかしそれも憎らしいほど愛しいのだから、つける薬はない。痛む腰に立たない脚は、こやつのせいである。
腹立ち紛れに、アレクサンダーの胸へかぷりと噛みついた。弾力のある胸に歯を立てて、ハムムと力を込める。しかし起こさないように、絶妙な塩梅を心がけて。
「……ふふ。もう、何をしているんだい?かわいいことを……」
それを見逃すアレクサンダーではなかった。ディディアを見つめる深紅の瞳は、もうどろりと蕩けている。いつから見ていたのだろうか。
「う……いえ……どうにか喰らってやろうと思いまして」
「喜んで。食べられるものならね」
「むむ」
くすくす笑い合う二人の蜜月は、永遠に続く。
仲睦まじい王太子夫妻は周囲にも甘い影響を及ぼした。多くのカップルを量産し一大ベビーブームを巻き起こしたのだ。
年々絆の深まる二人を邪魔しようとする者は稀にいることにはいたが、大抵は自滅していく。
幸せそうな王太子夫妻を祝福し、羨望の眼差しで見ていた者はその後良い縁が見つかり、夫婦となって……こうして国ごと栄えた時代が築かれたのだが、それが何故かは当人らだけが与り知らないことであった。
End
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neroko様、感想ありがとうございます!
主人公の性格が魅力的と仰って頂き光栄です!(●′ω`人′ω`●)作者も神様ももっと出したかったので、もっと読みたいと思っていただけて嬉しいです。
そうですね、なかなか思い通りに書くってのは難しい……と反省&精進いたします(´∀`;)
最後まで読んでくださりありがとうございます!
染西 乱様、感想ありがとうございます!
さっぱりしていただけたようで光栄です!´∀`*)b
きっと子沢山間違いなしと思われます(●′ω`人′ω`●)