不誠実な人たち

神月 一乃

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後編

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「新奈、気が付いた?」
 意識が戻った時、目の前にいたのは高藤だった。
「スタンガン痛かったね。跡になっていたよ」
「……あ」
「無理に話さなくてもいいから」
「こ……こ」
「俺の家だよ」
「し……ご、と」
「倒産させた。元から新奈を助けるために作った会社だ。鼠が入り込んだ会社に用はない」
 一緒に仕事してた人たちに別の意味で迷惑をかけた、新奈の自己嫌悪に高藤が気づいたのだろう、唇に笑みを浮かべていた。
「本当の従業員なんてあの女と、もう一人くらいだ。二人とも新奈を裏切ったんだから、当然だろう? 他は俺が指示して色々動いていたから問題ない」
 やっと回りだした頭で、いつの間にか呼び捨てにされているという事実と、衣一枚羽織っていない自分の姿に驚いた。
「新奈の身体は奇麗だ。あいつらも馬鹿だよね。新奈を大切にしていたら、大切にする人のところに嫁に出していれば、俺は動かなかったのに」
「……え?」
「ずっと見ていたんだよ。でもね、手に入れちゃいけないと思って我慢していた。……あいつも周囲の甘言に踊らされなければよかったのに」
 胸元に高藤が顔を埋める。そしてピリッと甘い痛みが身体中に走った。
「綺麗に跡が付いた。ずっとこうやって新奈に俺の印をつけたかった。新奈をドロドロに甘やかして、俺のもので染めて、俺が選んだものですべてを包みたかった」
「た、か、……と」
 確か、新奈があの人と付き合っていた頃、高藤は結婚していたはずだ。
「あぁ、とうの昔に離婚したよ。だって、新奈が幸せになる条件で、あの女と結婚したんだ。……それなのに、あいつと一緒になって新奈を苦しめた。それだけでも十分離婚案件なのに、今回の新奈の結婚先。俺が我慢する必要なんてどこにもない」
 だからね、と高藤は怪しく微笑む。
「もう、新奈を手放さない。あいつを想っていてもいい。誰が好きでもいい。俺の傍にいて」
「……は、い」
 頷いた新奈に気をよくした高藤が、優しく抱きしめてきた。


 起き上がれるようになり、首輪が付いていることに気づいた。
「それは新奈がここから出られないようにするものだよ。新奈が窓や扉に近づけば自動で鍵がかかる。どうやって開けても、ね。行けるのはそこのキッチンと、トイレ、それからバスルームだけ。
 そうやって置けばあいつらが来たとしても、新奈は連れていけないからね」
 それ以前に、新奈がまとえる服というのが一切ない。その状態でどうしろというのか。
「やっと手に入れたんだ。手離してなるものか」
 ベッドからひょいと持ち上げ、バスルームへと連れて行かれた。

「……あっ……た、か……さん」
 俺が洗いたい。その一言で新奈の腕は拘束され、高藤の手が身体中を優しくまさぐっていく。
「この先、『高藤』なんて呼ばれても返事はしない。俺の名前知ってるでしょう?」
 そう言うなり、くいっと足を広げ、蜜口の上にある小さな突起にシャワーを強く当てていく。
「あっ……あぁぁぁ!! たか……とうさんっ」
 絶頂でおかしくなる寸前、そのシャワーは離れた。

 そのあとも、達する前に止めるという状態を何度も続ける高藤。
「あぁぁっ!! すぐるさんっ!!」
「やっと呼んだね、新奈。思う存分いかせてあげる」
 高藤のそれ・・が新奈の蜜壺へと侵入してく。久しぶりの感覚に、新奈はあっという間に快楽の波に飲み込まれた。


 快楽の波で気を失った新奈を、傑は優しく抱きしめた。
 初めて会った時から特別な存在、それが新奈である。

 新奈の母は、高藤家でお手伝いとして働いていた。そんな女性に気まぐれで傑の父親が手を出した。そして産まれたのが、新奈である。
 妊娠に最初に気づいたのは、傑で。堕胎できないように策を巡らせた。
 傑が何かに執着することに喜びを見出した、傑の母親が加担した。そして産まれたのが、新奈である。名づけも傑だった。

 お手伝いの女は発狂し、その夫は産まれてきた新奈を邪険にした。だから、傑は傍で新奈の成長を見守ろうとした。
 そこで傑の異常なまでの執着に両親が危機感を募らせた。遅いよ、幼いながらも聡かった傑は両親にそう告げた。

 必死で引き離そうとする両親。引き留めておこうとする傑。初戦は傑の黒星で終わった。

 しばらく会えない歳月が過ぎた。
 それで安心した両親の隙をかいくぐり、何とか新奈を見つけたとき、新奈は笑顔も何もなかった。
 その時、傑は二十歳、新奈は十四だった。

 新奈を守るために、その一心で傑は努力した。友人と新奈が付き合うようになり、傍でも守れる、そう安心していたのに。
 友人は新奈と傑を裏切った。おそらく父親の仕業だろう。

 そして、新奈が二十二の時、傑の傍からいなくなった。
 友人を詰った。事も無げに友人はこう告げた「ただの遊びだった」と。その一言で縁を切るには十分すぎた。

 新奈が幸せになるのなら、その理由だけで結婚した女性も、傑を裏切っていた。不貞の証拠を叩きつけ、離婚に踏み切ろうとした時、妻の実家も両親も反対してきた。慰謝料を一切貰わないこと、妻は高藤家の養子とすることなどを盛り込んで、何とか離婚にたどり着いたのはそれから二年後。
 一年かけて新奈を探した。

 またしても暗い顔をする新奈を見つけた時、箍が外れた。もう、我慢する必要はないのだと。
 最初はゆっくりと。この先新奈を幸せにすると改心するなら、と思った。だが、新奈に漬けていたボイスレコーダーが、婚家の暴言を拾った。
 じわりじわりと新奈の包囲網を縮め、あの日、動いた愛人と従業員を捕らえると同時に、新奈をこの家に連れてきた。

 血がつながっているから、その理由で蓋をしていた己の欲望を解き放ったのだ。


「ずっと、こうしていたかったんだよ、新奈」
 未だ気を失ったままの新奈をベッドに連れて行くと、両手はベッドの頭に縛り付けた。己しか見れないようにしてやる。

 裸体の新奈はとても綺麗で。誰の手にも穢されていないのではないのかと思えてくる。あの男から聞いていた話の中で、手を出していたのは知っているはずなのに。
「新奈のハジメテも俺が欲しかったかも」
 最初から我慢しなければよかったのだ。
「……ん」
「起きた? 新奈。綺麗だよ」
 そして己のそれを、新奈の蜜壺に再度挿れた。

「あっ……あぁ」
 意識が未だ定まらぬ中でも、新奈は傑に感じていた。
「あぁ、新奈。……新奈。俺だけの新奈」
「たか……っう」
「違うでしょ」
「すぐる……さん」
「よくできました。ご褒美」
「あぁぁぁぁ!!」
 最奥でぐりぐりと動かすだけで、あっという間に達していた。
「もう、離したりはしないよ。新奈は俺が幸せにするから」
「……たか……傑、さん?」
「愛している。新奈」
 新奈の感じるところを探しつつ、傑はゆっくりと動く。
「我慢、しないから」
 喘ぎ声の合間で、傑の名前を呼ぶ新奈の顔を愛おし気に撫でた。
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