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大円団?
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抱きかかえたまま、禅雁は指定された場所まで歩く。
「叔父さん、迎えに来た」
「おや、ありがとうございます」
「叔父さん!?」
何故か尋花が驚いていたのはそこだった。
「この子は、兄の一番上の子供です」
そう言いながら後部座席に尋花を乗せ、その隣に座った。
「珍しく助手席じゃないんだ。というか妹を拾うから、叔父さんは前で」
「いえいえ。知らない人間と隣同士よりも、知ってる人間の方が……」
「歩く猥褻物の叔父さんがそばよりまし」
「酷いものですねぇ」
そんな話をしながら、寺へと向かっていく。
「まぁまぁ、大丈夫ですか?」
兄嫁がすぐに出迎え、尋花を連れて行く。
そして、兄と報告会をしている間に尋花が戻ってきた。
目の毒である。
風呂に入り、髪を少しアップにして浴衣を着ただけなのに色香が凄い。
己の下半身の一部に意識が集中する。
「……兄さん」
「何だ? ふざけたことならすぐ殴るぞ?」
「どうやらまだ健全……」
最後まで言わぬうちに見事に拳骨を落とされた。
「……こんな弟ですまん」
「い……いえ。色々と助けていただきました」
二人揃って頭を下げあっている。
「尋花さん、どうしますか? お兄さんと縁を切ります?」
「え?」
兄嫁の言葉に、尋花が驚いていた。
「今までも色々と面倒を起こして、その度に尋花さんが迷惑を被っていたようですから。そういう意味では禅雁さんも色々と面倒を起こす人ですけど」
「義姉さん……」
「何なら禅雁さんを追い出して、尋花さんを保護したいくらいです」
「酷いですよ、義姉さん」
「冗談ですよ。縁切り寺として有名なのは禅雁さんのおかげですし。ただの煩悩まみれの坊主でしたらとっくに外に追い出してますよ」
やはり一番怖いのは兄嫁である。
「……えっと……その……」
驚く尋花に禅雁は爆弾を投下した。
「出来れば、この寺にいていただけませんか? 私と一緒に」
あまりにも色々省きすぎたプロポーズは、兄一家全員から非難を買うことになった。
「早い話が、あなたに惚れてしまったんですよ。二周りくらい違う男でよければ嫁に来て……」
「だからまだ早いっつってんだろ!? こんないい女性をお前の生贄にするつもりはないっ!」
お礼と称し、寺に足を運ぶようになった尋花。尋花が来るたび兄弟の心温まる会話がなされ、また一つこの寺の風物詩になっていた。
そして、尋花が禅雁のプロポーズに承諾するまでこれは続き、承諾したあとは「本当にいいのか? 人生諦めるのはまだ早い」と禅雁の兄に言われる羽目に陥り、結婚後も別の心温まる会話がなされるのはまた別の話である。
「叔父さん、迎えに来た」
「おや、ありがとうございます」
「叔父さん!?」
何故か尋花が驚いていたのはそこだった。
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そう言いながら後部座席に尋花を乗せ、その隣に座った。
「珍しく助手席じゃないんだ。というか妹を拾うから、叔父さんは前で」
「いえいえ。知らない人間と隣同士よりも、知ってる人間の方が……」
「歩く猥褻物の叔父さんがそばよりまし」
「酷いものですねぇ」
そんな話をしながら、寺へと向かっていく。
「まぁまぁ、大丈夫ですか?」
兄嫁がすぐに出迎え、尋花を連れて行く。
そして、兄と報告会をしている間に尋花が戻ってきた。
目の毒である。
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己の下半身の一部に意識が集中する。
「……兄さん」
「何だ? ふざけたことならすぐ殴るぞ?」
「どうやらまだ健全……」
最後まで言わぬうちに見事に拳骨を落とされた。
「……こんな弟ですまん」
「い……いえ。色々と助けていただきました」
二人揃って頭を下げあっている。
「尋花さん、どうしますか? お兄さんと縁を切ります?」
「え?」
兄嫁の言葉に、尋花が驚いていた。
「今までも色々と面倒を起こして、その度に尋花さんが迷惑を被っていたようですから。そういう意味では禅雁さんも色々と面倒を起こす人ですけど」
「義姉さん……」
「何なら禅雁さんを追い出して、尋花さんを保護したいくらいです」
「酷いですよ、義姉さん」
「冗談ですよ。縁切り寺として有名なのは禅雁さんのおかげですし。ただの煩悩まみれの坊主でしたらとっくに外に追い出してますよ」
やはり一番怖いのは兄嫁である。
「……えっと……その……」
驚く尋花に禅雁は爆弾を投下した。
「出来れば、この寺にいていただけませんか? 私と一緒に」
あまりにも色々省きすぎたプロポーズは、兄一家全員から非難を買うことになった。
「早い話が、あなたに惚れてしまったんですよ。二周りくらい違う男でよければ嫁に来て……」
「だからまだ早いっつってんだろ!? こんないい女性をお前の生贄にするつもりはないっ!」
お礼と称し、寺に足を運ぶようになった尋花。尋花が来るたび兄弟の心温まる会話がなされ、また一つこの寺の風物詩になっていた。
そして、尋花が禅雁のプロポーズに承諾するまでこれは続き、承諾したあとは「本当にいいのか? 人生諦めるのはまだ早い」と禅雁の兄に言われる羽目に陥り、結婚後も別の心温まる会話がなされるのはまた別の話である。
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