煩悩僧侶、ナースに恋する

神月 一乃

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閑話

クリスマスから正月に至るまで~その三~

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「……そろそろ時間だな。ったく、とあるお人が『鐘がうるさい。鳴らすな』とわめいてきた」
 時計を見た兄が心底嫌そうに呟いた。禅雁の生家でもある、この寺の鐘の時間は特殊だ。小学生が学校から推奨される帰宅時間十分前に鳴らすということになっているのだ。
 それゆえ、時計を持っていない子供たちでも外で遊んでいれば気づく。
「今話題の『騒音』ですか? あそこの家のスピーカーさんのほうがやかましいと思いますが」
「禅雁、それ本人に言うなよ」
 やはりあの人か。禅雁は思わずため息をついた。
「除夜の鐘は年明けの風物詩だと思ってました」
「相手が自己中なだけだよ。毎年PTA総会とか、回覧板とか広報とかでもきちんと是非の確認してるのにさ」
 尋花の言葉に甥っ子も同意する。
「今度うるさいと言ってきたら、私が『対応』しますよ、兄さん」
「お前には任せたくないんだがなぁ」
 下種な俗物僧侶禅雁、またの名を歩く最終兵器という。


 除夜の鐘の鳴り響く頃。

 尋花は、禅雁の部屋へ連れ込まれていた。
「お泊りするお部屋に戻りたいのですが」
「却下です」
 すでに臨戦態勢に入った禅雁の下半身事情など、尋花の知ったことではない。
「除夜の鐘の音で煩悩を少しは追い払ってください!」
 百八回の鐘の音由来を聞いた尋花の叫びはあっさりと却下され、服に手がかけられた。
「ちょっ!?」
「昔から逆に煩悩が集まってくるんですよねぇ」
「!?」
 煩悩が去るようにと、鐘鳴らしをしたこともあったという。すべて逆効果、という素晴らしい経歴が加わったと。
 考えてみれば、除夜の鐘ごときで煩悩がなくなるわけがない。本山でも無理なのだから。
「というわけで諦めてください」
「えぇぇぇぇ!?」
 捕まったのが運の尽きというやつなのだろうか。尋花は思わず現実逃避をしたくなった。


 襖一枚しか隔てるものはない。
 隣の部屋は禅雁が書斎代わりに使っている。書斎といってもあるものはPC、アダルトグッズにAVだった・・・。尋花以外に反応しなくなったため、AV関係は全部破棄した。それを尋花は知らない。
 書斎と逆の襖は廊下に繋がっている。さすがに衣服を乱した状態でそちらに行く気はないらしい。

 くすり、おもわず禅雁は顔に笑みを浮かべた。
「禅雁さん? ……ひゃぁっ!」
 己に意識が向いた瞬間を狙い、ブラのホックを外す。そしてそのまま乳首をくりっと抓る。
「油断大敵、ですよ」
 何か言おうとした唇をふさぎ、舌を絡めていく。
 だんだんと尋花の身体から力が抜けていくのが分かった。

 そのまま尋花を布団の上に預け、ショーツに手をかける。
「やっ! 今日の下着は……」
「却下です」
 尋花が着ていなければ下着になど興味はない。脱がせてしまえばただの布切れである。
 そのまま密口の上にある蕾を丹念に舐めていく。

 以前はこんな行為に興味などなかったが、尋花が喜ぶと分かり、執拗なまでにするようになった。
「あっあぁっ……あぁぁぁぁ!!」
 びくんびくんと尋花の身体がはねる。

 乳首も密口も弄ってくれと言わんばかりに主張し始めた。

 ゴムを己自身につけると、そのまま一気に貫く。
「あぁぁぁぁ!!」
 ぐちゅり、という卑猥な音をかき消すほどの喘ぎ声。乳首を弄れば、あっという間に達していた。
「尋花さん、これからですよ」
「あっ……そんな……」
 尋花の言葉を無視し、尋花をあおむけからうつ伏せに変える。尻を持ち上げ、再度れれば、それだけで弓なりの身体を、強張らせていく。
「尋花さん、もっと足を開いてください。私と尋花さんがつながっているところを、じっくり私に見せてください」
「あっ、あっ、あっ」
 言ったところで、尋花がそう出来ないことなど、禅雁はわかりきっていた。だから、己の足を使い、尋花の足を広げる。
「尋花さん、つながっているところが、綺麗に見えました。いやらしく私のを飲み込んでいますよ」
「やぁっ」
 恥ずかしさで、きゅっと絞まる。なんとも可愛らしい。

 尋花の尻に打ち付けるように、腰を激しく動かす。
 部屋の中にあるのは、尋花の喘ぎ声と、卑猥な音のみ。兄と甥っ子が鳴らす除夜の鐘の音など聞こえない。
「あぁぁぁぁぁぁっ!!」
 尋花の身体を己に寄せ、乳首と蕾を優しく抓る。快楽に飲み込まれた顔で、再度達していた。

 おそらく、ほかの部屋にも聞こえているであろう、尋花の喘ぎ声。

 あまり激しくすると、除夜の鐘に関わっていない身内が全員で押し寄せてくる。
「今日はここまでにしますよ。続きは尋花さんの部屋で」
 そう言って尋花の口を塞ぎ、蕾を弄り、激しく腰を打ち付ける。
「んんんんーーーーー!!」

 昔だったら、これくらいで欲望を吐けなかったな、などと思いながら、ゴム越しに欲望を吐きだした。

 そのあと、尋花の身体を濡れタオルで拭き、己の浴衣を羽織らせた。
 すぅすぅと寝息をたてる尋花の額に口づけをして、禅雁も眠りについた。


 元旦。
 寺に来た檀家の方々にさんざん言われる羽目になった。
「除夜の鐘担当は、誰だったんだい?」
「禅雁さんにしちゃ煩悩少な目だったからねぇ」
「若さんかと思ってたんだが」
「住職さんじゃねぇのか?」
「大住職さんかい」
 どういう意味なのか、尋花は分からず、思わず禅雁を見つめた。
「兄と甥っ子ですよ。私は毎度却下されるじゃないですか」
「当ったり前だろ。禅雁さんの鐘は煩悩まみれで、追い払うっていうご利益がない」
 どんな鐘だ? 心の中で突っ込みを入れておくだけにしておいた。
「いや、澄んでいる音と、悟るような音だったんだが、煩悩が少しばかり混じってたからな」
 檀家総代を務めるという年配の男が笑って言う。毎年のことながら、誰が鐘を鳴らしたのか、話になるならしい。
「私の煩悩ダダ漏れでしたから、それが混じったのかもしれませんね」
 何せ尋花さんが一緒にいましたし、お預け食らいましたし。そう、あっさりと禅雁が披露した。
「いい加減にしろ! お前は!! 尋花さんの顔が真っ赤じゃないか!!」
 すごい勢いで禅雁の頭を叩いて言ったのは、禅雁の兄だった。
「ほんっとうに、こんな弟で申し訳ない!」
「……いえ……」
 なおさら注目を集めるのでやめてもらえますか? その言葉が出てこない。

 気づいた姪っ子に救出され、台所に避難したものの、そこにいた三人にまたしても謝られ、居心地の悪い尋花だった。
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