12 / 12
吟遊詩人、旅する
訃報
しおりを挟む引きずられたサブマスターを見た鍛冶師はため息をついた。
「親父、仕事大丈夫?」
「お前のところに案内したし、あとは帰る。この嬢ちゃんが料理するためのナイフが欲しいんだと」
「戦闘用じゃなくて?」
鍛冶師の言葉に吟遊詩人がこくりと頷いた。
「珍しい。俺が子供の頃一緒について回った俺には、武器を持たせて戦わせたのに」
鍛冶師の言葉は、吟遊詩人が年を取らないような言い方だった。確かに、鍛冶師はフィアの父親よりも少し上くらいに見える。そして、それよりも吟遊詩人はずっと若い。
「私はハーフエルフだからね。年を取るのが遅い」
「……へぇ」
初めて吟遊詩人のことを聞いたフィアだった。
「親父とも旅したことがあるんだっけ」
「昔の話だな」
そんな話をしながらも、鍛冶師はフィアの手をはかっていた。
「嬢ちゃん、年齢は?」
「じ……十歳です」
年齢は言いたくない。言えば驚かれるから。
「十か。……吟遊詩人、十八になったらまた連れてこれるか?」
「分からん」
「だよなぁ。紹介状を書いておくから、もし十八になってここに来れない場合は、この絵が描いてある鍛冶師のところに行くといい」
「?」
「今よりも大きくなっていた場合、作り直しが必要だからな。あふたーさーびすというやつだ」
そんなものがあるとは知らなかった。村では子供用のナイフは、お下がりで渡されるものだ。
「てっきり十八になっているのだと思っていたが」
「母ちゃん譲りだと思います」
「そうか。だと、君の母親はどこ出身なのかある程度想像がつく」
まさかの回答だった。
「おそらく、青の大陸出身だろうな」
「あおの、たいりく?」
「そう。ここは緑の大陸と呼ばれる。風の調子が良ければ船で三月。ここから一番近い外の大陸だ。
行きたいか?」
「……わかりません」
「何なら、あの鍛冶師のところに少し世話になるといい。私は君の父親を見てくる」
「え?」
「そこまで幼いと思わなかった。流石に親の庇護下にあったほうがいい」
その言葉にフィアは甘えたかった。
それは叶わなかった。吟遊詩人が行く前に、ギルドで聞かされた話。
逆上した村人が宿屋の親父を殺め、火をつけたと。村の殆どの住民が罪に問われているらしい。
「よく調べたな」
「山賊狩り隠ぺいが酷すぎた。調査が入ったんだが、初日調査日には生きていた。第二陣が行ったら宿屋が燃えていた。誰しもが疑うだろうが」
村人は二度も調査に来るとは思わなかったようで、隠ぺいを施していなかった。それどころか「村長に従わなかったから、当然の報いだ」と口を揃えて言ったという。
「……阿呆か」
「そういうことだ。村の生き残りは嬢ちゃんだけだ。まだ逆恨みされると悪い」
急ぎ村に戻り、何か形見があれば持って来よう。そう吟遊詩人が思った時だった。
「あたしも、村に行きます」
気丈にもフィアがそう言った。
村へ馬車を使い鍛冶師も巻き込んで戻ることとなった。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
淫紋付きランジェリーパーティーへようこそ~麗人辺境伯、婿殿の逆襲の罠にハメられる
柿崎まつる
恋愛
ローテ辺境伯領から最重要機密を盗んだ男が潜んだ先は、ある紳士社交倶楽部の夜会会場。女辺境伯とその夫は夜会に潜入するが、なんとそこはランジェリーパーティーだった!
※辺境伯は女です ムーンライトノベルズに掲載済みです。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる