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天高く陰謀巡る秋
自分の気持ちに気づきました
しおりを挟むこのことをちらりと千夏と花音に話すと、二人とも微妙な顔に。
「……あんたさぁ、少し考えなよ」
花音、酷すぎです。
「いや、花音の言うとおりだろ。だって、よくよく考えてみなよ。ある意味十年以上のストーカーだ」
「え?」
なんですと?
「ぶっちゃけ、兄貴がそれをしていたらどう思うよ。ってか、風吹姉さんの時にドン引きしとったじゃん」
「……あ」
そういえばそんなことが。
「嫌じゃない、ってことだね。すこぉし、素直になってみようか」
花音、素直って。えっと私は旦那様が嫌いじゃないですよ。ってか、今まで助けてくれたりしてくれたので、ありがたかったりするくらいです。
「じゃあさ、なんで浮気疑惑の時にあんだけ荒れたわけぇ?」
「花音の言うとおりだ。春くらいにあったら『あ、恋人さんね』で終わったはずだぞ」
千夏、いったい何を……。
「少し考えてみなよ。麻帆佳はどうしてあんなに怒ったんだ?」
えっと、嘘をついていたからで。
「浮気疑惑じゃなくて、旦那の身内にだよ。あれで内心怒ってないって言ったら、あたしら驚くぞ」
千夏の言葉に、思わず考え込みました。
だって、旦那様を無視した考え方で、腹が立ったのです。どうして?
普段であれば、私はそこまで気にする余裕なんてありません。実際春先はそこまで気にしていなかったですし。旦那様が私にものすごく構うようになって、私も旦那様と話をするようになったから?
いえ、旦那様は私をみてよく嬉しそうに微笑むのです。エッチの最中はともかくとして。その笑顔を見るのが私も楽しくて。
それが当たり前になっていて、そこに義実家の方々も入っていたはずで。それが嘘だったかもしれないのが嫌で。
……考えていたら分からなくなってきました。
「麻帆佳、さすがに今の独り言、聞いてる方がはずいわ!!」
千夏と花音のユニゾンで言われてしまいました。私口に出してた……って、旦那様いつ帰っていたのですか!?
「気づいたらいた。あとで聞け! 砂糖吐くかと思ったぞ」
「何で砂糖が吐ける!! もったいな……」
「そういう意味じゃない! 無意識で惚気るなって言ってるの!!」
千夏の言葉に返したら、ものすごい勢いで花音に言われちゃいました。惚気て……いないですよね? 旦那様。
「……うん、言われたことはものすごく嬉しいけど、素直に喜べない」
旦那様のお顔が真っ赤です。熱でもあるんですか? あ! だから早く帰って……。
「言いたいことは分かった。だけどな、さすがに違うぞ、麻帆佳」
「千夏の言うとおり。旦那様は公開惚気で恥ずかしいだけ」
花音の頭に悪魔の角が。
「もぉちょっと考えてみよー。そうすればきっと分かるはずだよぉ?」
あっさりと二人が帰っていきましたよ! 恥ずかしがる旦那様を置いて行かれても困ります!
「麻帆佳、私に抱きしめられるのは、嫌?」
「……えっと、今は嫌じゃないです。他の人がいる時だと恥ずかしいですけど」
「じゃあ、嫌だって感じたことはないんだね」
どうしてそうも嬉しそうなんですか。
「だって、麻帆佳に嫌われていないって分かったからね」
「それだけ、ですか?」
「それだけ。でも、それが大きい。春先だったら私に寄って来るどころか、対象外って感じだったし」
対象外ですか。
ふわりといつものように抱きかかえられました。いわゆるお姫様抱っこというやつです。
「今日は早く帰って来たし、ゆっくり話そうか」
にこりと微笑む旦那様。この笑顔が私は大好きです。
……ん? 旦那様、さっきよりもお顔が真っ赤ですよ!
「うん、無意識で言っていたんだろうけど、破壊力ありすぎた」
私なんか言いましたっけ? ……って。
あぁぁぁぁ!! 私旦那様に「大好き」って言った! でもそれは笑顔の話で!
「私は嫌い?」
「……嫌いじゃないです」
というか、考えを読まないでくださいな!
「今は声に出していなくても、麻帆佳の顔に現れているからね。頼むから、抱っこしている時に暴れないで」
あぅぅ。すみません。
あ、でも笑顔以外も好きかもです。……って、あれ?
「ま、麻帆佳!?」
あぁ、私はいつの間にか旦那様のことが好きになっていたんですね。
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