達観した紫の上と、年上旦那様~ロマンチストな旦那様視点~

神月 一乃

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同居開始な種植え季節

後悔は続くよどこまでも

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 園田そのだからの報告に打ちのめされた龍雅は、とあるレストランで秘書相手に愚痴っていた。
「ガーデニングって聞いてたから、薔薇用意したのに……」
「ガーデニングじゃないし。ベランダ菜園だし」
 冷たく秘書の高部たかべが突き放す。今日は何があっても飲まない、と決めた龍雅を目の前にシャンパンを頼んでいた。
「で、何であれなの? 龍雅」
 業務時間外ということで、口調はかなり砕けている。
「花言葉調べた。薔薇は勿論、ブラックベリーもブルーベリーもっ」
「あんた阿呆だろ!!」
「違うっ!」
 龍雅が用意した薔薇の花は赤。無論「あなたを愛しています」という花言葉にかけたのだ。「手入れが面倒と」不機嫌になったそうだが。ブラックベリーは「あなたと共に」「素朴な愛」というものがある。
「あんたさぁ、一緒に書いてある花言葉『孤独』に『嫉妬』じゃんか。まんまだよな~~」
「違うっ! ブラックベリーは私の誕生花でもあるんだ」
「うっわぁ、ドン引き」
 そう、龍雅の誕生日は十一月二十三日。そこらへんも思わず調べた。
「じゃあ、ブルーベリーが奥さんの誕生花?」
「いや、麻帆佳さんは四月二日だから、アネモネ、桜、ミヤコワスレ、コデマリ、四葉のクローバー」
 どれを用意するか一瞬悩んで、諦めた。ちなみにブルーベリーの花言葉は「実りある人生」「知性」である。
「……何でブルーベリー?」
「私が麻帆佳さんの人生に豊かな実りを……」
「もういいわ。ロマンチストもここまで来ると厄介だな」
 ブルーベリーに花がついていないのを選んだのにもきちんと理由があるのだが、高部は聞くのを拒否した。

 麻帆佳が欲しかったのはグリーンカーテンになるものと、野菜の苗木と種。ブルーベリーとブラックベリーはなりに喜んでもらえたが、麻帆佳が選んだものを見て龍雅は落ち込んだ。食べ物メインなのだ。
 そして、家族カードを渡そうとして見事に拒否された。それだけならある程度予想がついたが、お小遣いを渡すことすら拒否された。
「お前も大概だよな。お小遣いじゃなくて、生活費として渡すっていえばよかったのに」
「生活費はカード決済」
「だからさ、カードで使えないところを現金でっていえばあっさり受け取ったと思うぞ。そのうえで、アルバイトを辞めろっていえばよかったんだ」
 目から鱗である。
「とりあえずさ、帰ってそのあたり決めろよ。バイト辞めないってんだったら、本業優先にしろって言えばいいし、金もらいたくないっていうんだったら、生活費を補てんするって言っちまえ」
「そうする」

 愚痴ったことで麻帆佳の料理を食い逃すという愚行をした上に、友人たちとの団らんに混じれず、再度高部に部屋から電話して呆れられ、園田と高部に「ご友人の電話番号はこちらで聞きました」というフォローをされることになったのだった。
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