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第一章 銀髪の少女
第十九話 友達だから
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「何とか間に合った……!」
抜いた刀を鞘に戻し、後ろで倒れているセレシアの元へと駆け寄った。
「ノーラさん……どうして、ここに……」
「セレシアこそ、こんな数相手に一人で戦うなんて無茶だ。とにかく、今は休んでた方がいい」
うつ伏せに倒れているセレシアを支え、アイテム欄の中から取り出した上級ポーションをゆっくりと飲ませてやる。指先ひとつ動かせないほど、セレシアは身体の負担に耐えながら戦っていたのだろう。
「あれ……? 傷が治って……」
いたる所に傷を負っていたセレシアの身体は、ほぼ完治したかのように元通りだった。レナの時と同様、効果は絶大のようだ。
「ありがとうございます、ノーラさん。おかげでまだ、私は戦うことが……うっ!」
すぐさま剣を手に取ろうとするセレシアだったが、起き上がることが出来ずに再び倒れ込む。
「傷は治せても、身体の負担は残ったままだから……」
「そんな……。でも、でもっ! このままでは街が……人々が魔物たちに……っ!」
「……セレシア」
彼女の肩に手を置き、俺は真っ直ぐに見つめる。
「私には、セレシアがどれほどの想いを背負って戦っているのか分からない。……けど、この街を守りたい気持ちは私も同じだから。目の前で疲弊してる友達の為にも、ね」
「ノーラさん……」
俺がこの街に来てから、まだほんの数日程度しか経っていない。けれど、そんな短い時間の中でも、関わった人がいる。死なせたくない人が居る。だからこそ、俺だってこの街を守りたい。
「───だから、今だけ。私を頼ってほしい」
多少の数を減らしたところで、魔物たちの動きは止まることなく迫り続けている。次なる魔物たちが迫り来る中、セレシアは小さく口を開いた。
「死なないで、ください。……約束です」
「……うん、約束するよ」
頷いた俺に、セレシアは小さく笑みを浮かべた。
「セレシア様! ……って、君はさっきの!」
そこへ、先程の女兵士が門を通って俺たちの元へ走ってくる。
「避難するようにとあれほど……」
「ごめん、この人を頼みます!」
俺はセレシアを抱えあげると、女兵士にそう頼み込む。動けない彼女を守ってもらうようにと。突然の事に少し困惑しつつも、女兵士はセレシアを抱きかかえた。
「君も早く街の中へ───」
女兵士が俺を呼びかける中、背後に迫っていた魔物の方へと振り返ると同時に、俺は【抜刀・翠閃】で横薙ぎに刀を振るう。技として放ったその威力は自分でも驚く程に凄まじいもので、たった一振りにも関わらず大量の魔物が真っ二つに両断された。力任せに振るった訳でもなく、むしろ豆腐でも切ったのかと思うほどに軽い手応えを感じる。
まさかとは思っていたが、どうやらスキルの威力も百倍になるらしい。
「えっ……今、何が起きたの……?」
「あれ程の魔物が、たった一瞬で……」
辺りの魔物が一瞬にして絶命するのを目の当たりにしたセレシアと女兵士が、その光景と俺を交互に見やる。
「……君は一体、何者なんだ?」
俺は女兵士の問いに対し、短く答えた。
「───セレシアの友達ですよ」
それだけを告げると、俺は魔物の群れに突っ込んで行った。
実際のところ、内心では恐怖で溢れていた。こんな魔物の大群に一人で立ち向かうなんて、それこそ無茶でしかない。けれど、こんな時だからこそ、俺のこの並外れた力を使うべきなのだろう。
「それにしても、いくらステータスがバケモノ数値だからって、この数はさすがに骨が折れるな……」
一体ずつ倒していても埒が明かない。【抜刀・翠閃】を使うにも、刀を鞘に戻す必要があるため効率が悪い。何より攻撃の届く範囲が狭いという事もあり、普通に斬り進んで行く方が遥かに早いのだ。
「……だったら、新しい技を覚えるまでだ!」
考えろ、一度に多くの敵を倒すことのできる技を。最も、イメージ通りに技として発動するかも分からないが、やるしかない。
俺は頭の中でイメージした通りに刀を振るう。それは素早く刀を振り切る際に、刀身に込めた魔力を放つことによって、広範囲への攻撃を可能とする斬撃技だ。
すると、俺のイメージと同じく魔力をまとった斬撃が前方の魔物目掛けて放たれた。
「よしっ!イメージ通り……」
しかし、その斬撃は俺の予想していたものよりも遥かに大きいものだった。更には直進していくごとに大きさを増していき、気付けば半数以上の魔物が消し飛ぶ結果となった。
斬撃が通過した地面は深く削れ、草原のど真ん中だけ荒地のようになった風景が出来上がる。
( ……いやいやいや、威力ヤバすぎるだろ! いくら百倍になるとはいえ、これじゃただの破壊兵器じゃねえか!)
〘 スキル【一刀・蘭月】を習得しました 〙
( しかも覚えちゃったよ、すごいあっさりと…… )
「ま、まぁ……かなり数は減らせたし、いいか」
しかし、あまり乱用すると地形が変わってしまう。なるべく使わない方が良いだろう。
「……あんた、今なにをしたの?」
「え?」
不意に聞こえてきたのは女性の声。だが、辺りにはそれらしい人物は見当たらない。まさかと思いつつ、咄嗟に視線を上に向けると、先程までは居なかった一人の女性が上空から俺を見下ろしていた。赤く染った髪色に、背に生えた黒の翼からは魔族のようなイメージを彷彿とさせる。
「ふぅん、雑魚だと思って侮っていたわ。まさかここまでの力を秘めているなんてねぇ……」
女性は複雑な表情を浮かべながら呟いた。ひょっとして、彼女が魔物たちを率いる親玉だろうか?
「魔物たちを引連れてきたのって、あんたか……? どうしてこんな事をするんだ?」
「あらあら、可愛い顔して厳つい喋り方するのねぇ? せっかくの美貌が勿体無いわぁ」
くすくすと笑いながらに女性は俺を揶揄ってくる。自分の強さに絶対的な自信があるからか、それゆえの余裕なのか。しかし、俺自身こんな状況で喋り方に気を回している余裕なんてない。
「どうしてこんな事をするのか。それは全て魔王様のためなのよぉ。だ・か・らぁ……その為にも、あんたの存在は邪魔なの─── "召喚者" なんて存在は、ねぇ?」
「なっ……!」
やはり、こう言った世界には魔王という存在が付きものらしい。アニメや漫画でしか聞かないその存在にも驚いたが、それとは別に気掛かりなことがあった。
───どうして俺が召喚者だと知ってるんだ?
抜いた刀を鞘に戻し、後ろで倒れているセレシアの元へと駆け寄った。
「ノーラさん……どうして、ここに……」
「セレシアこそ、こんな数相手に一人で戦うなんて無茶だ。とにかく、今は休んでた方がいい」
うつ伏せに倒れているセレシアを支え、アイテム欄の中から取り出した上級ポーションをゆっくりと飲ませてやる。指先ひとつ動かせないほど、セレシアは身体の負担に耐えながら戦っていたのだろう。
「あれ……? 傷が治って……」
いたる所に傷を負っていたセレシアの身体は、ほぼ完治したかのように元通りだった。レナの時と同様、効果は絶大のようだ。
「ありがとうございます、ノーラさん。おかげでまだ、私は戦うことが……うっ!」
すぐさま剣を手に取ろうとするセレシアだったが、起き上がることが出来ずに再び倒れ込む。
「傷は治せても、身体の負担は残ったままだから……」
「そんな……。でも、でもっ! このままでは街が……人々が魔物たちに……っ!」
「……セレシア」
彼女の肩に手を置き、俺は真っ直ぐに見つめる。
「私には、セレシアがどれほどの想いを背負って戦っているのか分からない。……けど、この街を守りたい気持ちは私も同じだから。目の前で疲弊してる友達の為にも、ね」
「ノーラさん……」
俺がこの街に来てから、まだほんの数日程度しか経っていない。けれど、そんな短い時間の中でも、関わった人がいる。死なせたくない人が居る。だからこそ、俺だってこの街を守りたい。
「───だから、今だけ。私を頼ってほしい」
多少の数を減らしたところで、魔物たちの動きは止まることなく迫り続けている。次なる魔物たちが迫り来る中、セレシアは小さく口を開いた。
「死なないで、ください。……約束です」
「……うん、約束するよ」
頷いた俺に、セレシアは小さく笑みを浮かべた。
「セレシア様! ……って、君はさっきの!」
そこへ、先程の女兵士が門を通って俺たちの元へ走ってくる。
「避難するようにとあれほど……」
「ごめん、この人を頼みます!」
俺はセレシアを抱えあげると、女兵士にそう頼み込む。動けない彼女を守ってもらうようにと。突然の事に少し困惑しつつも、女兵士はセレシアを抱きかかえた。
「君も早く街の中へ───」
女兵士が俺を呼びかける中、背後に迫っていた魔物の方へと振り返ると同時に、俺は【抜刀・翠閃】で横薙ぎに刀を振るう。技として放ったその威力は自分でも驚く程に凄まじいもので、たった一振りにも関わらず大量の魔物が真っ二つに両断された。力任せに振るった訳でもなく、むしろ豆腐でも切ったのかと思うほどに軽い手応えを感じる。
まさかとは思っていたが、どうやらスキルの威力も百倍になるらしい。
「えっ……今、何が起きたの……?」
「あれ程の魔物が、たった一瞬で……」
辺りの魔物が一瞬にして絶命するのを目の当たりにしたセレシアと女兵士が、その光景と俺を交互に見やる。
「……君は一体、何者なんだ?」
俺は女兵士の問いに対し、短く答えた。
「───セレシアの友達ですよ」
それだけを告げると、俺は魔物の群れに突っ込んで行った。
実際のところ、内心では恐怖で溢れていた。こんな魔物の大群に一人で立ち向かうなんて、それこそ無茶でしかない。けれど、こんな時だからこそ、俺のこの並外れた力を使うべきなのだろう。
「それにしても、いくらステータスがバケモノ数値だからって、この数はさすがに骨が折れるな……」
一体ずつ倒していても埒が明かない。【抜刀・翠閃】を使うにも、刀を鞘に戻す必要があるため効率が悪い。何より攻撃の届く範囲が狭いという事もあり、普通に斬り進んで行く方が遥かに早いのだ。
「……だったら、新しい技を覚えるまでだ!」
考えろ、一度に多くの敵を倒すことのできる技を。最も、イメージ通りに技として発動するかも分からないが、やるしかない。
俺は頭の中でイメージした通りに刀を振るう。それは素早く刀を振り切る際に、刀身に込めた魔力を放つことによって、広範囲への攻撃を可能とする斬撃技だ。
すると、俺のイメージと同じく魔力をまとった斬撃が前方の魔物目掛けて放たれた。
「よしっ!イメージ通り……」
しかし、その斬撃は俺の予想していたものよりも遥かに大きいものだった。更には直進していくごとに大きさを増していき、気付けば半数以上の魔物が消し飛ぶ結果となった。
斬撃が通過した地面は深く削れ、草原のど真ん中だけ荒地のようになった風景が出来上がる。
( ……いやいやいや、威力ヤバすぎるだろ! いくら百倍になるとはいえ、これじゃただの破壊兵器じゃねえか!)
〘 スキル【一刀・蘭月】を習得しました 〙
( しかも覚えちゃったよ、すごいあっさりと…… )
「ま、まぁ……かなり数は減らせたし、いいか」
しかし、あまり乱用すると地形が変わってしまう。なるべく使わない方が良いだろう。
「……あんた、今なにをしたの?」
「え?」
不意に聞こえてきたのは女性の声。だが、辺りにはそれらしい人物は見当たらない。まさかと思いつつ、咄嗟に視線を上に向けると、先程までは居なかった一人の女性が上空から俺を見下ろしていた。赤く染った髪色に、背に生えた黒の翼からは魔族のようなイメージを彷彿とさせる。
「ふぅん、雑魚だと思って侮っていたわ。まさかここまでの力を秘めているなんてねぇ……」
女性は複雑な表情を浮かべながら呟いた。ひょっとして、彼女が魔物たちを率いる親玉だろうか?
「魔物たちを引連れてきたのって、あんたか……? どうしてこんな事をするんだ?」
「あらあら、可愛い顔して厳つい喋り方するのねぇ? せっかくの美貌が勿体無いわぁ」
くすくすと笑いながらに女性は俺を揶揄ってくる。自分の強さに絶対的な自信があるからか、それゆえの余裕なのか。しかし、俺自身こんな状況で喋り方に気を回している余裕なんてない。
「どうしてこんな事をするのか。それは全て魔王様のためなのよぉ。だ・か・らぁ……その為にも、あんたの存在は邪魔なの─── "召喚者" なんて存在は、ねぇ?」
「なっ……!」
やはり、こう言った世界には魔王という存在が付きものらしい。アニメや漫画でしか聞かないその存在にも驚いたが、それとは別に気掛かりなことがあった。
───どうして俺が召喚者だと知ってるんだ?
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