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第一章 ブラック・シーカー
第一話 100階
しおりを挟む「侵入者確認、現在92階地点に到達、看守は全員現場に急行せよ。なお、侵入者の目的はブラック・シーカーと思われる」
監獄内が朝から騒然としていた。
黒いマントを覆った若干若い4人は上階へと足を早めていた。
「ブラック・シーカーっていうのが今回の目標であってるか?」
「おそらくそうだろう。で、本当に100階にいるんだろうな。そいつは?王姫様?」
「私の第三の目には見えています。多分。」
「多分じゃ困る。そいつは今後の我が国の発展に欠かせない実験材料なんだからな」
「は、はい。」
アリス以外の三人は次々と現れる看守達をいとも簡単に倒していった。
そこはもはや惨状だった。
戦闘経験がない王女には血を流す看守達が倒れていく姿には目を瞑った。
「そこの角を右です。」
アリスの声と共に4人はある一つの檻の前にたどり着いた。
中の状態は暗くて見えない。
しかし、かすかに鎖が地面と擦れた金属音が静かな空間に響き渡った。
「お前がブラック・シーカーいや、アライシンヤか?」
しばらくの沈黙の後、若干さらに黒マントより若い声が聞こえた。
「正確に言えばどちらも違う。俺はただのヒーラーだ。ブラック・シーカーは看守達が皮肉を込めてつけた名だ。」
「なんでもいいが、これからお前を我が国に連れて帰る」
「何のために?連れて帰るって俺の生まれたのはこの国だが?」
「それは後のお楽しみってやつだ」
「そうか‥」
男の1人が両手、両足の鎖の鍵を解く。
「出ろよ、囚人。」
ようやく、その囚人の姿が露わとなった。
が、しかし黒マントたちは息を飲んだ。
「なんだ、その姿は。全く歳をとっていないじゃないか。お前が国王殺しをしたのは100年前の話じゃないのか?」
出てきたのは20代の若い男。
「人違い‥ではないのか?」
「おい、王姫!お前、嘘ついたな」
黒マントの1人がアリスの胸ぐらを掴みかかった。
「間違いなくこの人です!」
しかし、その場の誰もが信じることをやめた。
「だから、この出来損ないを連れてくるのはやめようと言ったんだ」
アリスの顔面に拳が直撃する直前、聞こえたのは黒マントの呻き声だった。
「き、貴様何をした。くそ、どうなってる。」
「え?え?」
アリスもその場で現場の状況を対処できるほど脳が追いついていなかった。
ひとつだけわかるのは先ほどまで殴ろうとしていたはずの黒マントの腕がなくなっていることだった。
しかし、血はない。
「やっぱり鈍ってるな。100年のブランクはなかなか埋まらないか。ホントはお前全てを消すつもりだったんだが。とりあえず、汚ねえから血は止めといてやった。お前らの狙いは俺を実験のモルモットにするつもりだろ?」
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