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第一章 ブラック・シーカー
第二話 脱獄
しおりを挟む「お前、よくも仲間をやってくれたな。」
黒マントの1人が懐からナイフを取り出し、こちらに向かってくる。
が、次の瞬間、ナイフを手にした男は何メートルか離れた壁に吹き飛ばされていた。
「お前。ただのヒーラーじゃないな?」
「ただのヒーラーが国王殺しを成立させると考える方が難しいと思うがな。ところでお嬢さん、いや、どっちが上なんだ?まぁいいや、とにもかくにもこうして騒ぎを起こしてしまった以上脱獄するしかない。出口はどちらかな?」
「あ、あっち」
アリスは恐る恐る指差した。
「ありがとう。」
そう言い残し、シンヤは檻を後にした。
「ちょっと、なんで私は殺さないのよ?」
「んー、悪意が感じられないから?」
いつのまにか自然とアリスはシンヤの後を追っていた。
「お嬢さん、いつまでついてくる気だ?」
「お嬢さんは辞めてください。私にはアリス・アークボルトという名があります」
頬を膨らませて、まさに怒ったような顔をするアリスを尻目にシンヤは階段を急ぎ足で駆け下りた。
「で、お姫様は何ができる?」
お姫様という言葉に少し引っ掛かったが、アリスは答えた。
「私の第三の目が有れば、この包囲網を抜けることができるはずよ」
「そか、じゃあ、道案内を頼もうか。なんせ、私が来たのは100年前の一回きりなんでね」
適当な返事で受け流し、アリスはシンヤの前を先導した。
「ところで、その第三の目は千里眼的な能力だけか?」
「え?どういう意味よ?そうに決まってるじゃない?」
「そうか、自覚症状なしか」
ボソリと呟くシンヤの声をかき消すように、アリスが吠えた。
「前から、敵が五人来る!」
「下がってろ、お姫様」
「生命の吸収!」
シンヤが呪文を唱えると、前から迫ってきた兵士はみるみるやつれていき、地に伏せた。
「今、何したの?」
「生命の吸収は対象の残りの生命を一瞬で奪うことのできる術だ。」
「え?でもそんな術ってアタッカーじゃない限り無理なんじゃ?」
アリスの怒涛の質問にシンヤは無反応だった。
「で?後どのくらいで地上だ?」
「すっごい言いづらいんだけど、この下の階層で兵士が数えられないくらいいる‥」
「そか」
ここに来て初めてシンヤが足を止めた。
「お前は使えそうだな」
そう言ってアリスを傍に軽々しく抱え、地上800メートル先を見下ろした。
「ちょ、ちょっとあんたまさか飛び降りようとしてるんじゃないでしょうね?無理よ、ここから地上まで何メートルあると思ってるのよ。」
「黙ってろ」
空気がピンと張り詰めた。
次の瞬間、2人の体は監獄から無くなった。
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