6 / 6
第一章 ブラック・シーカー
第五話 作戦会議
しおりを挟む「今後の話をしよう」
「え?今後って?」
「今後の話と言ったらこの国を抜けるための作戦を立てようという話に決まってるだろう」
「あ、そのことですか。」
「他に何のことを考えていたんだ。まぁいい、取り敢えずこの先には街がある。」
「商業都市のアルトロという街がありますよね」
自信満々といった表情でアリスはこちらを覗いてきた。
「よく知ってるな?あの関所を潜り抜けるのはかなり骨が折れるがどうやってこの国に入ったのだ?」
少し口を噤んで言うか迷ったようだが、しばらくすると話始めた。
「内通者‥がいるんです」
「内通者?アークボルト王国のスパイがアルトロにいると言うのか?」
声に出さないまでもコクリとアリスは頷いた。
正直、この国に思い入れは既にない分、焦りや憤りといった感情はなかった。
「となると、取り敢えずはその内通者と接触することこそ国外に脱走するためには必要というわけか」
「そのスパイの名はメレヴ。今でもアークボルト王国と遠隔での連絡手段を取る役割をしているわ。」
「もうそこまでアークボルト王国は侵攻していたのか。」
アリスはずっと複雑そうな顔をこちらに見せていた。
確かにそうだろう、この娘は俺のことを献身的にイスタニア王国で尽くした兵士だと思っているのだろう。いつかはその誤解も解けてくるのだろうが、今説明したところで‥
そんなことを考えているうちに、アリスは既に出発の準備を進めていた。
外に出ると、馬は疲れを癒したようで、早く走りたいと言わんばかりに駆け回っていた。
「落ち着いて、マリーゴールド。今日もまた頼むわ」
「ん?マリーゴールドって?」
「マリーゴールドはこの馬の名前よ!毛の色が金色に光ってるからマリーゴールド」
アリスの言葉の最後の方はもはや聞き流し、貰った地図からこの後の行き先を確認した。
「マリーゴールド頼む」
即席で購入した割にはいい馬を買ったようだ。
脚も平均より速い。
これなら予定より大分早く着きそうだ。
後ろに乗っているアリスは風のように流れていく景色をじっと眺めていた。
「こんな景色を眺めるのは久しぶりだな。俺は100年間ずっと上空1000メートルの場所にいた身だから。見えるのは空だけだった。」
アリスは黙って俺の話を聞いていた。
その少女の目からは景色をただ楽しんでいるというような感情以外のものがあるような気がした。
数時間で街らしきものが見えてきた。
「見ろ、あれが商業都市アルトロだ」
後ろに乗っているアリスの反応はなかった。
「アリス、起きろ!見えてきたぞ!」
「ん?あぁ、本当だー。」
どうやらまだ夢見心地のようだ。
「取り敢えず、昼だから腹ごしらえが先だ。人探しはそのあとにするぞ。100年と言う時間を取り戻す!」
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
『異世界に転移した限界OL、なぜか周囲が勝手に盛り上がってます』
宵森みなと
ファンタジー
ブラック気味な職場で“お局扱い”に耐えながら働いていた29歳のOL、芹澤まどか。ある日、仕事帰りに道を歩いていると突然霧に包まれ、気がつけば鬱蒼とした森の中——。そこはまさかの異世界!?日本に戻るつもりは一切なし。心機一転、静かに生きていくはずだったのに、なぜか事件とトラブルが次々舞い込む!?
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
冷遇妃マリアベルの監視報告書
Mag_Mel
ファンタジー
シルフィード王国に敗戦国ソラリから献上されたのは、"太陽の姫"と讃えられた妹ではなく、悪女と噂される姉、マリアベル。
第一王子の四番目の妃として迎えられた彼女は、王宮の片隅に追いやられ、嘲笑と陰湿な仕打ちに晒され続けていた。
そんな折、「王家の影」は第三王子セドリックよりマリアベルの監視業務を命じられる。年若い影が記す報告書には、ただ静かに耐え続け、死を待つかのように振舞うひとりの女の姿があった。
王位継承争いと策謀が渦巻く王宮で、冷遇妃の運命は思わぬ方向へと狂い始める――。
(小説家になろう様にも投稿しています)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる