100年間囚われの身になった最強ヒーラーと戦姫の国落とし

松村レイ

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第一章 ブラック・シーカー

第五話 作戦会議

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「今後の話をしよう」

「え?今後って?」

「今後の話と言ったらこの国を抜けるための作戦を立てようという話に決まってるだろう」

「あ、そのことですか。」

「他に何のことを考えていたんだ。まぁいい、取り敢えずこの先には街がある。」

「商業都市のという街がありますよね」

自信満々といった表情でアリスはこちらを覗いてきた。

「よく知ってるな?あの関所を潜り抜けるのはかなり骨が折れるがどうやってこの国に入ったのだ?」

少し口を噤んで言うか迷ったようだが、しばらくすると話始めた。

「内通者‥がいるんです」

「内通者?アークボルト王国のスパイがにいると言うのか?」

声に出さないまでもコクリとアリスは頷いた。

正直、この国に思い入れは既にない分、焦りや憤りといった感情はなかった。

「となると、取り敢えずはその内通者と接触することこそ国外に脱走するためには必要というわけか」

「そのスパイの名はメレヴ。今でもアークボルト王国と遠隔での連絡手段を取る役割をしているわ。」

「もうそこまでアークボルト王国は侵攻していたのか。」

アリスはずっと複雑そうな顔をこちらに見せていた。

確かにそうだろう、この娘は俺のことを献身的にイスタニア王国で尽くした兵士だと思っているのだろう。いつかはその誤解も解けてくるのだろうが、今説明したところで‥

そんなことを考えているうちに、アリスは既に出発の準備を進めていた。

外に出ると、馬は疲れを癒したようで、早く走りたいと言わんばかりに駆け回っていた。

「落ち着いて、マリーゴールド。今日もまた頼むわ」

「ん?マリーゴールドって?」

「マリーゴールドはこの馬の名前よ!毛の色が金色に光ってるからマリーゴールド」

アリスの言葉の最後の方はもはや聞き流し、貰った地図からこの後の行き先を確認した。

「マリーゴールド頼む」

即席で購入した割にはいい馬を買ったようだ。

脚も平均より速い。

これなら予定より大分早く着きそうだ。

後ろに乗っているアリスは風のように流れていく景色をじっと眺めていた。

「こんな景色を眺めるのは久しぶりだな。俺は100年間ずっと上空1000メートルの場所にいた身だから。見えるのは空だけだった。」

アリスは黙って俺の話を聞いていた。

その少女の目からは景色をただ楽しんでいるというような感情以外のものがあるような気がした。

数時間で街らしきものが見えてきた。

「見ろ、あれが商業都市アルトロだ」

後ろに乗っているアリスの反応はなかった。

「アリス、起きろ!見えてきたぞ!」

「ん?あぁ、本当だー。」

どうやらまだ夢見心地のようだ。

「取り敢えず、昼だから腹ごしらえが先だ。人探しはそのあとにするぞ。100年と言う時間を取り戻す!」
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