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争いのない世界

　創造主は悩んでいた。

　何回やり直しても、人は争いをやめない。

　争いのない世界。それこそが創造主の理想だった。

　別の創造主と相談して、そしてある答えにたどり着いた。

「民族が分裂するのが争いの種なのでは？」

　人類が発生するときは、一つのコミュニティだが、しかし人数が増えるにしたがってそれらのチームが分裂し複数のチームとなる。そして争いを行うのだ。

　しかし、それらが分裂せず、一つのチームのままならば争いはなくなるのではないか。

　だから分裂する原因をなくせば理想の世界が実現する。

　そのために行ったことは、ワープ装置の開発である。

　天然でとれるクリスタルを加工することで、二点間を簡単に行き来できる技術を作れるようにしたのだ。

　これによって、旅に出ても、クリスタルさえ用意しておけばすぐに元のコミュニティに帰還することができる。

　これによって世界は大きく様変わりした。

　まず土地の価値が低くなっていった。

　なぜならば、ワープクリスタルを置くことで、流通だとか、隣の家だとかそういう概念が希薄になってきたのである。例えば首都の便利な市場のある都市にわざわざ住居を構えなくとも、田舎からワープしてすぐに買い物ができたりするからだ。

　いや、極論を言うならば、家は山奥の誰も見つけることができない場所に建ててもいいのである。

　旅に出ているときでも、いつでも自分の家に戻ることができるのだ。

　ゆえに、この世界の人々は、常に旅をしている人が大多数を占めていた。旅をしながらでも仕事場や家に行くことができるからだ。

　創造主の期待通り、国や村と言った概念が希薄になった世界ではあったが、しかし派閥というものが存在してしまったのである。

　それは土地ではなく、宗教、嗜好の派閥だった。

「きのこー！！」「たけのこー！！」

　特に強かったキノコたけのこ派の抗争は、拠点を持たないがゆえに、各地において局所的に行われ、治安的にコストが大きくなったのである。

　ゆえに、自衛って大事だよね