上 下
78 / 197

偽りの望み

しおりを挟む

 その世界では、その世界に一つだけの宗教があった。

 その主たる活動内容は、ファンタジー的世界特有の、スターテス、レベル。それを最大限まで上げることで神と邂逅するという教義である。

 実際、それは可能だった。

 神、つまり創造主は、この世界を作り上げる際、レベルを一定以上上げることで、ごほうびとして願いをかなえてやるシステムを作ったのである。

 そのためには、並大抵の努力では不可能だったが、この日、それに到達した信者が現れたのだ。

「ああ!神よ!!ようやくお会いできましたね!!」

「・・」

「えっと?」

 神は、何か覚めたような目で彼を見ていた。


「で?」

「?」

「何がしたいんだ?お前は?」

「いえ・・、私はただあなたとともにいたいだけなんです!!」

「・・そうか。それがお前の望みか。なら望み通りにしてやろう」

「ありがとうございます!!」

 そして、神は、神の人格を模した生命体と、その者がいる世界を創造した。

「これでずっと一緒ですね!!」

 それを外側から見ている神。

「・・やれやれ。これで何人目だ?

 見たところ、この世界は真なるこいつの欲望ではないというのに。俺と二人きりの世界なぞ、誰も望んでいないのに。

 なぜこいつらは自分を騙すのだろう?努力した末にこんなあほらしいことをするのだろう?

 これも、欲望を他者と共有する文化が悪いのか?いっそのこと壊してしまおうか。だが奴らの作り出したものを壊すのも大人げないしな」



しおりを挟む

処理中です...