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騎士
しおりを挟む騎士というのは人間の鏡。
弱気を助け、悪をくじく、聖なる者として、物語は記されている。
だが、実際のところは違った。
「ぐへへ・・・服を脱げよおらぁ!」
「金目のものもいただいていくぜぇ」
「金ならいくらでも出す!!どうか・・どうか娘だけは!」
騎士というものは、肩書が立派であれ、人でしかない。
人は醜い生き物だ。
自分の喜びのために、平気で他者を犠牲にする。
戦争はまさにその最たるもの。それをする王も、また兵士も、醜く、悪に染まらない理由がないはずがない。
そして今まさに、心を悪に染めた輩が、通りすがりの商売人を夜盗のごとく遅い、食い散らかさんとしていた。
だが、その時である。
「まてぃ!!」
「あぁん?」
悪党どもはけだるげに振り返った。そこには、純白の鎧を纏い、純白の馬にまたがった巨漢がいた。
そいつは、鎧の下から腹から出る声で言う。
「お前ら、騎士だろう?」
「・・それがどうした?てめえも殺されたくなかったらどっかいけ」
「騎士なのに何故、人を救うはずの騎士が、野盗のごとき真似をしている?」
「・・はぁ?」
彼らは心底意味が分からないという顔をして首を傾げた。
「騎士は、精錬で潔白、悪をくじき弱気を助けるもの。
ならば、その一員である貴様らが何故弱きから奪っているのか?説明したまえ」
それに一瞬、無表情になった悪党どもは、顔を見合わせ、
「・・・・ぷっ」
「?」
爆笑する
「あーーはっははっははははは」
「ぎゃはははははははは!!!」
首をかしげるのは今度は白騎士のほうだった。
指をさして悪党が心底面白いものを見たという風に叫ぶ。
「お前、お金持ちのボンボンかぁ?!この世の中を少しでも見ているやつなら、そんなこと口を避けてもいえないぜぇ!!」
「な、なるほどな!聞いたことがあるぞ!!貴族どもは娯楽本の中の清廉潔白の騎士にあこがれを抱いているとかなんとか!お前もそういう口か!!」
「・・・・そうなのか?」
普通の者ならば馬鹿にされたことに怒り狂うかもしれないが、彼は純粋に疑問に思うかのように首を傾げた。
「なら、」そう言って、名綱を動かす、が、対する悪党は、
「あん?何にげようとしてやがる!」
「おい、てめぇもかねもちならば、金目の物を置いて行ってもらうぜ」
しかし白騎士は、逃げようとして動いたわけではなかった。
馬から降りて、背中の剣を抜いたのだ。
「!」
「少々、教育が必要なようだな」
「!!!!」
弱い者いじめしかしてこなかった、野良騎士程度でも分かった。その静かな口調に込められた怒り。そして強者特有の威圧感。
だが、彼らにもプライドがあった。本気になって剣を抜く。二体1ならば勝てると踏んだのだろう。ここで逃げるという選択肢を取れるほど、彼らは大人でもかしこくも無かった。
「うぁらっ!!」
まずは片方が先手を取った。大振りゆえに回避されるか防御されることは確実だろう。
カキンッ
予測通り、彼は、巨大な剣を意外なほど素早く、そして小さく動かしてはじいた。
だが、本命はもう片方のほうだ。その死角から致命傷を狙う。
(もらったっ!!)
しかし、彼らは勘違いしていた。
この戦いは2体1ではない。2対2なのだ。
「ヒヒーンッ」
「ぐっ?!」
突如襲い掛かる馬の頭突き。その威力ゆえに数メートル吹っ飛ぶ。
その間にも白騎士の行動は止まらない。
最初に襲い掛かったほうを剣の柄でみぞおちを撃った。
「く・・はっ!」
素早く彼らは耐性を立て直した。戦場で彼らも知っている。短い隙が致命的なことになるということを。
だが、白騎士は、悠長なほどゆっくりと彼らに近づいてくるのみ。その余裕に対して二人はキレた。
「馬だと・・?!卑怯すぎるんじゃねぇか!」
「清廉潔白な騎士さんよぉ!!」
それに対して言い返されると思ったが、意外なことに彼はそれを認めた。
「む?いや、確かに、多人数で相手することは騎士のなに恥じる行為である」
「は・・?」
「しかし馬は良いだろう?なんてったって『騎』士なんだから
なんら問題はない。ないはずだ。うんつまり、、」
彼は高らかに言い放った。
「こいつも俺の力ってことだ!騎士道的にな!」
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