プリズム・オムニバス=オムニバス ドシリアスからギャグまで色々な世界を覗けます

木森林木林

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VR

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 VR技術、つまりバーチャルリアリティーの技術はカメの歩みだったが、確実に発達していき、ついには全身まるでその世界にいるかのような感覚を味わうことができるようになっていった。

 そういった技術は、色々なことに使われている。

 たとえば、学校や会社をVR内で行うことも可能だし、ゲームなども没入感が高い体験をすることが可能となっていった。

 その上、ゲームの中では時間が現実と比べて違うのだ。

 例えば、現実での1秒が、ゲーム内での1年ということもできるのである。

 その技術によって、人は、長い年月(体感)を、仕事だけでなくゲームに費やすことができるようになっていった。

 だが、長すぎる年月はヒトを飽きさせる。どんなに面白いゲームでも、膨大な時間があれば周回100回も千回も回ることができるのである。

 どんなにおいしいディナーも、何回も繰り返せばもはや地獄のようなものだ。

 だが、しかし今更現実で生きるというのも、時間を消耗するだけだ。最早やVR内で生きることがデフォルトというものであり、現実に戻る時間は、相対的に早く年を取るようなものなのだ。

 ならば、彼らはどんなゲームが流行するだろうか。

 それは人生である。

 文字通り人生を体験するゲーム、人生ゲームだ。

 何の変哲もない、人生を体感するゲーム。そのシンプルさが逆に受けたのだ。

 それは、金持ちの一生、才能あるものの一生、裕福で優越的な人生を歩むことが、当初のブームだった。

 だが、何でもうまく行き過ぎるのは、さすがに空きが来るのだろう。次第に、不運な人の一生だとか、貧乏人の一生だとか、難易度の高い体験を求めるようになっていった。

 それが楽しいというわけではない。一部の変態以外は、それは苦行以外の何物でもなかった。

 だが、、彼らがその人生ゲームをおえて、元のぬるい世界に戻った時、感謝できるのだ。

 誰かが言った。幸福とは比較して感じるものだと。幸福が常にあるならば、それが幸福だと本人は気が付かないのだ。

 その幸福を感じられるということで、この人生ゲームは存在意義があった。

 だが、、そのゲームに没入している間、彼らは一堂にこう思ったものだった。

「こんな世界に落とし込んだ神様を呪ってやりたい」と。
 
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