家電オムニバス短報(オムニバス、ショートショート)

木森林木林

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アダムの決断

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「なんで。なんでそんなことするの、、?」
「世界を生まないために、かな?」

目覚めて初めて会った時彼女は言った。

僕は裸だった。

そうその日僕は世界を殺した。

そしてそれが世界を救うただ一つの、カンタンな方法。

ーー

二人は風を感じていた。

「風が気持ちいいね」
「そうだねイブ」

私たちはオープンカーに乗っていた。
海が見える。その地平線の遠くの方ではビル群が埋立地にたち、空にはカモメの代わりにドローンが飛んでいた。

素晴らしい日だった。もうここには、そしてこれからもずっと、私たちの生活を邪魔する人はいない。

いや、それどころかこの地球上で生存している人類は私たちしかいないのだ。

今も、そしてこれからも。



ーー

話は、もう僕と彼女が生まれる前から決まっていた話らしい。

僕は特殊な環境で生まれていた。

もう普通の人間では地球で生きていくことはできないらしい。

僕達の他の人たちは、僕達のいる部屋や外では宇宙服のようなスーツを着ていた。

僕たち二人はこの星の大気の大部分をしめる猛毒をエネルギーに変えられる細胞を持っている。そこまで難しい話ではない。遺伝子をいじるだけで生成可能。大昔は酸素でさえ猛毒だった時代があったのだから。





ーー

二人は海を眺めていた。

「うわー!綺麗な魚!」
「そうだね、、イブ」

僕たちはAIで制御されたモーターボートに乗っている。
虹色に輝く湖では、体に悪そうなお菓子のようにカラフルな魚が泳いでいて、とても気が紛れる。

「食べられるかな?」
「どうだろうね、、大抵のものは食べられると思うけど、美味しいのかな?」
「美味しいよきっと。二人で食べれば」
「そうだね」
僕はイブのほっぺにキスをした。

ーー
地球環境が悪化し、世界の空気成分が大きく偏るなどといった環境の変化に大多数の人類はついていくことができなかった。

人工的に空気を正常化し、満たされた空間を人工的に作り出せはしたものの、さらに問題は次々と見つかっていった。

そのたびに科学は進化を続けて行き、ある日テラフォーミング作戦が実行されつつあった。

それは全世界の国々が協力して行うプロジェクトで、全ての国々が一致団結して行われた。このプロジェクトが成功すれば、何もかもがうまくいくはずだった。争いはなくなり、地球も元の正常な環境に戻り、地球の気象をほぼ操ることができるようになっていくはずだった。

しかし、それは失敗に終わった。原因はテラフォーミング後のその気象操作装置の主導権が原因だった。

成功後に争うのならマシな方だった。だが、作戦前に表面下での争いが起きていたのだ。それが原因で作戦は失敗した。

失敗による代償、大規模な地殻変動だけでなく、その負のした感情世界で闘いが起こった。敗戦国は誰か一人に責任を押し付ける慣習があるが、それは全員が敗戦国だった。その犠牲に選ばれたプロジェクトの主要人物は、凄まじく優秀で人格者で、間違いなく生きていれば世界の崩壊へのカウントダウンを遅らせていたはずだった。

つまり、オワコンだったのだ。人類は。間違えたのだ。正すだけの力がありながら間違いを放置し、ヒーローを処刑し、外面だけ見栄えのいい無能が権力を振りかざして死んでいったのだ。

そう、それが最後に僕達がみた人たちから聞かされた人類の歴史。

「だけど君たちには罪はない」

そう博士は言ってくれた。でも、

「そしてこれから生まれる子供たちも同じだ」

ーー

二人は青空を緑の原っぱで寝転がりながら眺めていた。

「うわー!綺麗な青空だね」
「ねえ、どうして、」
「どうして?」
「どうしてやり直そうとおもわなかったの?」
「、、、」

やり直せるかもしれない。最初からちゃんと、最後まで面倒を見れば、仲良くできるかもしれない。

だが僕はそれを拒んだ。

その感情はまさしく、憎悪。

仲良く手を取り合わなかった人類への罰。

そしてこれから生まれるはずだった者たちへの救済と罰でもある。

ーー

「くそっ!こんなところにまで!」

研究所は僻地にあったにも関わらずみつかってしまった。

無差別に生命体を殺す機械だかバイオだかの兵器。暴走して増殖しているのだ。停止させる手段は壊すだけだ。敵国は支配したあとのことは何も考えてないらしい。

いつもガラスの中で白衣に眼鏡だった人、僕達に人類の歴史を語ってくれた人、通称博士は、カプセルの中に僕たちを入れてスイッチを押した。

「君たちは今の地球の大気の中でも生きられるようになっている。そして同時に特殊なガスの中では細胞が仮死状態になり都市を取らずに何万年でも生きることができるんだ。次に眠りから目覚めたら、次は君たちが子供を作り人類を復興させてほしい。それが私からの願いだ。いいね」
「、、分かった」
「ありがとう。それじゃあ僕は行くよ。イブのことを大切にするんだよ。アダム」

「、、」

僕は軽蔑の眼差しを博士の背中に送った。
人類が救いようのない愚かな種族だってことは理解した。
それでもあんたは復興してくれと、この悪夢を再現しろっていうのか?
博士、あんたは頭はいいと思っていたが、それは勘違いだったみたいだ。

そして僕らは眠りにつき、目覚めた時には世界は見たところ僕達だけのようだった。

そして、目覚めて最初にやったことは、
「、、、」
僕は下を見た。諸悪の根源がそこには、あった。



今はそうでもないが、いつか我慢できなくなるかもしれない。一応、人類の芽は摘んでおこう

僕は施術ルームに入り、二度と人類が生まれないようにしてあげた。



ーー


僕たちは旅をしている。

目的は、もちろんイブとのデート、なのだけれど、実は目的はもう一つある。

僕たちが秘密裏に行われてきた研究所で生まれた存在。

なら、もしかしたらあそこ以外にも研究所はあって、僕達以外に生き残っている人がいるかもしれない。

その時は、、僕と『同じように』して、全員救わないといけない。
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