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誤字脱字
しおりを挟むある時代、吟遊詩人に続き、ある職業が幅を利かせていた。
吟遊詩人が活躍したのは、まだメディアが発達していない冒険者やモンスター、ドラゴンが血沸き肉躍る死闘を繰り広げてきた時代である。その職業はそれから少し時間が経過してから生まれたものだ。
吟遊詩人は口で、語り聞かせときには演奏や曲芸を披露しながら冒険を紡ぐ。しかしそれだとどうしても情報の劣化が見られるし、自分が好きな時に見ることができない。
故に執筆家の職業が生まれたときは画期敵だった。執筆家は、魔法でモノを複製する技術を持ち、オリジナルの本があれば複製して売ることができるのだ。
ただ、複製と言っても物質を創造するわけだから、マナの消費も激しかった。それに複製魔法は高度な魔法で、戦いの魔法を修練しながら習得できるものではない。
冒険に役立つ魔法、そして複製魔法はどちらかを取るというのが一般的である。
故に複数人で複製し、出版社のようなものを作るというのは、冒険者のあふれるその時代、一般的ではなく、執筆家と呼ばれる流れ者がその場所で本を売るというのが一般的だ。そしてその本も、執筆家自身が書いた本であることが多かった。その方が文字を正確に複製できるからだ。複製魔法は複製する対象を正確に認識する必要がある。読者よりも執筆したもののほうが断然使うマナが少なくて済むのだ。
つまり、ここで言いたいのは、執筆家という職業は、出版社と作者の両方の役割を持っていたということである。コピー紙同人誌を配るようなものだた。
そして、ある執筆家がとある本を売り出した。その本はそこそこ広まっていったが、その本をAと呼ぶとしよう。ある読者がAを大層気に入った。だがAにはある欠陥があった。Aはところどころ誤字や脱字が散見していたのである。執筆家は大抵読書家なので、そういうのに注意している人が多く、ほとんど誤字はなかったのだが、Aの作者は複製魔法や物語を書くことが多少特異なだけの流れ者だったので、適当に書くことが多かった。
しかし、その読者は別だった。
「誤字脱字、たださねばならぬ」
既にAはあらゆる地方に配られていた。そしてその読者はその旅の途中、その一つ一つを修正していったのである。
その目的は当然、Aの複製元、オリジナル本の修正である。
そして人のうわさを伝って、とうとうAの作者を追い詰めた?のだ。
「さあ、渡してもらいましょうか。その本を」
「な、なんだね君は?!」
「ひっひっひ、取って食おうというわけではないんです。ただその本を修正させてもらいます」
「な、なにー?!」
そして読者はこれまでの旅の目的を離した。
「なるほどな。君は私の本のファンだったのか・・しかしそれは問屋が卸さないな」
「なにー?!私は誤字達治を修正するだけなんですよ?!感謝されてもよいことであるはず!」
「あなたにはわからないだろうがね。誤字脱字は芸術なんだよ。誤字脱字があることによって、味というか、品が生まれるんだ。修正してしまったら私の物語ではなくなるんだよ」
「・・・・」
「分かったらこんな旅は辞めるんだよ?いいね」
「・・・・・」
「分かった?」
「うーん」
そんな感じで納得しない読者だった。感謝されこそすれ邪険に扱われるとは夢に思わなかったのである。故に心にしこりが残ったのだ。
まあ、そんな感じで、
「Aという本はいらないか?」
「おや、それはまあまあ面白いと噂の?一つもらおうか」
「毎度あり」
本を売ってさるあとから、
「さて、さっそく読むか・・ん?誰だ君は」
「あの、お客さん・・それ修正してあげましょうか?」
「え?」
「それは脱字が多いのです。私はそれを修正するのです」
「何だそのトーン無し目は・・なんかこわ」
「いいから修正するのです!」
そんな言い合いがあるという。
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