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第一章 出逢い
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ユクシー・ファンダー、20歳。
王立学園を優秀な成績で卒業して、晴れて国の研究機関へと就職することができた。
侯爵家の次男であるため、家を継ぐ必要もなく、面倒な婚約者もいない。
自由にやりたいこをやって、日々暮らしていた。
「ファンダー様、お手紙でございます」
研究室の部屋に事務の人間が自ら手紙を持ってやってくる。
いつもは他の手紙と同じように持って来るのに、どうしたというのか。
封蝋は実家の紋章の物なので、急ぎなのだろう。
差出人は兄のケイセルだった。
「‥‥は?」
手紙の内容は、明後日に王城に来るようにとのことだった。
馬車を出すからそれに乗って来るように、とは大事だ。
実家に呼ばれるならわかるが、何の用なのか。
兄は王太子の側近として働いているから、ディクソン王太子からの内密な依頼なのかもしれない。
めんどくさいことにならなければいいが。
嫌な予感に苛まれながら、ユクシーは迎えに来た王城へと向かう馬車に乗るのだった。
王城に着いて、迎えに来たのは顔見知りの兄の部下だ。
行き先は来客用の前棟や王太子が執務をしている政務棟ではないらしい。
城の中では無く庭を進んでいく。
この先にあるのは、王族の私的な生活空間のはず。
「通ります」
王城の堺にある門に立つ衛兵が、鉄の扉を開けてくれる。
ここからは許された人間しか立ち入れない場所だ。
こんな場所、王族付の人間じゃないと入れない。
しばらく歩くとお茶の用意がされているガゼボに着く。
座るように促され、ユクシーはとりあえず座って今日呼んだ人物が来るのを待った。
「遅くなった、すまない」
兄の姿が見え、その後ろにやはり王太子がいる。
礼をするが、すぐに頭を上げるように言われる。
「こちらが私の末の弟のユクシーです」
兄が王太子に紹介してくれる。
「ユクシー・ファンダーです。お目にかかれて大変恐縮でございます」
「よい、堅苦しいのは無しだ」
王太子と共に兄もこの席に着いたことから、一緒にいてくれるらしい。
いきなり、王太子と二人きりにされたら失神するところだった。
「今日君を呼んだのは、ユクシー君にお願いがあってのことだ」
一通りお茶を嗜んだ後、王太子が本題を口にした。
「ケイセルから、君はどうだろうと推薦をもらってね。何でも、学生時代はたいそう優秀だったそうじゃないか」
「いえ‥私は学ぶのが好きなだけでしたから」
兄は何をしてくれやがったのか。
「王族の恥にもなることだけど。ケイセルの身内だから信頼させてもらうよ」
「もちろんでございます、殿下」
王族のプライベート空間で見聞きしたことは、他言無用だ。
漏らせば重い罰が下る。
「君にはリオネルの家庭教師をして欲しいんた」
リオネルとはこの国の第三王子のことだ。
つまり、ディクソン王太子の弟になる。
「今、リオネル殿下は王立学園の騎士課程で日々頑張っていらっしゃいます」
兄が説明じてくれるらしい。
「ですが、あまり成績が奮わず。教師達も困っているようなのです」
学園の教師達が訴えられるなら、よほどなのだろう。
彼らも王子が成績が悪ければ、自分たちのせいにされて処罰されることを恐れているのかもしれない。
しかし、騎士課程は教養課程とは違い、それほど勉強は難しくないはずだ。
もしかして、とユクシーは兄を見る。
「リオネル殿下は王族ではありますが、彼が入学前に修めたのは一般的な貴族レベルです」
その言葉にホッとする。
リオネルは王子ではあるが継承権はない。
彼の母親は王が地方視察に出かけた際に見初めた平民で、王城での生活では窮屈だろうと王家の直轄地で育てられてきた。
まともに教育されてなかったのかと、心配してしまった。
「リオネルのこと、任せてもいいだろうか?」
王太子というより、弟を心配している兄としてこちらを見てくるディクソン。
今年30歳になる王太子より、彼の娘の方がリオネルには年が近い。
それもあってほってはおけないのかもしれない。
「リオネル殿下がどのような状態かわかりませんので成果は今ここでお約束できませんが、私のできる限りの力を以て頑張りたいと思います」
「それでよい」
王太子が満足そうに頷き、その日は無事に終えることが出来た。
王立学園を優秀な成績で卒業して、晴れて国の研究機関へと就職することができた。
侯爵家の次男であるため、家を継ぐ必要もなく、面倒な婚約者もいない。
自由にやりたいこをやって、日々暮らしていた。
「ファンダー様、お手紙でございます」
研究室の部屋に事務の人間が自ら手紙を持ってやってくる。
いつもは他の手紙と同じように持って来るのに、どうしたというのか。
封蝋は実家の紋章の物なので、急ぎなのだろう。
差出人は兄のケイセルだった。
「‥‥は?」
手紙の内容は、明後日に王城に来るようにとのことだった。
馬車を出すからそれに乗って来るように、とは大事だ。
実家に呼ばれるならわかるが、何の用なのか。
兄は王太子の側近として働いているから、ディクソン王太子からの内密な依頼なのかもしれない。
めんどくさいことにならなければいいが。
嫌な予感に苛まれながら、ユクシーは迎えに来た王城へと向かう馬車に乗るのだった。
王城に着いて、迎えに来たのは顔見知りの兄の部下だ。
行き先は来客用の前棟や王太子が執務をしている政務棟ではないらしい。
城の中では無く庭を進んでいく。
この先にあるのは、王族の私的な生活空間のはず。
「通ります」
王城の堺にある門に立つ衛兵が、鉄の扉を開けてくれる。
ここからは許された人間しか立ち入れない場所だ。
こんな場所、王族付の人間じゃないと入れない。
しばらく歩くとお茶の用意がされているガゼボに着く。
座るように促され、ユクシーはとりあえず座って今日呼んだ人物が来るのを待った。
「遅くなった、すまない」
兄の姿が見え、その後ろにやはり王太子がいる。
礼をするが、すぐに頭を上げるように言われる。
「こちらが私の末の弟のユクシーです」
兄が王太子に紹介してくれる。
「ユクシー・ファンダーです。お目にかかれて大変恐縮でございます」
「よい、堅苦しいのは無しだ」
王太子と共に兄もこの席に着いたことから、一緒にいてくれるらしい。
いきなり、王太子と二人きりにされたら失神するところだった。
「今日君を呼んだのは、ユクシー君にお願いがあってのことだ」
一通りお茶を嗜んだ後、王太子が本題を口にした。
「ケイセルから、君はどうだろうと推薦をもらってね。何でも、学生時代はたいそう優秀だったそうじゃないか」
「いえ‥私は学ぶのが好きなだけでしたから」
兄は何をしてくれやがったのか。
「王族の恥にもなることだけど。ケイセルの身内だから信頼させてもらうよ」
「もちろんでございます、殿下」
王族のプライベート空間で見聞きしたことは、他言無用だ。
漏らせば重い罰が下る。
「君にはリオネルの家庭教師をして欲しいんた」
リオネルとはこの国の第三王子のことだ。
つまり、ディクソン王太子の弟になる。
「今、リオネル殿下は王立学園の騎士課程で日々頑張っていらっしゃいます」
兄が説明じてくれるらしい。
「ですが、あまり成績が奮わず。教師達も困っているようなのです」
学園の教師達が訴えられるなら、よほどなのだろう。
彼らも王子が成績が悪ければ、自分たちのせいにされて処罰されることを恐れているのかもしれない。
しかし、騎士課程は教養課程とは違い、それほど勉強は難しくないはずだ。
もしかして、とユクシーは兄を見る。
「リオネル殿下は王族ではありますが、彼が入学前に修めたのは一般的な貴族レベルです」
その言葉にホッとする。
リオネルは王子ではあるが継承権はない。
彼の母親は王が地方視察に出かけた際に見初めた平民で、王城での生活では窮屈だろうと王家の直轄地で育てられてきた。
まともに教育されてなかったのかと、心配してしまった。
「リオネルのこと、任せてもいいだろうか?」
王太子というより、弟を心配している兄としてこちらを見てくるディクソン。
今年30歳になる王太子より、彼の娘の方がリオネルには年が近い。
それもあってほってはおけないのかもしれない。
「リオネル殿下がどのような状態かわかりませんので成果は今ここでお約束できませんが、私のできる限りの力を以て頑張りたいと思います」
「それでよい」
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