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新生活 〜Side S〜
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貴俊達の集団を自分たちが座る席からながめていた。
実咲が、アルファのフェロモンが舞う大学生活になかなか適応できていない。
一つの原因は、『狼』のフェロモンをまとう僕なんだけど、実咲は大丈夫だと言ってくれている。
「あ、やば……」
慶一がつぶやく。
何がやばいのか、僕もすぐに認識する。
「僕、ちょっと行くね」
実咲が「うぅ…」と声を漏らして、頭を抱える。
こっちを視認しただけでオメガの体調を崩せることができるなんて、やっぱり『狼』ってすごいんだな。
そんなことを他人事のように感じる。
実咲は貴俊の視線に体調を崩すが、僕は逆に心が軽くなる気分だ。
僕は自分の食べた食器を片付け、一人歩いてくる貴俊に合流する。
「どうかした?」
「もう、ご飯終わったんだ」
貴俊が学内で僕に話しかける時、絶対に彼の取り巻きのアルファは置いてくる。
「ちょっと授業が早く終わったんだ」
アルファは独占欲が強い。特に『狼』のアルファはその傾向が強いと言われている。
僕たちは番になっていないけど、貴俊の『狼』の独占欲は発揮されている。
『俺の周りの人間には近寄るな』
それが、大学生活を送る上での貴俊と僕のルールだった。
アルファの独占欲だけじゃない、貴俊の周りにいるアルファから僕を守るためでもある。
そして、貴俊は僕には近寄る時は絶対に周りの友人達を一定以上近付けないようにしてくれていた。
大事にされている、と感じて、僕のオメガが満足している。
「今日、新歓で遅くなるから、夜ご飯はいらない」
「了解です」
わざわざ連絡できることを言いにきてくれたらしい。
貴俊の手が、僕の頬に触れる。
「気をつけて帰れよ」
頬に触れた指が耳の後ろを通り、首筋を伝う。
僕の首にまかれているオメガのために項を守るガードに爪をかける。
特殊樹脂と指紋認証錠で作られたそれが外れないかの確認のようだ。
鎖骨までおりた手は、僕に温もりを残して離れた。
「ごめん、友達待たせてるから…」
「早くお昼ご飯食べないと時間無くなっちゃうね」
そう言って、貴俊と別れた。
学食の端で話していた僕たちから、貴俊の友人達の席は遠い。
小走りでテーブルの間を行く貴俊は、色んな視線に絡みつかれていた。
僕はそんな彼を気にしないように、学食から足早に出た。
スマホを取り出せば、慶一から自分達がいる場所を知らせる連絡が来ていた。
次の授業が行われる教室にさっさと移動したらしい。
昼休みの時間はまだあるが、僕も急いで移動する。
そして教室に入って二人のそばに行けば、実咲にすごい睨まれてしまった。
「まぁた、マーキング濃くなってるし……」
うんざりとつぶやかれる。
何をしたわけでもないけど、そんな風に指摘されたら恥ずかしい。
「俺はフェロモンのマーキングとかわからないけど、目があったら睨まれるしなぁ…」
貴俊の独占欲の強さを列挙されても、僕はどうすることもできない。
まだ、僕達はこの先の未来を決めかねていた。
お互い始まったばかりの関係だから、もう次のステップに進むことに躊躇いがある。
それに、僕自身の気持ちもまだ定まっていない。
今はまだ、この曖昧な状況を続けたかった。
まだ、僕の発情期まで時間がある。
それまでに、二人の関係をどうするか、決めなければいけないのだろう。
実咲が、アルファのフェロモンが舞う大学生活になかなか適応できていない。
一つの原因は、『狼』のフェロモンをまとう僕なんだけど、実咲は大丈夫だと言ってくれている。
「あ、やば……」
慶一がつぶやく。
何がやばいのか、僕もすぐに認識する。
「僕、ちょっと行くね」
実咲が「うぅ…」と声を漏らして、頭を抱える。
こっちを視認しただけでオメガの体調を崩せることができるなんて、やっぱり『狼』ってすごいんだな。
そんなことを他人事のように感じる。
実咲は貴俊の視線に体調を崩すが、僕は逆に心が軽くなる気分だ。
僕は自分の食べた食器を片付け、一人歩いてくる貴俊に合流する。
「どうかした?」
「もう、ご飯終わったんだ」
貴俊が学内で僕に話しかける時、絶対に彼の取り巻きのアルファは置いてくる。
「ちょっと授業が早く終わったんだ」
アルファは独占欲が強い。特に『狼』のアルファはその傾向が強いと言われている。
僕たちは番になっていないけど、貴俊の『狼』の独占欲は発揮されている。
『俺の周りの人間には近寄るな』
それが、大学生活を送る上での貴俊と僕のルールだった。
アルファの独占欲だけじゃない、貴俊の周りにいるアルファから僕を守るためでもある。
そして、貴俊は僕には近寄る時は絶対に周りの友人達を一定以上近付けないようにしてくれていた。
大事にされている、と感じて、僕のオメガが満足している。
「今日、新歓で遅くなるから、夜ご飯はいらない」
「了解です」
わざわざ連絡できることを言いにきてくれたらしい。
貴俊の手が、僕の頬に触れる。
「気をつけて帰れよ」
頬に触れた指が耳の後ろを通り、首筋を伝う。
僕の首にまかれているオメガのために項を守るガードに爪をかける。
特殊樹脂と指紋認証錠で作られたそれが外れないかの確認のようだ。
鎖骨までおりた手は、僕に温もりを残して離れた。
「ごめん、友達待たせてるから…」
「早くお昼ご飯食べないと時間無くなっちゃうね」
そう言って、貴俊と別れた。
学食の端で話していた僕たちから、貴俊の友人達の席は遠い。
小走りでテーブルの間を行く貴俊は、色んな視線に絡みつかれていた。
僕はそんな彼を気にしないように、学食から足早に出た。
スマホを取り出せば、慶一から自分達がいる場所を知らせる連絡が来ていた。
次の授業が行われる教室にさっさと移動したらしい。
昼休みの時間はまだあるが、僕も急いで移動する。
そして教室に入って二人のそばに行けば、実咲にすごい睨まれてしまった。
「まぁた、マーキング濃くなってるし……」
うんざりとつぶやかれる。
何をしたわけでもないけど、そんな風に指摘されたら恥ずかしい。
「俺はフェロモンのマーキングとかわからないけど、目があったら睨まれるしなぁ…」
貴俊の独占欲の強さを列挙されても、僕はどうすることもできない。
まだ、僕達はこの先の未来を決めかねていた。
お互い始まったばかりの関係だから、もう次のステップに進むことに躊躇いがある。
それに、僕自身の気持ちもまだ定まっていない。
今はまだ、この曖昧な状況を続けたかった。
まだ、僕の発情期まで時間がある。
それまでに、二人の関係をどうするか、決めなければいけないのだろう。
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