○○○○の死亡推理

海夏世もみじ

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第15話 澄んだ蒼穹に落ちる-①

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「――……ん? なんか、誰かに見られてるような気がする」
「どしたのレオパくん。何か面白い虫でもいた?」
「うーん、俺の気のせいか……。なんでもない」

 どこからか誰かに見られているような感覚がし、周囲をキョロキョロと見渡すが、誰もいなかった。レッドカーペットや落下してきたシャンデリアなど、先ほどとは何も変わっていない。
 謎の気配に気を取られていたが、俺たちは何をしていたんだったか。……そうだ。確か俺はクウナと謎の契約みたいなのをして、屋敷であった死体がひとりでに消えた事件の謎を解こうとしていたんだった。

 俺の隣では「そういう時期だよね、わかるわかる。ボクは君の理解者だよ!」と、クウナが琥珀色の瞳を輝かせながらサムズアップしている。何か勘違いされているっぽいが、まあ誤解を解くのも面倒だしいいだろう。

「そんで、コイツどうすんだ? ぶん殴っていいのか?」
「ひえええええええ! 許してください許してください‼」

 地面に尻もちをついていたとある男の胸倉を掴んで持ち上げ、もう片方の手を握りしめて振り上げる。魚の腹のように白い顔で、ヒョロヒョロのもやしのような肉付きの悪い身体をしている。空の段ボール箱でも持ち上げるかのようにいとも容易く持ち上げられた。
 俺に心底恐怖して泣きわめいているコイツは――である。

「ストップだよレオパくん。色々と聞きたいこともあるしね」
「了解。……にしても、まさかしてくるとは思わなかったな」
「あ、ありがとうございますぅ……。肩を揉ませてくださいぃ……ふひひ」
「……なんか気持ち悪っ。レオパくん、前言撤回だよ。殴ってヨ~シ!」
「よっしゃ来た! 歯ァ食いしばれよ殺人鬼‼」
「ひ、ひ、ひえええええええっ‼」

 まあ一応警察が屋敷の外にいるし、ぶん殴るのはまたの機会としようか。
 そう呟いて犯人を離し、彼と床と早めの再開をさせた。顔からダイブをして、熱烈の接吻をしている。先ほどの俺たちと比べたら些細なものだとうと誰かが囁き、再び顔が熱くなりそうになった。

「さて、それで君は何で自首をしたのかな? 詳しく聞かせてもらおうか」
「あ、は、はい。自分は秋絵誘戸あきえゆうとっていうんですけど、その……。じ、自分は犯人ですけど、殺してはいないんですぅ! 殺したのはもう一人のやつなんですぅ‼」
「ほ~ん。で? そのってのは誰なんだ?」
「わかりませんんん‼」

 俺とクウナは怪訝な顔を見合わせる。どういうことだろうかと尋ねても、クウナも肩をすくめて手を挙げ、まだわからないとのことだ。
 この犯人改め誘戸という男は、この事件においての共犯者という立ち位置なのだろう。こんなになよなよしている奴が計画的に犯行を企て、人を殺すなんて想像はできないし。

「それじゃ、詳しく聞かせてよ。なぜその真犯人に君は協力したのか、どうやって協力したのかをね」
「は、はいぃ……。自分はあのシェアハウスの一員で、ごくごく普通に暮らしてました……。けっ、けどある日、部屋で一人で動画を見ていたら、声がしたんです……。部屋には自分一人なのに、耳元で囁かれたんですぅ……! 『貴方が人間ではないことはわかっております』ってぇ‼ 寝落ちもちもちみたいな声色でぇ‼」
「悪趣味なASMRだな。星一のレビュー書いてやれ」
「レオパくん、突っ込むとこはそこじゃあないでしょうが。共犯者くん、君は――なのかい?」
「あっ、はい。自分はです……」

 まさかコイツも異人だったとは。内心驚きつつ、言葉を紡ぐ共犯差に耳を傾ける。

「自分の能力は、対象の血を吸って細菌を潜り込ませて、十分に繁殖させます。それで、強い陽の光が当たらなくて、目視している時かつ絨毯の上にいる時だけ操れるんです……。その能力をいつ透明人間に知られたのかわかんないんですが……」
「それで脅されて犯行に加担したってことか」
「は、はいぃ……。その透明人間が殺して、自分は人目がないうちにその死体を操って隠したんです……。ごめんなさいいい‼ 楽しかったあの時間、返してほしいですぅ……‼」

 真犯人は透明人間。警察や他の誰かに伝えようが、透明ゆえにいつ見られているかわからないため、異人専門探偵のクウナが来るまで話せなかったというわけなのだろう。
 常に見られているかもしれないという心理状況で、パノプティコンの監獄のような状態だったのか。真犯人は質の悪い能力を持っているな。

「フムフム。真犯人が残した痕跡的な物とかはないかな?」
「あ……それが、このカードを毎回残していて……」

 懐から取り出したスマホの写真フォルダから、一枚の写真を見せられる。そこには水たまりの前で立体の〝ABCDE〟が並んで、水面にそれが映っており、影もあるカードであった。

「何だこりゃ? クソダサフォントでセンスってもんがないな。中学生が初めて触ったパワポかよ」
「確かに、正気を疑うレベルでセンスはないねぇ。邪悪な人間性が垣間見えるよ」
「そこまでは思ってない。オイオイ、マジかよクウナ」
「お~い! せっかくボクも乗ったんだから最後まで梯子を外すなよレオパくん!」
「いたたた! す、すみあふぇん‼」

 フグのように頬を膨らませながら俺の両頬を引っ張り、可愛らしく怒りを露わにしているクウナ。薄っぺらくどこかへ飛んでいきそうなほど軽い謝罪をしつつ、なんとか彼女を宥める。
 共犯者は「仲いいんだね……」と、どこか生暖かい視線をこちらに向けてはにかんでいた。そう、これは共犯者を落ち着かせるための行為だ。そういうことにしておこう。

「全く……。大体わかったから、事件現場に行ってしに行くよ! レッツゴー!」
「はいよ。……頬がひりひりする」

 赤くなった頬をさすりながら、クウナの後ろについていく。ブラウン色の扉を開けると、そこには白いテーブルクロスで覆われた長い机や、並べられた椅子の数々などがある部屋へとやってきた。

 見るからに屋敷の食堂と言った具合で、キャビアやらフォアグラやらが出てきそうな雰囲気である。ただ、それを想像するにはこの転がった椅子や散らかった机上と言った荒れ模様に目を瞑る必要がありそうだ。

「ここで殺された人は?」
「あ、えっと……。最初に殺されたのは三日前の月曜日、荒川出来あらかわいづきという同居人です。ここで休憩している時に苦しみ始めて、そのまま倒れました……。肌に蕁麻疹が出てたり、嘔吐だったり、あとは……息苦しそう、でした……」

「それじゃないのか? 俺も色んなもん食べてよくそれになるからわかるぞ!」
「レオパくんは今の食生活を見直すべきだ。……ただ、そうだねぇ。レオパくんのその推理で正しいだろう」

 シェアハウスで料理は交代制とかだろうが、各々のアレルギーなどは把握しているはずだろう。それに気が付けなかったのか?

「よし、共犯者くんは一旦外に出ていてくれ」
「あ、は、はいぃ……」
「じゃあ行くよ、レオパくん。――【死亡推理メメント・モリ】、〝Repeat〟!」
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