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第17話 澄んだ蒼穹に落ちる-③
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警察から知らされたのは、新たな被害者が出てしまったということ。
思わずクウナも眉を顰める。
「なんだって? ふむ……報告ありがとう」
(警察もクソダサカードって言っててじわるな)
ただ、今回の事件では屋敷内ではないことが気がかりだ。てっきりこの屋敷の住人に恨みがあるものだと思っていたのだが、違うのかもしれない。
彼女の琥珀色の瞳は一点を見つめ、ブラックホール並みの吸引力でこちらも引き込まれそうになる。暫く彼女の瞳を見つめていると、瞬きをした後にこちらに視線を向けてきて驚き、心臓が跳ねた。
「よし、この三人目の事件は大体推理できている。殺された四人目のもとへ行くよ」
「オーケー、了解だ」
「じ、自分もお供しますぅ……」
俺たち三人は屋敷を飛び出し、四人目の被害者が発生した場所へと急行する。道中、誘戸が太陽光に焼かれて瀕死になるという珍事件が起きたが、くだらない事件だったため推理する必要もなかった。彼は咽び泣いた。
そして到着したのは、夏場に子供たちが遊ぶ、コンクリートの地面から水が噴き出る噴水広場だ。
「被害者はここで殺されたのかな?」
クウナは近くにいた警察官にそう尋ねる。尋ねられた警官は敬礼をし、説明を始めた。
「はい。被害者は出嶋反尾という男性で、子どもと遊んでいたところ突然苦しみ始め、倒れたと。そしていつの間にやら姿が消え、件のカードが……」
「そっか。説明ありがとう。今から推理するから、人払いよろしくね~」
「了解しました」
自分の手下のように警官を顎で使い、みるみる周囲から人が減ってゆく。さすがは名探偵だなと感心した表情をしていたが、クウナがこちらを向いて「これがボクの威厳だよ。思い知ったかい?」と言っているかのような、嘲笑を孕んだ面をしていた。
それに対して俺は中指を立てる……のは相棒としてよくないので、人差し指と小指を立ててメロイックサインを送る。ロックンロォール! 彼女は噴き出した。
「くっ……ふふぅっ……! こ、コホン。ふざけてる場合じゃないよ!」
「どの口が言うか、どの口が」
「さっ、この事件も起きたてホカホカの内に解決しちゃうよ!」
「へいへい」
誘戸も同じように遠ざけ、この噴水広場に二人っきりになったタイミングで、彼女は異能力を発動させる。
「【死亡推理】! 〝Repeat〟!」
彼女から放出が放出した影は数多の人影を生み出し、人通りが多い中での犯行であったことが容易に推測できる。そして、俺は背の低い影と噴水の中で戯れていることから、今回は珍しく被害者になっているらしい。
被害者の子供らしき影と遊んでいると、突然金縛りにでもあったかのように体が動かなくなり、口内が得体のしれない何かで満ち満ちる。プールにて息を止め忘れ、鼻や気管に水が入るあの嫌な感覚だ。
その時俺は、ああなるほどとな納得した。死に方の中でかなり苦しい死に方は溺死とよく聞くが、本当みたいだなと。
「――ぶはッ⁉ ゲホッゴホッ! カハッ……‼ くっそ苦しかったぁ……‼」
「大丈夫かいレオパくん。気分はどうかな?」
「最ッ高に最悪な気分だ……」
「にひひ。それはそれは、何よりだねぇ」
異能力が解除されてもその苦しさは残り、膝をついて咳き込む。クウナは心配してくれているのか曖昧な反応だったが、彼女とのこの生活を続けるには〝死に癖〟をつけておく必要がありそうだ。
「レオパくんは何が死因だと考える?」
「え? えぇと、口と鼻に粘り気のあるドロドロした液体? みたいなやつを流し込まれてた感覚だから溺死じゃないかなーって思ったぞ」
「うん、正解。今回の事件の死因は溺死だ。犯人であるボクは、君に腕を伸ばして拘束して、口にとある物を流し込んでいたよ」
そのとある物とはなんだと問うと、クウナはキョロキョロと周囲を見渡して、俺の手を引いて連れていく。
連れていかれた先は人気のない路地裏だった。俺たちは路地裏に何かと縁があるのかもしれない。そんなことを心の中で呟いていると、クウナが突然取り乱す。
「ふんふんふんふん‼」
「く、クウナがご乱心だァーーッ⁉」
クウナは自分のコートを脱いだかと思えば、それを振り回し始めたのだ。
「だ、大丈夫かクウナ! 畜生、新手の異人の攻撃か⁉ こうなったら俺もソーラン節で対抗するしか……‼」
「ボクが頭おかしくなったわけじゃあないよ。ほら、これ見て」
「ん?」
クウナが指さす先には、黒い塊があった。先ほどまではそんなものなかったような気がしたが。
彼女はそれを指で拭い、親指と人差し指を擦り合わせて感触を確かめている。
「黒く、粘液質な液体。そして、何よりこれは――イカ臭い」
「イカ臭いって……あっ、まさか今回の犯人ってまさかイカの異人か⁉」
「正解。擬態能力がずば抜けていることから、それが得意な〝コウイカ〟とかかなぁ」
この黒い液体は異人の能力によるもので、イカ墨なのだろう。イカは本来、皮膚に含まれる色素細胞を制御して変色・擬態をする。しかし異人はそのモチーフとなったイカの能力の解釈を拡大させ、〝イカ墨の色も変えられる〟という能力へと成ったのかもしれない。
先ほどの溺死も、透明に見えるイカ墨を流し込まれての犯行だったとのこと。そして、乾けば元の黒色になると推理したのでコートを振り回して風を起こしたらしい。
「さ~て、レオパくん。今回の事件の法則性、君でもそろそろわかるはずだ。というか、わからなければ助手としてスパルタ訓練しなくちゃならなくなっちゃうよ~?」
「えっ、クウナからビシバシとあんなことやこんなことの訓練をッ⁉」
「あんなこともこんなこともそんなこともするつもりはないよ! 君が望むならまぁ……考えておくけどさぁ……」
冗談で言ったものに対して、満更でもなさそうな顔をしないでほしいものだ。と言うか、クウナは俺に対しての警戒心が極端に低い気がするのだが、なぜなのだろう? いや、今はクウナからの試練に頭を使おう。
殺されたのは、この時点で荒川出来、馬場口信音、蝶野結華、出嶋反尾という者。死因はアナフィラキシーショックやら焼死などなどと、法則性は特になさそうだが。あのクソダサフォントのカードが関係しているのだろうか。
英語……いや、ABC? あれ、確か有名な殺人事件があった気が……。
「あっ――〝ABC殺人事件〟か?」
「及第点、ってとこかな。よくできました! にひひ、頭撫でてあげよっか?」
「クウナ、お前な……俺を子ども扱いするんじゃあないッ! 甘々ナデナデコースでお願いしまぁあす‼」
「君は清々しいほどに欲望に忠実だねぇ……よしよし」
彼女に褒められながら頭を撫でられるという最高の肥料で俺の自尊心はむくむくと成長し、鼻も伸びる勢いだ。
最初の被害者の苗字の頭文字はアラカワのA。二人目はババグチのB。三人目はチョウノのC。そして最後がデジマのD、と。カードにはEまで書かれていたし、あと一人は確実に殺すつもりなのだろう。
「クウナは他にも分かったことがあるのか?」
「そりゃもちろん。次殺される人もわかってるよ」
「え、そうなのか? じゃあさっさと助けに行こうぜ」
「まぁ待ちたまえ。この連続殺人事件、計画的に殺して回っている犯人だ。次殺される人がわかっているのなら、君はどうしたい?」
「んなもん決まってんだろ。先回りして犯人に嫌がらせをする! それ一択よォ……‼」
「やはり君とボクの思考回路は凄く似ているねぇ。ボクも同じことを考えていたさ……‼」
ケタケタと邪悪な笑いをする俺たち二人は、傍から見れば犯人と見間違われるかもしれない本性が滲み出ている。
「ま、殺されるのは明日だろうし、今日は家に帰って英気を養うとしよう」
「おー、わかった。今日はバイトもないし橋の下にでも帰るかー」
「うんうん! ……うん……? 今、ナンテ?」
「え? ああ、俺って親戚の家たらい回しさせられてんだけどさ、引き取ったやつがヤバい奴だったから橋の下とか公園とか、山の秘密基地で生活してんだよ」
「――――」
絶句。
クウナの口は大きくあんぐりと開いているが、そこから声が出てくることはなかった。
彼女の顔の前で手をひらひらと振ると、ようやく意識が戻ったのか言葉を発する。
「レオパくん」
「なんだぁ?」
「――今日からボクと一緒に暮らそう」
「はあ。――……は……?」
思わずクウナも眉を顰める。
「なんだって? ふむ……報告ありがとう」
(警察もクソダサカードって言っててじわるな)
ただ、今回の事件では屋敷内ではないことが気がかりだ。てっきりこの屋敷の住人に恨みがあるものだと思っていたのだが、違うのかもしれない。
彼女の琥珀色の瞳は一点を見つめ、ブラックホール並みの吸引力でこちらも引き込まれそうになる。暫く彼女の瞳を見つめていると、瞬きをした後にこちらに視線を向けてきて驚き、心臓が跳ねた。
「よし、この三人目の事件は大体推理できている。殺された四人目のもとへ行くよ」
「オーケー、了解だ」
「じ、自分もお供しますぅ……」
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そして到着したのは、夏場に子供たちが遊ぶ、コンクリートの地面から水が噴き出る噴水広場だ。
「被害者はここで殺されたのかな?」
クウナは近くにいた警察官にそう尋ねる。尋ねられた警官は敬礼をし、説明を始めた。
「はい。被害者は出嶋反尾という男性で、子どもと遊んでいたところ突然苦しみ始め、倒れたと。そしていつの間にやら姿が消え、件のカードが……」
「そっか。説明ありがとう。今から推理するから、人払いよろしくね~」
「了解しました」
自分の手下のように警官を顎で使い、みるみる周囲から人が減ってゆく。さすがは名探偵だなと感心した表情をしていたが、クウナがこちらを向いて「これがボクの威厳だよ。思い知ったかい?」と言っているかのような、嘲笑を孕んだ面をしていた。
それに対して俺は中指を立てる……のは相棒としてよくないので、人差し指と小指を立ててメロイックサインを送る。ロックンロォール! 彼女は噴き出した。
「くっ……ふふぅっ……! こ、コホン。ふざけてる場合じゃないよ!」
「どの口が言うか、どの口が」
「さっ、この事件も起きたてホカホカの内に解決しちゃうよ!」
「へいへい」
誘戸も同じように遠ざけ、この噴水広場に二人っきりになったタイミングで、彼女は異能力を発動させる。
「【死亡推理】! 〝Repeat〟!」
彼女から放出が放出した影は数多の人影を生み出し、人通りが多い中での犯行であったことが容易に推測できる。そして、俺は背の低い影と噴水の中で戯れていることから、今回は珍しく被害者になっているらしい。
被害者の子供らしき影と遊んでいると、突然金縛りにでもあったかのように体が動かなくなり、口内が得体のしれない何かで満ち満ちる。プールにて息を止め忘れ、鼻や気管に水が入るあの嫌な感覚だ。
その時俺は、ああなるほどとな納得した。死に方の中でかなり苦しい死に方は溺死とよく聞くが、本当みたいだなと。
「――ぶはッ⁉ ゲホッゴホッ! カハッ……‼ くっそ苦しかったぁ……‼」
「大丈夫かいレオパくん。気分はどうかな?」
「最ッ高に最悪な気分だ……」
「にひひ。それはそれは、何よりだねぇ」
異能力が解除されてもその苦しさは残り、膝をついて咳き込む。クウナは心配してくれているのか曖昧な反応だったが、彼女とのこの生活を続けるには〝死に癖〟をつけておく必要がありそうだ。
「レオパくんは何が死因だと考える?」
「え? えぇと、口と鼻に粘り気のあるドロドロした液体? みたいなやつを流し込まれてた感覚だから溺死じゃないかなーって思ったぞ」
「うん、正解。今回の事件の死因は溺死だ。犯人であるボクは、君に腕を伸ばして拘束して、口にとある物を流し込んでいたよ」
そのとある物とはなんだと問うと、クウナはキョロキョロと周囲を見渡して、俺の手を引いて連れていく。
連れていかれた先は人気のない路地裏だった。俺たちは路地裏に何かと縁があるのかもしれない。そんなことを心の中で呟いていると、クウナが突然取り乱す。
「ふんふんふんふん‼」
「く、クウナがご乱心だァーーッ⁉」
クウナは自分のコートを脱いだかと思えば、それを振り回し始めたのだ。
「だ、大丈夫かクウナ! 畜生、新手の異人の攻撃か⁉ こうなったら俺もソーラン節で対抗するしか……‼」
「ボクが頭おかしくなったわけじゃあないよ。ほら、これ見て」
「ん?」
クウナが指さす先には、黒い塊があった。先ほどまではそんなものなかったような気がしたが。
彼女はそれを指で拭い、親指と人差し指を擦り合わせて感触を確かめている。
「黒く、粘液質な液体。そして、何よりこれは――イカ臭い」
「イカ臭いって……あっ、まさか今回の犯人ってまさかイカの異人か⁉」
「正解。擬態能力がずば抜けていることから、それが得意な〝コウイカ〟とかかなぁ」
この黒い液体は異人の能力によるもので、イカ墨なのだろう。イカは本来、皮膚に含まれる色素細胞を制御して変色・擬態をする。しかし異人はそのモチーフとなったイカの能力の解釈を拡大させ、〝イカ墨の色も変えられる〟という能力へと成ったのかもしれない。
先ほどの溺死も、透明に見えるイカ墨を流し込まれての犯行だったとのこと。そして、乾けば元の黒色になると推理したのでコートを振り回して風を起こしたらしい。
「さ~て、レオパくん。今回の事件の法則性、君でもそろそろわかるはずだ。というか、わからなければ助手としてスパルタ訓練しなくちゃならなくなっちゃうよ~?」
「えっ、クウナからビシバシとあんなことやこんなことの訓練をッ⁉」
「あんなこともこんなこともそんなこともするつもりはないよ! 君が望むならまぁ……考えておくけどさぁ……」
冗談で言ったものに対して、満更でもなさそうな顔をしないでほしいものだ。と言うか、クウナは俺に対しての警戒心が極端に低い気がするのだが、なぜなのだろう? いや、今はクウナからの試練に頭を使おう。
殺されたのは、この時点で荒川出来、馬場口信音、蝶野結華、出嶋反尾という者。死因はアナフィラキシーショックやら焼死などなどと、法則性は特になさそうだが。あのクソダサフォントのカードが関係しているのだろうか。
英語……いや、ABC? あれ、確か有名な殺人事件があった気が……。
「あっ――〝ABC殺人事件〟か?」
「及第点、ってとこかな。よくできました! にひひ、頭撫でてあげよっか?」
「クウナ、お前な……俺を子ども扱いするんじゃあないッ! 甘々ナデナデコースでお願いしまぁあす‼」
「君は清々しいほどに欲望に忠実だねぇ……よしよし」
彼女に褒められながら頭を撫でられるという最高の肥料で俺の自尊心はむくむくと成長し、鼻も伸びる勢いだ。
最初の被害者の苗字の頭文字はアラカワのA。二人目はババグチのB。三人目はチョウノのC。そして最後がデジマのD、と。カードにはEまで書かれていたし、あと一人は確実に殺すつもりなのだろう。
「クウナは他にも分かったことがあるのか?」
「そりゃもちろん。次殺される人もわかってるよ」
「え、そうなのか? じゃあさっさと助けに行こうぜ」
「まぁ待ちたまえ。この連続殺人事件、計画的に殺して回っている犯人だ。次殺される人がわかっているのなら、君はどうしたい?」
「んなもん決まってんだろ。先回りして犯人に嫌がらせをする! それ一択よォ……‼」
「やはり君とボクの思考回路は凄く似ているねぇ。ボクも同じことを考えていたさ……‼」
ケタケタと邪悪な笑いをする俺たち二人は、傍から見れば犯人と見間違われるかもしれない本性が滲み出ている。
「ま、殺されるのは明日だろうし、今日は家に帰って英気を養うとしよう」
「おー、わかった。今日はバイトもないし橋の下にでも帰るかー」
「うんうん! ……うん……? 今、ナンテ?」
「え? ああ、俺って親戚の家たらい回しさせられてんだけどさ、引き取ったやつがヤバい奴だったから橋の下とか公園とか、山の秘密基地で生活してんだよ」
「――――」
絶句。
クウナの口は大きくあんぐりと開いているが、そこから声が出てくることはなかった。
彼女の顔の前で手をひらひらと振ると、ようやく意識が戻ったのか言葉を発する。
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「――今日からボクと一緒に暮らそう」
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