○○○○の死亡推理

海夏世もみじ

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第24話 Replica-②

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 ――数十分後……。

「ん……ね、寝てた……」
「おはよう円羽。もう到着だよ」

 今起きた私と入れ替わるように、太陽はさよならを告げて眠り始めている。パパに涎を拭かれ、そのまま目的地である輝夜の自宅まで到着した。
 平凡でどこにでもありそうな一軒家なのだが、パトカー一台が家の前に駐車されているだけで物々しくなるらしい。

「さて……どうやら篠川が電話で伝えてくれていたらしい」

 こんばんは。パパは家の前で待っていた警察官に片手を挙げて挨拶をする。

「異人専門探偵事務所、三代目名探偵の宇治梨玲央羽です。こっちは娘の円羽です」
「話は聞いております。本来なら現場への立ち入りはアレですがまあ……名探偵なら」

 異人名探偵、宇治梨玲央羽。その存在を知っている者は限られているらしいが、知る人はその推理力や戦闘力の恐ろしさを知っているとのこと。緋月さんのように助けられえた者や、過去の事件に関与した者……。

 全世界にパパの偉大さを知ってもらいたいという気持ちもあるが、それだと行動しづらいので今のこの状況が丁度良いのかもしれない。
 パパの背中を追って家の中を歩いているのだが、床には黒い足跡。ここで書道パフォーマンスでもしたのかと思うくらい、いたるところに飛散している墨らしきものが目に映る。

「……妙だ」パパが怪訝な顔で呟いたので、「どうしたの?」と私は首を傾ける。
「いや、なんとなくなんだけれど。露骨すぎて違和感があるというか、誘導されているような……」
 パパには何かしらの疑問が生じているようだったが、私が生じるのは頭の上の疑問符クエスチョンマークだけであった。
 そのまま歩き続け、一つの扉の前まで到着する。

「さて……このリビングルームがおそらく事件現場だね」
「私に任せて。〝再現〟するから」
「頼りにしているよ。僕は父親だから〝巻き込まれ〟も発動するだろうし、一緒に読み解こうか」

 ガチャリとドアノブをひねり、リビングルームへと足を踏み入れた。破損したテレビや真っ二つに割れた机、ここに怪獣でも解き放ったのかと妄想してしまうような惨状だ。そして、廊下を同じようにいたるところに墨が飛散している。床、壁、天井までも。
 私は歯で親指の皮を噛み切り、赤い血が滲み出るのを確認する。そして、能力を発動させた。

「【死亡推理カルペ・ディエム】――〝再現しろRepeat〟」

 指の血が床に落ちると同時にそれが気化し、この部屋は赤い靄で包まれる。ママは〝影〟を媒体としていたが、どうやら私は〝血〟らしい。パパの影響なのだろう。

 閑話休題。

 この赤い世界にて、私はこの室内で食卓を囲んでいるらしい。私の他には血で生成された人影が三人。私の隣にいるのは背丈が小さく、おそらく弟なのだろう。そして机を隔てて座っているのは母親、父親と推測した。

(ってことは、犯人役がパパか。今のところごく普通の日常って感じだけど……)

 箸を動かす手がピタリと止まり、私たちが先ほど入ってきた扉に顔を向ける。物音が聞こえてきたのだ。
 私の前にいる父親らしき人物は席を立ち、扉まで近づく。彼がドアノブに手をかけようとしたその瞬間、扉が開いてパパ……もとい犯人が父親の腕に注射器らしきものを突き立てた。
 数秒悶え苦しむ素振りを見せ、果てに膨張してドロドロに融解する。

(うわっ。今は血で再現しているからいいものの、生で見たら数十倍グロい光景だったでしょコレ……)

 私たち三人はその光景に慄き、震えが止まらずに腰が抜けた様子だ。私は目の前の飛散した父という悲惨な光景を見せまいと、弟を抱き寄せる。
 母親らしき形の者は私たち二人を守ろうと前に出るが、容易く捉えられて同じように注射器を刺される。しかし今度は肉体が作り変えられ、あの日見た終人と瓜二つの形だ。
 そして、最後にその針は無慈悲にも、平等に、私の腕の皮膚を貫いた。

「――あ、戻った。なんていうか、胸糞悪い予感がプンプンする……」

 血の霧は霧散し、元の世界へと戻ってきた。パパはブツブツと何かを唱え、顎に手を添えている。私も私なりに考えてみよう。

 今回この家で起きた事件は、家族が外から侵入してきた何者かによって引き起こされたもの。家族全員は物音で警戒を高めたため、身内による犯行ではないだろう。そして何より、あの注射器が謎だ。あれに入ったナニカは人を溶かしたり、終人化させていた。

 ……あれ、そういえば。仮に犯人があのイカの異人だとしたら、なんか違和感があるような?

「円羽、中学校で起きた密室殺人事件について詳しく教えてほしい。なるべく事細かく」
「え? うん、わかった」

 眉間にしわを寄せながら、そう求めるパパ。私は二つ返事で、中学校で引き起きたあの事件についてを話した。
 一通り話し終えて一息吐くと、一考の後にありがとうという労いの言葉と共に頭を撫でられる。口角が自然と吊り上がり、ネコだったら今頃喉も鳴っていただろう。
 しかし次の瞬間、パパに抱きしめられたと思えば、凄まじい突風が吹き荒れた。

「えっ、な、何⁉」
「円羽、覚えておくといいよ。〝犯人は現場に戻ってくる〟。それは強ち間違いではない、と」
「――気がついていましたか。寂しかったですよ、玲央羽さん」

 パパの蹴りを受け止めていたのは、あの時、過去の記憶の中で見た真犯人――十八澄朋であった。
 漆黒の右腕の触腕で拮抗している様子で、パパは私を抱えて後ろに飛んで距離を取る。透明になれる異能力持ちゆえに、外の警察官とエンカウントせずに済んだのだろう。

「寂しがり屋なのかな? 今から寂しがり屋のうさぎさんの異人でも名乗るのもありだと思うね」
「その煽りは子をこさえても健在というわけですか。せっかくの再開です。貴方の推理を聴かせていただけませんか?」
「なるほど、やっぱりか。まだ不確定なところは多々あるけれど……まあいいよ、今のところの僕の推理を言ってあげようか」

 逡巡することなく、パパは赤い瞳で十八を穿って言葉を連ね始めた。

「まず、今回のこの千絵家で起きた事件を整理しようか。父親は注射を刺されて死亡、母親は終人化、そして輝夜ちゃんは異人となった。人を終人や異人にする薬などは完全に未知な代物だけれど、一旦置いておこう」
「輝夜も注射されてたけど普通に学校に来てたから、その謎の薬に適応? して異人になったんだよね」
「そうだね。そして、この家に侵入してその注射器を刺した犯人は君、十八澄朋……と、と感じ取れた」

 途中までは真っ黒なシルエットに笑みを浮かべていた十八だったが、パパの最後の一言でそれは闇に消える。月が雲で隠れる様、ゆっくりと。
 パパの瞳は月に吠える狼よりも鋭く、その犯人の一挙手一投足を見逃さないと言わんばかりのものだ。

「犯人はおそらく、輝夜ちゃんに『彼氏を殺せ』と命令して、土曜日の事件が起こったんじゃないかな。詳しい理由はまだ情報不足だけど、犯人が君ならば誘戸への復讐の延長戦、他には……そうだね。僕の愛娘、円羽をおびき出すための罠だったり」
「成程。ではワタシが犯人で決まりということですか?」
「いいや、違和感がある犯行だったんだ。十五年前の君の犯行では、静かな休憩時間に被害者へと近づき、バレずに注射器点滴に刺すということをしていた。けれど、この家での犯行はバレバレだった。違和感しかない。そこで一つ、仮設が浮かんできたよ」

 事件解決の合図。指をパチンと鳴らし、そのままパパは十八に向かって指をさす。

「君は僕ら探偵のことを恨んでいる。そして、あえてミスリードを誘うような痕跡を残した。このことから君は、名探偵を名乗る僕に間違った推理をさせ、恥をかかせるという復讐を考えていたという説。どうだい? 僕の推測、どこまで合っているかな」
「……お見事。では、誰が殺したとお思いで?」
「確定ではない。が、円羽の話を聞いて怪しい人物が決まった。輝夜ちゃんの犯行現場まで付き添う形となり、最近書道部の兼部を考えており、肌が荒れていたという人物。サッカー部員の一員――。怪しいと思って漣……うちのメイドに調べてもらったらなんと、君こと十八澄朋の甥だったとのことだ」
「ッ」

 目の前の彼は、正解と言うように歯をギリッと鳴らす。私もその言葉で、脳の中に散りばめられていた点と点が繋がる音がした。

 犯人が目の前の十八ではなく雄吾だったのならば、全身にこびりついた墨を落とすのに相当肌を擦って落とす必要がある。だから肌が荒れていたし、書道部への兼部も考えていると言って誤魔化す。旧校舎まで輝夜について行ったのはただの偶然ではなく、ちゃんと殺すかどうかの監視も兼ねていた。
 これらのように考えると、雄吾が犯人なのではないかと自然に思えてくる。

「輝夜ちゃんが言いなりなのは差し詰め、弟くんを人質にしているとかかな?」
「フム……十五年経ったら、助手も立派な名探偵になるということですか。そうです、ワタシの甥に殺させて、輝夜さんは今ワタシたちの言いなりです」
「……まだ、何かするつもりなのかい?」

 何かするつもりでないなら、わざわざ目の前に現れないだろう? パパはあえて続く言葉を口に出さず、掌から血を流して凝固させ、血のナイフを作り出す。
 十八はにやりと笑みを浮かべたと思った次の瞬間、背後から銃声が響き渡った。

「なるほど。ここで確実に復讐を果たすというわけだ」

 そこには私たちの侵入を許可した警察官が、煙が立つ銃口をこちらに向けている。どうやらパパが生成した血のナイフで弾丸をはじいたようだ。そして何より、警察官の赤く光る眼光が私の目を引き寄せていた。
 これはあの時、中学校で見た時と同じ彼女の能力だ。

「輝夜の異能力……〝血鬼の苗床ラグ・ヴァンパイア〟だ……‼」
「ふむ、厄介なことになってきたね。文字通り、骨が折れそうだよ」

 パパはナイフを投げつけ、警察官が構えている銃を破壊する。ただ、外から聞こえてくる何千もの足音で思わずため息が漏れた。
 姿は見えないが、輝夜がここら一帯の人を操っているということなのだろう。
再挑戦リベンジマッチってわけだね」
「ええ、復讐リベンジマッチです。ですが、貴方には遠くに行ってもらいます」

 そう言って十八はスマホの画面を私たちに見せつける。そこには、椅子に縛り付けられている幼い男の子の姿があった。
 傍には異質な雰囲気を放つ装置があり、一目見ただけで危機的状況だというのがわかる。

「このお方は輝夜さんの弟でございます。そして、貴方が行かないのでしたら遠隔で装置を作動さして、終人にいたします」
「はぁ⁉ 最っ低……!」
「下衆野郎が……」

 どうやら犯人は、人の心を過去に置いてきたようだ。
 人質がいるのならば、史上最強のパパも無暗矢鱈に手は出せないだろう。だが、このままでは輝夜の弟が父親や母親のようになってしまう可能性が高い。犯人の狙いはおそらく私。ここで一人になるのは危険すぎる。せめて誰か、助っ人がいれば……。
 葛藤して下唇を噛み、内心で怒りを叫ぶ。するとその叫びに反応したかのように、このリビングの壁が破壊されて何かが乱入してきた。

『――お、ァアアア! 輝夜、ヲ、かえせ……‼』
「輝夜の……母親⁉」

 壁を突き破ってきたものの正体は、終人となった輝夜の母親だった。一度見たら忘れることが難しいあのビジュアル、間違いない。
 彼女は十八を殴り飛ばして、赤い血をスプラッシュさせながら壁の向こう側へと連れていく。大きく空いた壁の穴から外に出ると、そこには空に輝く星々のような無数の赤い瞳が爛爛と輝いていた。

「これは、いける?」にやりと口角を上げる。
 見たところ私たちではなく、この一連の事件を引き起こした張本人である十八に殺意が向けられていた。

「輝夜のお母さん、私たちもあのクソゴミ塵野郎ぶん殴りたいの。協力して」
『ヴヴ……わカった、ワ』

 私と十八の顔を見比べ、コクリと頷く。壁破壊は相変わらずだが、以前よりも理知的になっているような気がする。
 終人は能力のリミッターが外れている怪物であり、味方になるだけでとてつもなく心強いのだ。

「決まりだね。パパ、ここは私たちに任せて、あの子助けに行ったげて」
「……確かに、幼い子が今にも殺されそうなのは僕も許せない。けれど、他人の子と自分の子と天秤にかけたら僕は後者を選ぶよ」
「私は大丈夫。悲しませることは絶対しないから。――パパ、私を信じて」
「っ……はぁあ、まあいざとなれば〝転送〟すればなんとかなるか……。わかった、君を信じるよ、円羽」
「うん、任せて」

 半ば諦め気味に溜息を吐いて目頭を押さえるパパ。
 ここでパパが残れば一瞬で解決するのだろうが、私は一人でも多くの人を救いたい。非合理的だけれど、ニンゲンにはその心が必要なんだと思う。生まれながらの異人だから、私はニンゲンとしての心を大事にしていきたい。パパやママは憧れの存在だけれど、二人と違う道を歩みたい。

「飛んでいくか……〝乖離しろ〟」

 パパは両手をロケットパンチのように発射させ、道路の左右に生えている電信柱を掴んだ。

「ヤバいと思ったらすぐ逃げること」
「しつこい。大丈夫だから。行ってらっしゃい」
「十分で全て終わらせて帰ってくるから。――【赫血の鱗紋ブラッド・モルフ】、〝回帰しろ〟‼」 

 電信柱を掴んでいる手に引き寄せられる力を使い、逆バンジーの要領で赤いロケットが射出された。その勢いで電柱は倒れ、バチバチと電流が走る。
 あのスマホの画面だけで場所が特定できたのかはわからないが、パパなら大丈夫だろう。こちらもすべきことをするまでだ。

「さて、わざわざ待っててくれるなんて律儀なんだ。そんなに私と遊びたかったの?」
「ええ、それは楽しみでしたよ」

 西部劇のガンマンのように、互いの一挙手一投足を読んで夜風が通り抜けていく。瓦礫が崩れた瞬間、その緊張の糸が千切れる音がした。

『ウガアアアアア‼』
「やってください、輝夜さん。ワタシは隙を見て攻撃をしましょう。――【艶墨グラフィック:γ】」
「……【血鬼の苗床ラグ・ヴァンパイア】」

 終人である母親が動くと同時にどこからか輝夜の声が響き、待機していた感染者が一斉に暴れ始める。十八はスウッと夜の闇にフェイドアウトした。
 イカの異人の攻略方法は、正直言ってわからない。だが、それを教えてくれる人がいる。

「どうやって勝ったのか、見せて――

 輝夜のお母さんが十八を殴った時に落ちた血液。それを親指で拭う。
 今は彼女が感染者を食い止めてくれている。この隙に過去を見て、状況を打破する!

「【死亡推理カルペ・ディエム】。過去の記憶よ――〝回帰しろReturn〟」

 そして私は、その血を舌に乗せた。
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