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第二部 10章
マースールー迷宮たる所以【8】
しおりを挟む「何をやってたのか説明してもらおうか? あんな危険な戦い方しやがって」
ガルドさんが低い声で聞いてきた。
なぜか怒っていらっしゃる。
「核が欲しかったの」
「は?」
私の答えが予想外だったのか、ガルドさんは意味がわからんと眉を寄せた。
「とりあえずドロップ品を回収しましょう。奥の部屋にて話を聞いた方がいいかと」
「あぁ、そうだな。笑って誤魔化すんじゃねぇぞ?」
モルトさんに促されて、ドロップ品のレンガみたいな鉱石を回収して私達は続き部屋へ。
続き部屋の砂の上にラグを出したけど、ガルドさんは座ることなく、仁王立ちでラグに座った私の前に立った。
「で?」
「うーん。まず、スライムの核のことから話した方がいいかな?」
スライムの核やドロップ品から便利道具を作ったことを解説し、ゴーレムもスライムと同様に再生するなら核で実験したかったことを説明すると、「前もって言え!」と怒られた。
「そもそもどうやってスライム核を手に入れたんですか? 核は役に立たないですよね?」
「こう、スライムに手を突っ込んで、引っこ抜いたの。そしたら魔力がそのままで使える核だったの」
「なっ!」
モルトさんに聞かれてジェスチャーをしながら教えてあげると、驚いたガルドさんがズンズンと寄って来て、私にゴツン! とゲンコツを落とした。
「うぎゃっ!」
「危ねぇだろうが! スライムは何でも溶かすんだぞ! ケガしたらどうすんだ!」
「うぅ……ポイズンスライムだったもん」
「んなっ! 余計危ねぇだろうが!」
「……ごめんなさい」
私が頭をさすりながら謝ると、ジュードさんが「まぁ、まぁ。セナっち結界張れるからねー」とガルドさんを諌めてくれた。
あのときは結界は張ってなかったんだけど、それを言うとまた怒られる気がして言えず……私は目を逸らした。
ガルドさんは私の様子を見て悟ったのか盛大にため息を吐き、頭を撫でてくれた。
たんこぶが痛くて「痛い……」と呟くと、ガルドさんは「あ、悪ぃ」と手を引っ込めた。
「ガルドさんもオレっち達もセナっちが心配なんだよー。あんまり危険なことはしちゃダメだよー?」
「ごめんなさい」
「うんうん。セナっちも反省してるみたいだし、これでこの話は終わりにしよー!」
ジュードさんが明るく言うと、緊張感が漂っていた空気がいつも通りの雰囲気に変わった。
たんこぶができた私を心配して、従魔達がスリスリと体を寄せて慰めてくれる。
(はわぁ~。モフモフ天国)
ジルもグレンもガルドさんが私の身を案じて怒っていたのがわかったみたいで、ガルドさんに対して怒っていなくて一安心。
私のたんこぶはウェヌスがササッと治してくれた。
この先ボス部屋までセーフティーエリアがないことを考えて、ちょっと早いけど休むことに。
ガルドさんは怒っているのか、私を怒ったことを気にしているのか……私達の間にはちょっと気まずい雰囲気が流れていた。
――――――――――――――――――――
翌朝もガルドさんはちょっとよそよそしくて私はかなりショックを受けた。呆れられた……もしくは嫌われちゃったのかもしれない。
ダンジョンを進んでいる間も一日中距離を感じ、耐えきれなくなった私は夜、ガルドさんが一人でいるところに突撃して服を引っ張った。
「ガルドさん……ごめんなさい」
「あぁ……いや……」
困ったように眉を下げるガルドさんに、やっぱり嫌われたんだと理解した。
「……ごめんなさい。もうダンジョン出よう」
「ん? ちょっと待て。何でそうなる?」
「付き合わせてごめんなさい。クランも解消するから」
「待て待て待て! 変な誤解してるだろ」
「してないと思う……」
「いんや、絶対してる。何でそうなった? って、俺のせいか……」
ガルドさんは私に怒鳴りながら手を上げちゃったことを気にして、怖がられるかと避けていたことを教えてくれた。
そりゃちょっと痛かったけど、ちゃんと手加減してくれてたのに。
「嫌われたワケじゃなかったんだ……」
「むしろ俺がそう思ってたんだが…………悪かったな。殴っちまって」
「ううん。ガルドさん優しいの知ってるから……」
ガルドさんは私の言葉を聞いて覚悟を決めたように真剣な表情になった。
「俺達はお前さん……セナが心配だ。この先危ないことしたら、怒ると思う。それでも俺達と一緒でいいのか?」
「え? 逆に何でダメなの?」
ダメなことしたら怒るって普通じゃないの? 自分のことを心配して怒ってくれる人って貴重じゃない?
そう伝えると、ガルドさんに「本当に五歳かよ」とため息を付きながら苦笑いされた。
すみません。中身は五歳児じゃないんです。この世界の五歳児の普通がわかりません……
「お前さんは魔力も多いし、制御も上手い。普通では考えられないくらいの規格外の強さだ。でも俺達からすればまだまだ子供なんだよ。あんまり一人で突っ走るな。俺達に甘えとけ」
そう言ってガルドさんはガシガシと私の頭を撫でた。
正直論点がズレてる気がするけど、ガルドさんが優しく微笑んでくれたことが嬉しい。勢いよく抱きつくと、抱っこされた。
そのままみんなの元へ戻ると、ジュードさんは「よかったー。仲直りしたんだねー。ヒヤヒヤしてたんだからー」と笑った。
みんなにも気を遣わせちゃってたみたい。
「結局、その核は何かに使えそうなんですか?」
「まだ調べてないからわかんない。鑑定では【ゴーレムの核】としか出てこないんだよね」
モルトさんに聞かれて答えると、みんなは何に使えるのか予想し始めた。
「この先出てくるゴーレムがいたら言うこと聞かせられるとかー?」
「自分を守るゴーレムが作れるかもしれません」
「スライムと違って役に立たないかもしれないだろ?」
「……ゴーレムに乗れる?」
コルトさんのは願望っぽいな。
ゴーレムの核は煮ても何もならなさそうだよね。煮込んだ水が意思を持つとか怖いし。
とりあえず、核を手の平の上に乗せて魔力を込めてみると、私の周りに砂が集まり始めた。
徐々に固まり、砂が岩のように変化していく。
「おぉ? おぉー!」
「どうなってんだ!?」
「えぇ!? セナっち大丈夫なの!?」
私の身体がゴーレムのように岩に覆われて、ガルドさんとジュードさんが焦っている。
魔力を込めると自分がゴーレムみたいになれるらしい。
「大丈夫だよ~」と返事をした私の声は地響きのような声に変わっていて、自分で驚いた。
重くて動きにくいから普段は使えない。もし、慣れたら部分的に覆うことができるようになるかもしれないけど。
魔力を霧散させると元通りになり、ガルドさん達は揃って息を吐いていた。
次に土魔法で私と同じサイズくらいの土人形を作り、核を埋め込んでみる。
核に反応したのか、作った人形の目が緑色の光を灯した。
「わお! 動ける?」
「ハイ」
「おぉー! 話せるんだ!」
「スコシダケ。マスター、ゴメイレイヲ」
まさかのマジでゴーレム作れちゃったパターンだ。
ガルドさんは「マジかよ……」と頭を抱え、ジュードさんは「すごーい!」と目を輝かせた。
『主様、ガイア様からの伝言で「それ面白そうだから貸して欲しい」って』
「わかった! ゴーレムさん、ゴーレムさん。お願いしたいことができたら頼むから、ひとまず核に戻ってもらえる?」
「カシコマリマシタ」
ゴーレムは返事をすると、どうやったのか一瞬にして、固めたボディが砂に戻り、こんもりと盛り上がった砂山の上に核が落ちた。
「こんなこともできるんだ……ゴーレムってすごいんだね」
〈ククク。セナ、通常は会話すらできないぞ。おそらくセナの魔力で特殊になったんだろ〉
「そうなの?」
グレンが笑いながら教えてくれた横で、ジルは「さすがセナ様です! ゴーレムを使役できるなんて!」と信者発言していた。
「全く、セナには驚かされることばっかりだな……その核どうするんだ?」
「使えることはわかったけど、とりあえず保留かな」
「まぁ、それがいいだろうな。バレたらえらいことになりそうだ……」
ゴーレムのことを聞いてみると、遺跡やダンジョンでは現われることもあるけど、思い通りに動かしたりはできないらしい。基本的には排除しようとしてくるから戦闘になるんだそう。
それを使役なんかできるワケもなく、他の人にバレたら何がなんでも手に入れようとする輩が出てくるだろうと言われてしまった。
家族であるみんなが危険な目に遭うのは嫌だ。
「じゃあ内緒だね!」
「スライムの核のこともな」
「はーい!」
元気よく返事をした私の頭をガルドさんが呆れたように笑いながらグシャグシャと撫でた。
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