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第三部 12章
威力は抜群
しおりを挟む「すごいねぇ……ドラゴンって珍しいんだよね? みんなちょっとずつ違うんだねぇ~」
「そうですね。以前グレン様のお姿を拝見しましたが、もっと堂々たる風格でした」
ジルさん……それはグレンの態度によるものが大きい気がするよ……
ドラゴンのグレンより少し小さい。とは言っても、ほとんどは十メートルはありそうな大きさ。ツヤツヤの鱗の子もいれば、マット感のある子もいる。目付きの鋭い子にまん丸の子。色も総じて〝赤〟ではあるけど、赤・紅・オレンジ系の赤・ピンク系の赤……とさまざま。
ドラゴンも個性があるんだなぁ~なんて思っていると、後ろからドナルドさんに呼ばれた。
「お嬢! 何とかできないのか!? 攻撃なんぞされたら……」
「変なことしなきゃ攻撃してこないと思うよ?」
「嬢ちゃーん! 街がやべぇぞー! パニックだー!」
「それは大変!」
街の方から飛んできたアーノルドさんに叫ぶように言われ、目撃者が多すぎることに思い至った。
急いで話しているグレンに近付き、袖を引っ張る。
〈ん?〉
「ねぇ、グレン。みんなビビってるよ。街の人が怖がっちゃうから、お話するなら王都から離れて?」
〈む。そうか。人型なら問題はないか?〉
「多分大丈夫だと思うけど……」
〈聞いたな? 人型になれ〉
グレンが指示すると、ドラゴン達は『グルァァァ』と鳴いてキラキラと光を纏う。
光が収まると、老人から子供の姿と幅広い年齢層の人に変わっていた。
羽を出してパタパタと飛んでいるんだけど……口から覗く牙がやたら大きい人やしっぽが隠せていない人、腕や顔に鱗模様が入っている人など、グレンみたいに完璧に変態はできないみたい。
〈ムム。下手くそだな……〉
「とりあえず、ドラゴンの姿じゃなくなったからいいんじゃないかな? 飛んでると疲れちゃうだろうから、降りてもらったら?」
〈ふむ。ほれ〉
グレンが手招きすると、全員がテラスに降り立った。
グレンは満足そうに頷き、いきなり私を持ち上げた。
「わっ!」
〈紹介してやろう! 我のセナだ! 我のことはグレン、セナのことはセナ様と呼ぶのだぞ!〉
〈ヒトゾク……〉
〈セナ様だ。同じことを言わせるな〉
「ちょっと、グレン! 威圧しちゃダメ! 街の人まで怖がっちゃったらどうするの!」
〈ムッ。すまん……〉
グレンの肩をバシバシ叩いて、威圧を止めさせる。
クラオルはクラオルで『主様はみんなの主様なのよ!』とベシベシ叩いて抗議。
その様子をドラゴン達は驚きの表情で見ていた。
「グレンが呼んだの?」
〈いや。我を探していたらしい〉
「探してた?」
〈うむ。セナと出会ったあの日からずっと連絡を取ってなかった。セナを探すときに使えばよかったな……忘れていた〉
「忘れてたって……実際そうだったとしてもそういうのは黙っておいてあげるのが優しさだよ?」
〈アノ……セナサマ?〉
「ん? あ、グレンが失礼なこと言ってごめんね。それにグレンに言われたからってサマ付けなくても大丈夫だよ?」
〈ならん。セナは我と契約している〉
〈!〉
恐る恐る話しかけてきたおじさん姿のドラゴンはグレンが〝契約〟と言った途端、ビクリと反応して、膝を着いた。
おじさんドラゴンに倣って、他のドラゴンまで跪いて頭を下げる。
〈タイヘン、シツレイシタ。セナサマ、ヨロシクネガウ〉
「えぇ!? 何でいきなり?? 普通でいいよ! 普通で!」
〈こやつらは我の配下だ。命令すれば街くらい容易く破壊できるぞ〉
「いやいや! 危ないでしょ!」
〈セナサマ、ヤサシイ、ガンバル〉
「いやいや! 頑張らなくていいから! 今のところそんな予定はありません! そんなことより、グレンに何か用があったんじゃないの?」
そう聞いてみると、ずっと連絡が来なかったため、「自分達を放置して何やってるの!?」とグレンの様子を見に来たんだそう。
ドラゴン達はグレンを慕っているみたいで、グレンと契約した私にまで尊敬の眼差しを送ってくる。
どうしようこれ……成り行きでグレンと契約しただけなんだけど……
「セナちゃーん! ちょっと邪魔よ!」
後ろからニキーダの声が聞こえ、振り返ると、ニキーダが腰を抜かしている王族達を押しのけてこちらに走ってきた。
「セナちゃん大丈夫!?」
「大丈夫だよ」
「あぁ、よかった。心配したわ。街にいたらドラゴンの声が響き渡るし、そのすぐ後にドラゴンがいっぱい飛んで来たのが見えたんだもの」
ニキーダはグレンから私を奪い、ギュッと抱きしめた。
「ごめんね。グレンのお仲間で様子を見に来たんだって」
「あら、そうだったの。人騒がせなドラゴンね。セナちゃんに迷惑かけちゃダメじゃないの」
ニキーダに言われ、ドラゴン達は申し訳なさそうに目を伏せる。
「えっと……とりあえず、街に来るときは人型になってもらえる? 街の人達がビックリしちゃうから。あと、暴れたりしないでね?」
〈カシコマリマシタ〉
「グレンもちゃんと連絡してあげて?」
〈そうだな〉
これでひとまずは大丈夫かな? と、ニキーダの肩越しに振り返ると、放心状態のアーロンさんと目が合った。
「……オレの国を襲う気はないんだな?」
〈セナが嫌がるからな〉
「そ、そうか……城に滞在するのか?」
〈ん? 我に会いに来ただけだろ?〉
〈ハイ。カエリマス。セナサマ、グレンサマ、イツデモ、ヨンデクダサイ〉
「あ、ちょっと待って!」
今にも飛び立とうとするドラゴン達を呼び止める。
ニキーダに降ろしてもらい、ドラゴン達に二つずつパンを渡す。
〈コレハ……?〉
「パンだよ。グレンがお世話になってたみたいだから。少ないけど食べて」
〈よかったな。セナの料理は全て美味しいぞ。味わって食え〉
〈アリガトウゴザイマス。デハマタ〉
ドラゴン達は私に頭を下げると、それぞれ両手に一つずつパンを持って、人型のまま飛び立った。
ドラゴン達が離れると、後ろから何人ものため息が聞こえた。
「ドラゴンの威圧は凄まじいな……まさか人型でもあんなに圧を感じるとは……」
「お騒がせしちゃってごめんね?」
「いや……緊張はしたが、生であの数のドラゴンを見られるとは! 相変わらずセナは面白いな!」
アーロンさんはいつもの調子を取り戻し、笑って許してくれた。
アーロンさんが私を赦したことで他の王族達からは文句を言われずに済み、私は一切お咎めなし。
王族達の会合はまた日を改めることになった。
◇ ◆ ◇
翌日、私達がタルゴー商会から帰ると、ジィジ達の会合は急展開を迎えていた。
ジィジが言うには、今まで渋られていた案件も了承され、ジィジに有利な契約書を交わせたそう。
私やスタルティに来る手紙も今までとは内容が変わり、〝我が国を訪れた際には歓迎致します。何かあれば遠慮なく仰って下さい。全面的に協力致します〟なんて直接交渉を求めるものではなくなった。
街を歩くときにストーキングもされなくなったし、廊下とかで遭遇したときも絡まれなくなった。
何で急に態度が変わったのかわかんないけど、ラッキー! 平和が一番!
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