364 / 533
13章
懐かしき旅路
しおりを挟む商会で調味料を中心に大量購入した私達は、その日のうちに出発。
出る直前になってブラン団長達に挨拶してなかったことを思い出し、ベーネさんに伝言をお願いしておいた。
転移の練習にもなるし、転移しようと思ったら、グレンからブーイングが入った。
外で魔物を狩りながら向かいたいらしい。
そのため、私はグリネロ、ジルはクーヴェの背に乗り、グレンは自分の羽で低空飛行、ネラース達はジャレながらはしゃいでいる。
「懐かしいねぇ」
『そうねぇ』
「今日のご飯どうしようかな~。何か希望ある?」
〈肉だな!〉
『!』
「うわ!」
私とクラオルが話していると、グレンが私のすぐ後ろに上からドン! と腰を下ろした。
「んもう! ビックリしたじゃん! グリネロ、ごめんね?」
『大丈夫だ』
〈魔物がいない〉
「前回も王都出たときはしばらくいなかったでしょ?」
〈違う。前回は魔力が漏れてて逃げられていた。今日は魔力も抑えているのにいない!〉
「あ、そうだっけ?」
〈グリネロ、飛ばせ〉
『承知』
「え? ええええええええ!!!」
グレンが言うと、グリネロが猛ダッシュ。
「うそでしょぉぉぉ!?」
〈セナ、舌噛むぞ〉
グレンが後ろから支えてくれてるから吹き飛ばなくてすんでるけど、これ私だけだったら間違いなく手綱掴んでブーラブラだよ!
風圧でほっぺはブルブル。風が目に染みて涙がちょちょ切れていく。
ちょっとしてからクラオルとグレウスが声も上げず、必死に私の髪の毛を掴んで飛ばされないように耐えているのに気が付いた。
「っ! だめぇぇぇ! すとっぷぅぅぅぅ!!」
『!』
「うぶっ!」
私が叫ぶと、グリネロが土ぼこりをあげながらズザザーっと滑る。
速いスピードから一気に止まったため、私はグリネロの首に勢いよくぶつかって鼻を強か打った。
車は急に止まれない……車じゃないけど。
後ろからジルが「セナ様ご無事ですか!?」と追ってきた。
〈どうかしたのか?〉
「どうかしたじゃないよ! クラオルとグレウス飛んでっちゃったらどうするの! それに目撃されたら面倒でしょ! ちゃんと考えなきゃダメでしょ!?」
〈すまん……〉
『申し訳ない……』
私が怒ると、途端にしょんぼりするグレンとグリネロ。
ちょっと口調がキツかったかと後悔に襲われる。
「魔物狩りながら向かうんでしょ? また森に寄ってもいいし。ただでさえグリネロ速いから、魔物がいても通り過ぎちゃうよ」
〈それもそうか〉
納得してくれたところで、再び出発。
グレンが指示を出す前くらいのスピードになった。それでも競馬場の馬より速い気がするんだけど……競馬を目の前で見たことはないから自信はない。イメージよ、イメージ!
まだちょっと肩を落としたままのグレンに思いきり寄りかかり、下から見上げると、グレンはフッと笑顔を零した。
「ねぇ、グレン。夜ご飯、お肉はわかったけど、何系のお肉がいいの?」
〈ふむ。ここのところ宿の料理だったからな……シラコメが食べたい〉
「じゃあ、定食系か丼系だね」
私がすぐに思いつくものはほとんど食べている。私もいつもとちょっと違うものが食べたい。
こういうときこそ、レシピアプリだよね!
レシピで検索をかけていると、クラオルに呼ばれた。
『主様、そろそろ暗くなってくるわよ』
「じゃあ寝るところ決めないとだね」
マップをチェックすると、以前泊まった巨石群の近くだった。
ニヴェスに魔馬車くらいのスピードでって頼んでたけど、二日の行程を半日で済ませるとは……グリネロさん、どんだけ飛ばしたのよ……
グリネロに巨石群へ向かうようにお願いして、私は再びレシピをチェック。
いい料理を発見したところで、ちょうど到着した。
「ご飯作るから、みんなは遊んでて」
〈セナ、リバーシ!〉
《私は針刺すやつがいい!》
「はいはい。ちょっと待ってね」
ボールやダーツ、吹き矢にリバーシを渡すと、みんなは早速遊び始めた。
『主様、何作るの?』
「ふふふ。今日はタコライスだよ!」
『たこ? たこってたこ焼きに入ってるやつよね? 前に食べた煮物のこと?』
「あぁ~、あれもたこなんだけど、今日の料理にはそのたこは入れないんだよ」
『ふーん?』
「何か手伝えることはありますか?」
手伝いを申し出てくれたジルにレタスの千切りをお願いして、私はタコミート作り。
いつも沖縄老舗メーカーのレトルトを買っていたから、私も作るのは初めて。
レシピにはカレー粉入りバージョンと、なしバージョンがあった。
ただ、シュグタイルハン国でカレーが出まくったため、今回はなしバージョン。ケチャップとウスターソースがあってよかった!
作る材料も思っていたより少ないし、工程も簡単。
グレンがいっぱい食べるし、ネラース達や、グリネロとクーヴェもいるため、タコミートは寸胴鍋二つ使う。余る分にはいい! 足りないのが困る!
フードプロセッサーで肉ひき肉を作るのは、クラオルに頼んじゃった。
ひき肉を混ぜた調味料で味付けすると、辺りにはいい香りが広がっていく。
「よし! あとは盛り付けだけだよ!」
私が声をかけた途端、素早くテーブルに寄ってくるみんなに笑ってしまう。
みんなで席に着いていただきます。
「ん~! 超久しぶりのタコライスうま!」
〈セナ、おかわり!〉
「え!? 早くない? 私まだ二口しか食べてない……」
〈ダメなのか?〉
「いや、大丈夫だよ。お皿ちょうだい?」
丼におかわりをよそって渡すと、山盛りのタコライスを見て、グレンは満面の笑みを浮かべた。
ちょっと甘めなタコライスはみんな気に入ったみたいで、クラオルやプルトンまでおかわり。
デザートにスイートポテトパイを食べたら、それぞれマッタリ。
「懐かしいねぇ。ガルドさん達探すのに出発したてだったんだよね」
「セナ様……後悔しておりますか?」
ジルがあんまりにも不安そうに聞いてくるから、それだけで何を伝えたいのかわかった。
「ふふふ。もう、ジルってば何言ってるの? そんなワケないでしょ? いつも助けてもらってるのに」
「ならよかったです……」
「それにね、多分だけど、ジルがいなかったら旅は上手くいってなかったと思うよ? 私はちっちゃいし、グレンは他の人に偉そうだからね。ジルのおかげでバランスが取れてるんだよ」
「そ、そうなのですか……?」
「そうなの! ジルは大変だっただろうけど……生まれてきてくれて、生きててくれて、一緒にいてくれてありがとう。大好きだよ」
ジルに自信を持って欲しくて、抱きついてお礼を伝える。
ジルは震えながら、私をギューッと抱きしめた。
小さく嗚咽を漏らすジルの背中をポンポンとしながら落ち着くのを待っていると、グレンから視線を感じた。
チラチラと窺ってくる姿は、何か期待しているように見える。
「ふふふ。もちろんグレンも大好きだよ。いつもありがとうね」
〈うむ!〉
グレンは満足そうに頷き、ジルの頭をクシャクシャと撫でた。
前よりも兄弟感が増してる気がして微笑ましい。
グレンって実は面倒見いいよね? あのドラゴン達にも慕われてたし。
ジルが落ち着いたところで、みんなで雑魚寝。
これも久しぶりだ。
幸せを感じながら瞳を閉じた。
1,028
あなたにおすすめの小説
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます
六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。
彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。
優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。
それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。
その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。
しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。
※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。
詳細は近況ボードをご覧ください。
転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!
饕餮
ファンタジー
書籍化決定!
2024/08/中旬ごろの出荷となります!
Web版と書籍版では一部の設定を追加しました!
今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。
救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。
一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。
そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。
だが。
「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」
森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。
ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。
★主人公は口が悪いです。
★不定期更新です。
★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。
(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅
あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり?
異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました!
完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜
シュガーコクーン
ファンタジー
女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。
その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!
「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。
素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯
旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」
現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。