転生幼女はお詫びチートで異世界ごーいんぐまいうぇい

高木コン

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13章

洗脳された村

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 保管庫の改造とレシピ登録、及び販売の契約を持ちかけるためにピリクの街に飛んで来た。
 登録はもちろん、大豆や枝豆……ではなく、もやし。

 ジルはお留守番で、グレンは暇つぶしに村人達と狩りに行っている。

『主様、大丈夫?』
「うん。でもちょっと疲れてるから、これが終わったらゆっくりしようね。ふふふ。ちゃんと休むからそんな顔しないで」

 クラオルに疑いの目を向けられ、どんだけ信用がないのかと苦笑いする。




 一昨日、もやしの作り方を教えようと村長を呼び出した。

「もやしを作って売ればいいと思うの」
「もやし……で、ございますか?」
「そう。これなんだけど」

 村長にもやしを見せると、イマイチわかっていないみたいで、不思議そうにもやしを見つめている。

「んとね、ソイ豆を水に浸けておくと、こっちみたいに芽が出るのね」
「はい。この状態は存じております。エダマメが生では食べられないとのことでしたので、村の住人は食べないようにしておりました。食べられるのですか?」
「うん。大丈夫だよ。で、この芽が出たのを暗いところで成長させると、こうなるのね。これはシャキシャキして美味しいんだよ」
「セナ様は何でも知っておられるのですね……」

 村長に尊敬の眼差しを向けられ、私は苦笑い。
 何でも知ってるわけじゃないし、私が発見したわけじゃない。
 日本での知識があるだけで、こうも持ち上げられるとは……

「それで、このもやしを料理に使ったやつがコレ。順番にもやし炒め、ネギ玉もやし、もやしの卵スープ。食べてみて」

 村長はワクワクした様子で「では……」ともやし炒めを手に取った。
 一口食べて、「んん~!」と目を見開く村長に笑ってしまう。

「こ、これはどれも美味しいです!」
「よかった。村でもやし作って売れば、もっと生活が楽になると思うの。何より、私が助かる」
「…………村のため……セナ様はそんなに村のことを思って下さっているのですね……」
「いやいや! 聞いてた?」
「もちろんでございます」

 作る手間が省けるから作って欲しかっただけなんだけど……
 私がもやしで実験したとき、クラオルにガイにぃから連絡があって、『村から離れると、井戸水の効果は薄くなるから気をつけてね』って言われたんだよね。
 それなら、村で量産してもらえれば、私も手に入るし、村も暮らしが楽になるんじゃないかと。
 それをいいように解釈され、どうしたもんか……

「今月はすでに行商人が来てしまったので、次は来月になります」
「あぁー、それは大丈夫。契約があるからタルゴーさんに会いに行く」
「なるほど。ありがとうございます。では、早速村人を集めましょう! 向き不向きがあるかと思いますので、セナ様に見極めていただければと思います」

 テンションの上がった村長は、すぐに村人を集めた。
 狩りに行っている人もいるため、集まったのは主に女性と子供。
 村長は「セナ様がこの村のためにまたも考案してくれた」なんていいところだけを切り取って話すから、村人達からも称賛を浴びることになってしまった。

 もやしの作り方の説明後、実際にやってもらおうとそれぞれに大豆を渡す。
 その日の午後、狩りから戻って来た住人に「ずるい」と言われ、結局、村の大人全員に実験してもらうことになった。

 翌日確認したところ、ほとんどの大豆は芽を出していて、誰でも作れることが判明。
 私が褒めると村人達は大喜び。さらにやる気を上げてくれたみたい。



 ノック音が聞こえ、私は回想していた意識を戻す。
 入ってきたのはタルゴーさんやダーリさんとは違う人物だった。

「お待たせして申し訳ありません。わたくしは、留守を任されております。大変申し上げにくいのですが……商会長はまだ戻って来てないのです」
「そうなの?」
「はい。こちらに向かってはおりますが、まだシュグタイルハン国にいるようです」
「あぁ……そっか。馬車移動だもんね……」

 おそらく、その馬車も護衛で雇った冒険者の徒歩スピード。となると……おそらくこの街に戻ってくるのは一ヶ月はかかりそう。

「商会長より、セナ様に全面協力をと言付かっております」
「なら、お願いしてもいい? まず、これくらいの箱と光を通さない分厚い布、明かりの魔道具がいっぱい欲しいんだ。あと、新しい野菜の販売をお願いしたいの」
「新しい野菜……でございますか?」
「そう。キャロやタマネみたいに一般的に普及したいの」
「なるほど……しかし新しいものですと、使用方法がわからなければ周知されにくいかと……」

 とても言いづらそうに伝えてくる代理人の女性に、もやしともやし料理を見せる。

「そう思って簡単な料理作ってきたの。どうぞ」
「た、食べてもよろしいのですか?」
「うん」

 代理人はもやし炒めを一口食べ、「これは……素晴らしい!」とソファから立ち上がった。

「……失礼しました。シャキシャキとした食感、味付けは塩コショウでしょうか? シンプルなのに後を引く美味しさ…………お任せ下さい! わたくしが責任を持って流通させてみせます!」
「あ、ありがとうございます」

 だんだんと語気が強くなり、こぶしを握って力説する代理人。
 ちょっと引きつつお礼を伝えると、すぐに真剣な様子で「こちら全て食べてもよろしいですか?」と聞いてきた。

「大丈夫ですよ」
「ありがとうございます!」

 そんなに気に入ったのか、代理人は三つともペロリと平らげた。
 その後は商業ギルドのギルマスを呼んでレシピ登録。
 屋台や食堂でのもやし料理の提供も決まった。
 


 全ての話を終え、荷物を受け取って、ソイヤ村近くに転移。
 村の入り口で門番さんに話しかけられた。

「おう。おかえり」
「ただいま」
「村長がすげぇはしゃいでたぞ」
「マジか……」
「なんだ? 疲れてんのか? ゆっくり休めよ」
「ありがとう……」

 門番さんに村に入れてもらい、村長宅に戻る。
 ジルに私がいない間のことを聞いてみると、村長が「セナ様のためにもやしを作りなさい」と吹聴しまくっていたらしい。

「セナ様を敬う気持ちはわかりますが、どこから情報を得ているのか気になったので調べました」

 流石ジル! 頼りになる!
 ジルによると、全てタルゴー商会の行商人……と言うよりも、タルゴーさんのせいだったらしい。
 タルゴーさんから行商人に私を絶賛する内容が伝えられ、その行商人が村長に話したそう。
 この村を助けたと聞いたタルゴーさんは、この村をお気に入りに認定。素材をいい値段で買い取るように指示していたんだって。
 で、そのタルゴーさんの好意も全て私のおかげだと村人達は考えたらしい……

 完全に洗脳された村じゃんか……
 洗脳の解き方もわからないし…………もう、これは開き直る方がいいかもしれない。

「誤解を解きたいけど、説明したらわかってくれるかな?」
「概ね事実ではあるので、難しいかと思います」
「……せめて普通に接してもらいたい……とりあえず、保管庫改造しよう……」

 精神が疲れてはいるけど、考えたらさらに疲れちゃう。
 こういうときは無心になることが一番!
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