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14章
月夜に咲く花
しおりを挟む朝早くグレンに起こされた私達は朝ご飯も食べず、準備もそこそこにすぐに洞窟を出た。
外はまだ日が昇りきっていなくて薄暗い。そして眠い……
「今日早くない?」
〈怪鳥を狩るんだろう?〉
「なるほど……」
狩りたくてウズウズしてたのね……
道中、グレンがネラース達やグリネロに指示を出してくれ、私はそのグレンに寄りかかりながらウトウトと船を漕いでいた。
〈セナ、起きろ〉
「……んー?」
ゴシゴシと目をこすってたら、グリネロから降ろされた。
〈セナ、料理の準備だ〉
「……いいけど、みんなで食べるには狭くない? ここで朝ご飯食べるの? 狩るんじゃないの?」
〈狩るに決まっているだろう〉
「?」
〈匂いでおびき寄せる。作っている間に狩るからセナはここから動くな。プルトン〉
《はーい! 任せてー!》
呼ばれたプルトンが私とジルをまとめて黒い結界で囲う。匂いを漂わせるためか、天井部分はなかった。
なんで黒いのかと聞いたら、私の食欲がなくなったら困るからだそう。見えなくても音は聞こえるから意味ない気もするけど、優しさは受け取っておこう。
コンロを出してグレンに指定された味噌炒めを作り始めると、すぐにまばらだった気配が引き寄せられるようにこちらに向かってきた。
前にグレンがかなりの数を狩っていたから少ないかと思ってたのに、それとほぼ変わらないか少し多いくらいだ。
今回はグリネロもクーヴェも戦っているみたいで、嘶きの後蹄の音が聞こえている。
うちの子達はなんでみんな好戦的なんだろうね?
ネラース達の楽しそうな声とダチョウの鳴き声。プラスして、殴る蹴るの効果音に吹き飛ばされた個体が岩にぶつかる音が聞こえる中、調理を進める。
できあがっても戦闘音が止まなくて、ジルと紅茶を飲みながら待つことになった。
〈セナー! ご飯ー!〉
ようやく狩り終わったみんなはそれはそれはいい笑顔で戻ってきた。
少し移動して朝ご飯を食べる。そんなに食べなくても大丈夫なハズなのに戦っておなかが減ったのか、おかわりのオンパレード。
作り置きを作っておいてよかった……
出発した私達は再び道なき岩山を登っていく。
街道を逸れたせいで現れる魔物が格段に増えた。
出てくる魔物は主に猿。昨日遭遇したオラジー猿はもちろん、ここは猿山かと聞きたくなるくらいモントモンキーが多い。
モントモンキーはガルドさん達が苦労したと言っていただけあってすばしっこく、連携攻撃が上手い。
まぁ、そんな猿達もネラース達からすれば遊び相手にもならないみたいで、早々に片付けられていた。
休憩時に偵察に行っていたルフスから、草が生い茂っている場所があったと報告を受けた。
「岩ばっかりなのにそんなところあるんだね~。水が湧き出てるとかかな?」
《……岩……水……》
「ん? エルミスどうかしたの?」
《……いや、少しな……》
「気になるなら寄ってみる?」
《いいのか?》
「いいよ、いいよ~。急いでないし。ルフス、案内お願いね」
『任せるっち!』
今度はルフスの先導で進んでいく。
崩れている箇所がいくつもあって、否が応にも慎重にならざるを得ない。目視できるほど近付いても迂回しなければいけなかった。
この世界では標高が高くても植物が自生していたりする。麓では生えていた草木も登るにつれて姿を見せなくなり、ここは岩肌が剥き出し。
そんな中、草が生え、蔦の這う一角はとても目を惹いた。
「さながら砂漠のオアシスだね」
《特に変な感じはしないわね》
「うん。グリネロ、お疲れ様。ありがとう」
ポッカリと開いた洞窟にようやっと辿り着いたころには日が傾きかけていて、真っ暗になる前に着けてホッと一安心。
落ちないように神経をすり減らしていたグリネロとクーヴェはちょっとお疲れモードだ。
《中、見るでしょ?》
「うん。何かあったときにすぐ出られるようにグリネロ達は近くで待っててもらってもいい? 少しでも休んでて」
『了解した』
グリネロ達にひとまずのご飯としてパンを渡して、私達は奥へと足を踏み入れた。
高さはあるけど、幅が狭い通路を一列になって進んだ先は少し広い空間になっていた。
水が湧き出ているわけではないのに、空気が心なしかしっとりしていて、中央はこんもりと盛り上がっている。
空間全体に微量の魔力が溶けている感じはするけど、それだけ。
《心地よい魔素だ》
《そうね。こんな澄んだ魔素は久しぶりだわ》
そういえば自然発生する魔力を魔素って言うんだっけ。
魔素は人が多いところでは人の魔力に押されてあまり感じることができない。ここは本当に人が訪れていないらしい。
「大丈夫そうだから今日はここに泊まろうか?」
《賛成ー!》
入り口付近で待ってくれているグリネロ達を迎えに行き、夜ご飯の準備を始める。
ここにある魔素を侵食しないように魔力は極力使いたくない。ってことで、今夜は全部作り置き料理。
マジで作っておいて正解だったね!
「今日は久しぶりに豚丼にしようか?」
〈おぉ! いいな!〉
できたてをすぐにしまったから、温め直す必要もない。
出したラグに座ったみんなに盛り付けた豚丼を配っていく。それだけだと寂しいかなとキムチとお味噌汁をセットとして出した。
グリネロもクーヴェも馬なのにお肉食べるんだよね……
前に馬肉は嫌じゃないのか聞いたら、特になんとも思わないんだって。
〈うむ! やはりセナの豚丼が一番だな! おかわり!〉
「はいはい。いっぱいあるからちゃんと噛んで食べてね?」
「大丈夫だ!」
喉に詰まらせそうだと思ったから言ったんだけど……
ピンクオークじゃなくても豚丼そのものが好きみたいで、終始ご機嫌なままグレンは一人でほぼ鍋一つを空にした。
結界石を使うより安全だろうからと、プルトンが洞窟の入り口に結界を張ってくれた。
デザートも食べ、まったりとした私達がそろそろ寝ようかという時間……突如として中央の盛土が淡く発光し始めた。
《これは……》
「な、なに?」
「セナ様こちらへ」
ジルにくっ付いて困惑している間にも盛土は光り続け、さらに何かの植物が芽吹き始める。芽はスルスルと成長して蕾となり……その蕾が開花した瞬間――その花から白いモヤが漂い始めた。
それはあっという間に広がり、ジルごとグレンの腕に抱きしめられた私の視界も白く染められていく。
現実感がなくなっていく中、遠くでエルミスが何か言っているのはわかったけど、内容まではわからなかった。
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