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第一章 それぞれの思惑
ある国王の憂鬱①
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ホモロス国 城内
「はぁ~…悩ましい、本当に悩ましい。」
帝国から送られてくる大量の資料と、軍事資金調達による経費削減のための会議の数々、こっちの世界に来てもやらなければいけない事は何1つ変わらないとは…
「過労で死に、転生して新しい人生が始まるはずだったのに…」
どこで間違えたんだ、どこで…
「クエリ王。」
目の前に現れたのは、帝国の刻印が施された白のローブに身を包んだ黒髪で薄目の男。
「なんですか?」
王と呼ばれるのにも慣れてきた。が、そう呼ばれる度にストレスでお腹が痛くなる。
「つい先ほど面白い話を聞いたので、その話を王様の耳にもいれようと思った次第です。」
面白い話か…嫌な予感しかないのは現実世界にいた時からの悪い癖だな。
「そうですか、では、お聞きいたしましょう。」
「はい…つい10分前のことなんですが、西側の庭園近くの通路で爆発音が聞こえたそうなんです。」
「…え?」
「音に驚いた見回りの兵士が急いで駆けつけたんですが、兵士が見たのは壊された壁から外へと出ていく男女の姿…追いかけようとしたのですが、その直前、壁が何事も無かったかのように元通りとなり、狐につままれた思いをしたそうなんですよ。」
「あの…何なんですかその噂…ストレスで頭がおかしくなりそうですよ…」
「噂…?全て本当の事ですよ。」
「本当だとしたら、そんな事出来るのって…いや、そもそもそれって新たな転生者がこの世界に現れたということですよね?」
「そうなりますね。」
こいつ、俺の気も知らずに、さっきからニヤニヤしながら話をしやがって…
「昔と違って、今の転生者達は全て、召喚司達に召喚されてくるようにシステムが出来上がっている…それなのに、そのシステムを抜けて異世界に来た…それだけなら別に構わない…問題はこの城に現れた事ですよ!」
「はい、よく存じています。」
……
「その男女の顔を兵士は見たのか?」
「いえ、見てなかったみたいですよ。」
にやけた面で淡々と話続ける男と相手をすることに、そろそろ限界を感じる。
「そいつが、万が一帝国に対して問題行動を取った場合、その処罰はそいつだけの物ではなく、召喚された国の最高権力者…つまり、私も処罰の対象となるんですよ。」
「それがどうしました?」
ああ、もう駄目だ…
「お前!!さっきからそんな面で話をしやがって、それも虫酸が走るような言葉使いまでして…例え、お前が帝国からの臨時役員であっても、そこまでこけにされたら我慢の限界だ…それになお前は知らないが、俺はお前の先輩だ。だから、俺が今ここでお前を殺しても、規約には反しないから、いつでもお前を殺せる事を忘れるなよ。そうだな、お前に全ての罪を着せても面白いな。」
奴の胸ぐらを掴んでいた。
「アハハハハハハハハハ…」
「何が可笑しい。」
「いや、クエリ王…確かあなた様は一度も私の能力をご覧になったことがないと思いますね。」
「そうだが。」
それが今ごろどうしたというんだ?
「フフフ。」
突如、彼は不気味な笑みを浮かべた。
薄目だった彼の目は瞼が開ききっていたが、目に光は無かった…
「僕ですね、目が見えないんですよ。」
見えないはずの眼が、こちらの顔を凝視している。
「ただ…その代わりにですね。人の眼を借りることが出来るんですよ。」
「眼を借りる?」
「ええ、まあ、もっと分かりやすく言うと人が見たものの記憶を共有することが出来るんですよ。」
「共有…だか、それが何だというんだ?」
「まだ、分からないんですか…この能力は指定した場所にいる人全員を対象と出来るんですよ。」
「まさか…」
「ええ、私はこの城に来た時から…いや、この国に来てからです…私はこの国の全ての人間の眼の記憶を共有しているんです。」
不気味に笑う男の顔はさらに歪んでいった。
まるで、悪魔が笑っているかのような顔である。
「つまり、私は犯人の視点、そのパートナーの視点、両方の視点から物事を観察しているんですよ。」
「あなた…そんな事をやっていて脳が擦りきれたりはしないんですか?」
「ハハハ、この能力を得たときにこの世界に来たときに、あの方からは色々と教えて貰いましたからね。」
「そうですか…」
いつの間にか、胸ぐらを掴んでいたはずの手を離していた。
「それに、それでは帝国三騎士の1人にはなれませんしね。」
帝国三騎士の1人、セルモニー…何を考えているのかは分からないが、帝に忠実な事だけは分かる。
「話を戻しましょう…奴等が何処に向かっているのかは分かっているのですか?」
「ええ、奴等は…」
==========================
「もう、散々な目に会いましたよ…」
身体中に付着したヌメリを必死に洗い流して、浴場から出てきた彼女は、元々着ていた服へと着替えていた。
「まあでも、ゴブリンを一斉出来たし、良い活躍だったと思うよ。」
「一斉っていうか、あれは単純に、あの神父が私にも女体化の魔法をかけてくれって言って、矛先が私から神父に渡っただけですよね。」
「まあ、良いじゃないか?無事に逃げられたんだし…」
「一生心の傷は消えませんよ…」
今にも消え入りそうな声で呟いている。
だがその足元では、この辺りの事について記された地図が広げられていた。
「冒険する気は満々なんだな。」
「そりゃあそうですよ、こんな事になっているのもお姉ちゃんのせいなんですし、今すぐにでも一言、二言言ってやりたい気分ですしね。」
「それで、これから何処に向かおうと?」
「魔王城です。」
「はぁ~…悩ましい、本当に悩ましい。」
帝国から送られてくる大量の資料と、軍事資金調達による経費削減のための会議の数々、こっちの世界に来てもやらなければいけない事は何1つ変わらないとは…
「過労で死に、転生して新しい人生が始まるはずだったのに…」
どこで間違えたんだ、どこで…
「クエリ王。」
目の前に現れたのは、帝国の刻印が施された白のローブに身を包んだ黒髪で薄目の男。
「なんですか?」
王と呼ばれるのにも慣れてきた。が、そう呼ばれる度にストレスでお腹が痛くなる。
「つい先ほど面白い話を聞いたので、その話を王様の耳にもいれようと思った次第です。」
面白い話か…嫌な予感しかないのは現実世界にいた時からの悪い癖だな。
「そうですか、では、お聞きいたしましょう。」
「はい…つい10分前のことなんですが、西側の庭園近くの通路で爆発音が聞こえたそうなんです。」
「…え?」
「音に驚いた見回りの兵士が急いで駆けつけたんですが、兵士が見たのは壊された壁から外へと出ていく男女の姿…追いかけようとしたのですが、その直前、壁が何事も無かったかのように元通りとなり、狐につままれた思いをしたそうなんですよ。」
「あの…何なんですかその噂…ストレスで頭がおかしくなりそうですよ…」
「噂…?全て本当の事ですよ。」
「本当だとしたら、そんな事出来るのって…いや、そもそもそれって新たな転生者がこの世界に現れたということですよね?」
「そうなりますね。」
こいつ、俺の気も知らずに、さっきからニヤニヤしながら話をしやがって…
「昔と違って、今の転生者達は全て、召喚司達に召喚されてくるようにシステムが出来上がっている…それなのに、そのシステムを抜けて異世界に来た…それだけなら別に構わない…問題はこの城に現れた事ですよ!」
「はい、よく存じています。」
……
「その男女の顔を兵士は見たのか?」
「いえ、見てなかったみたいですよ。」
にやけた面で淡々と話続ける男と相手をすることに、そろそろ限界を感じる。
「そいつが、万が一帝国に対して問題行動を取った場合、その処罰はそいつだけの物ではなく、召喚された国の最高権力者…つまり、私も処罰の対象となるんですよ。」
「それがどうしました?」
ああ、もう駄目だ…
「お前!!さっきからそんな面で話をしやがって、それも虫酸が走るような言葉使いまでして…例え、お前が帝国からの臨時役員であっても、そこまでこけにされたら我慢の限界だ…それになお前は知らないが、俺はお前の先輩だ。だから、俺が今ここでお前を殺しても、規約には反しないから、いつでもお前を殺せる事を忘れるなよ。そうだな、お前に全ての罪を着せても面白いな。」
奴の胸ぐらを掴んでいた。
「アハハハハハハハハハ…」
「何が可笑しい。」
「いや、クエリ王…確かあなた様は一度も私の能力をご覧になったことがないと思いますね。」
「そうだが。」
それが今ごろどうしたというんだ?
「フフフ。」
突如、彼は不気味な笑みを浮かべた。
薄目だった彼の目は瞼が開ききっていたが、目に光は無かった…
「僕ですね、目が見えないんですよ。」
見えないはずの眼が、こちらの顔を凝視している。
「ただ…その代わりにですね。人の眼を借りることが出来るんですよ。」
「眼を借りる?」
「ええ、まあ、もっと分かりやすく言うと人が見たものの記憶を共有することが出来るんですよ。」
「共有…だか、それが何だというんだ?」
「まだ、分からないんですか…この能力は指定した場所にいる人全員を対象と出来るんですよ。」
「まさか…」
「ええ、私はこの城に来た時から…いや、この国に来てからです…私はこの国の全ての人間の眼の記憶を共有しているんです。」
不気味に笑う男の顔はさらに歪んでいった。
まるで、悪魔が笑っているかのような顔である。
「つまり、私は犯人の視点、そのパートナーの視点、両方の視点から物事を観察しているんですよ。」
「あなた…そんな事をやっていて脳が擦りきれたりはしないんですか?」
「ハハハ、この能力を得たときにこの世界に来たときに、あの方からは色々と教えて貰いましたからね。」
「そうですか…」
いつの間にか、胸ぐらを掴んでいたはずの手を離していた。
「それに、それでは帝国三騎士の1人にはなれませんしね。」
帝国三騎士の1人、セルモニー…何を考えているのかは分からないが、帝に忠実な事だけは分かる。
「話を戻しましょう…奴等が何処に向かっているのかは分かっているのですか?」
「ええ、奴等は…」
==========================
「もう、散々な目に会いましたよ…」
身体中に付着したヌメリを必死に洗い流して、浴場から出てきた彼女は、元々着ていた服へと着替えていた。
「まあでも、ゴブリンを一斉出来たし、良い活躍だったと思うよ。」
「一斉っていうか、あれは単純に、あの神父が私にも女体化の魔法をかけてくれって言って、矛先が私から神父に渡っただけですよね。」
「まあ、良いじゃないか?無事に逃げられたんだし…」
「一生心の傷は消えませんよ…」
今にも消え入りそうな声で呟いている。
だがその足元では、この辺りの事について記された地図が広げられていた。
「冒険する気は満々なんだな。」
「そりゃあそうですよ、こんな事になっているのもお姉ちゃんのせいなんですし、今すぐにでも一言、二言言ってやりたい気分ですしね。」
「それで、これから何処に向かおうと?」
「魔王城です。」
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