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 「スミレお嬢様?どちらですか~?」

 「お嬢様~っ?」

 屋敷内から複数の声が聞こえる。

 しまった、部屋にいないのがバレてしまった。以前の侍女は上手く賄賂で黙ってくれていたのに。ソレが父に気づかれ配置替えになってしまったのだ。

 「あら、ミミーごめんなさいね?庭を散歩していて」

 にこりと微笑んでみせるが通用しない。

 「旦那様には報告済みですので、書斎に向かって下さい」

 むむ~、書斎と言うことは父が待ち構えているって事よね?イヤだわ。

 「お早くお願いしますね?」

 ミミーは催促してくる。

 クッソーッ!!



 「お父様、何でしょうか?」

 ニッコリと微笑んで見せる。

 「嘘くさい顔は止めろ。まだ自警団に出入りしてるらしいな?」

 「騎士団に入団させなかった親父おやじが悪いんだろ?剣だって兄貴よりも私の方が強いのに」

 はぁ、と溜息をつきながらで話す。

 「その言葉使いも何とかならんのか」

 「いいだろ、外では猫被るんだから。で、何の用事?」

 「明日ガイナード王子殿下が来られて、明後日には我が伯爵家で歓迎パーティーが開かれるのは覚えているか?」

 「あ?ああ、来るんだったね。多分盗賊も付いてくるから忙しくなるな」

 「スミレッ!!明日はきちんとお出迎えして領地の案内をして差し上げなさい。国王からはくまなく領地を巡らせたいとのご要望だ。わかったな?」

 「そんなのデイジー(妹)に任せればいいだろう。私は忙しい」

 「馬鹿者っ!!長女であるお前が応対するのが順当だろう!!」

 「あ~ぁ、兄貴は騎士になったし、妹は自由だし。何でこんなに兄妹で差があるんだろうなぁ~。あ~ぁ。」

 「スミレッ!!」

 「はいはい、分かりましたよ~」

 まだまだ怒り続けそうな親父を部屋に残し、デイジーの部屋に向かった。

 「ふふっ。お姉様、絶対に現れると思ってましたわ」

 ふんわりと笑うデイジーはとても可愛い。クールと言われる姉の私とは大違いだ。

 「明日なんだが頼めるか?」

 「ガイナード様のお出迎えですね?分かりましたわ。お姉様は自警団に行かれるのですか?」

 「もちろんそのつもりだ。既に盗賊や不審者が増えているからな」

 「まあ、お姉様気をつけて下さいませね?」

 「ああ、わかってる。デイジーも可愛いから気をつけるんだぞ?」

 「うふふっ」

 親父からの理不尽な要求もデイジーが協力してくれるから助かる。可愛いし気が利く。もしかしたらデイジーが番になるかもしれない。どんなヤツかガイナード殿下は1度影から見ておいた方がいいかも知れない。




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