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スミレは来なければ良かったと、かなり深い溜息をついた。ガイナが当初断っていた理由を目の当たりにしていたのだ。
魔獣を倒したスミレとガイナは、目的地のデランジェに夕方到着した。すぐに宿を取り、魔獣の血で汚れた身体を綺麗にし、ドラゴンの涙に付いていた血も洗い流しておいた。血が付いたまま置いておくと石が変色してしまうのだ。
身綺麗になった2人は街のバル風の店に入った。いくつかの肉料理を頼み、2人の胃袋に消えて行った。身体を動かした後なので食欲旺盛なのだ。
「ガイナはデランジェ伯爵が嫌いなのか?」
魔獣退治後のガイナの態度が少し気になり聞いてみる。
「どちらかと言うと嫌いだな。それよりも更に嫌いなのが、娘だ」
「は?」
「だいぶ前に騎士団で通りかかった際、デランジェ伯爵に食事や酒を振舞われた事があるんだ。その時にやたらベタベタと身体を押し付けて来たり、夜騎士団のテントに忍んで来たりしてな。迷惑だった」
「ああ、王家とお近づきになりたい部類か」
「基本そう言う娘が多いんだ。まあ、スミレやデイジーは別だったがな」
「興味が無いヤツと、どうこうなりたいとは思わないからな」
「だから、スミレ。明日はドレスを着て一緒に行かないか?」
ガイナが少し縋る様な目を見せるが。
「却下だ」
着る訳が無い。
大体持って来てもいない。
スミレは晩餐に自警団の制服で行く事にした。領地を出る際に着ていた一応礼服の部類だ。ガイナは騎士団の制服を着ている。一見、騎士と下っ端の騎士に見えなくは無い。
「ようこそお越し下さいました。ガイナード殿下!!以前ご紹介させて頂いた娘・レイチェルを覚えてますでしょうか?本日はレイチェルもご一緒させて頂きます」
「ガイナード殿下っ!お会い出来て嬉しいですっ!こちらにどうぞっ!!」
ガイナに腕を絡めようとするが、ガイナは何とかかわしてしる。ガイナがスミレを見ると、
「あら、騎士団の方もいるのね?パパ、この方もご一緒なの?」
レイチェルは今更ながらにスミレの存在に気づいたようだ。
「ああ。ガイナード殿下と一緒に助けて頂いた方だ」
「へぇ。女性みたいなお顔でも、ガイナード殿下のお役に立つのね?」
レイチェルはふふんっ、と鼻で笑った。
何だかカチンと来る。
「スミレは女性だからな。でも私と同じくコモドンドラゴンを4匹倒す腕を持っている」
「そ、そう」
晩餐会の席は3つしか用意されていなかった。レイチェルはサッサと席に座る。スミレは溜息をつくと共に、
「私は構いませんので」
と、部屋を辞そうとする。しかしガイナが、
「デランジェ伯爵、そちらがどうしてもお礼にと呼んだにもかかわらず、スミレに対する待遇はどういう事だ?私達は帰らせてもらう」
クルリと踵を返したガイナにデランジェ伯爵は慌て、レイチェルはいつの間にかガイナの前に立って
「私はガイナード殿下の番になりたいのですっ。お慕いしております。番探しの旅も中止になったと聞いております。いるかいないか分からない番ではなく、どうか私をーーー」
そう言ってレイチェルはガイナに抱きついた。
その瞬間、スミレはモヤッとイライラ嫌な感じがした。
「デランジェ伯爵、番探しの旅は中止になった訳では無い」
ガイナはレイチェルを突き飛ばした。そして少し離れた所にいたスミレの腕を引き寄せる。
「番は見つかったのだが、拒否られているので口説き中だ。失礼する」
ガイナはスミレを抱き寄せ歩き出そうとする。
「まさか、その女が?ふさわしく無いわっ!ガイナード殿下の番がそんな小汚い騎士なんてっ!!」
「私、スミレ・デラウェアと申します。一応伯爵令嬢ですが、小汚くて申し訳ありませんね?言わせてもらえば、なりたくてガイナの番になった訳じゃないっ!!」
スミレの身分と迫力にレイチェルは黙り込んだ。その隙に2人はデランジェ伯爵家を後にした。
魔獣を倒したスミレとガイナは、目的地のデランジェに夕方到着した。すぐに宿を取り、魔獣の血で汚れた身体を綺麗にし、ドラゴンの涙に付いていた血も洗い流しておいた。血が付いたまま置いておくと石が変色してしまうのだ。
身綺麗になった2人は街のバル風の店に入った。いくつかの肉料理を頼み、2人の胃袋に消えて行った。身体を動かした後なので食欲旺盛なのだ。
「ガイナはデランジェ伯爵が嫌いなのか?」
魔獣退治後のガイナの態度が少し気になり聞いてみる。
「どちらかと言うと嫌いだな。それよりも更に嫌いなのが、娘だ」
「は?」
「だいぶ前に騎士団で通りかかった際、デランジェ伯爵に食事や酒を振舞われた事があるんだ。その時にやたらベタベタと身体を押し付けて来たり、夜騎士団のテントに忍んで来たりしてな。迷惑だった」
「ああ、王家とお近づきになりたい部類か」
「基本そう言う娘が多いんだ。まあ、スミレやデイジーは別だったがな」
「興味が無いヤツと、どうこうなりたいとは思わないからな」
「だから、スミレ。明日はドレスを着て一緒に行かないか?」
ガイナが少し縋る様な目を見せるが。
「却下だ」
着る訳が無い。
大体持って来てもいない。
スミレは晩餐に自警団の制服で行く事にした。領地を出る際に着ていた一応礼服の部類だ。ガイナは騎士団の制服を着ている。一見、騎士と下っ端の騎士に見えなくは無い。
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「ガイナード殿下っ!お会い出来て嬉しいですっ!こちらにどうぞっ!!」
ガイナに腕を絡めようとするが、ガイナは何とかかわしてしる。ガイナがスミレを見ると、
「あら、騎士団の方もいるのね?パパ、この方もご一緒なの?」
レイチェルは今更ながらにスミレの存在に気づいたようだ。
「ああ。ガイナード殿下と一緒に助けて頂いた方だ」
「へぇ。女性みたいなお顔でも、ガイナード殿下のお役に立つのね?」
レイチェルはふふんっ、と鼻で笑った。
何だかカチンと来る。
「スミレは女性だからな。でも私と同じくコモドンドラゴンを4匹倒す腕を持っている」
「そ、そう」
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「私は構いませんので」
と、部屋を辞そうとする。しかしガイナが、
「デランジェ伯爵、そちらがどうしてもお礼にと呼んだにもかかわらず、スミレに対する待遇はどういう事だ?私達は帰らせてもらう」
クルリと踵を返したガイナにデランジェ伯爵は慌て、レイチェルはいつの間にかガイナの前に立って
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そう言ってレイチェルはガイナに抱きついた。
その瞬間、スミレはモヤッとイライラ嫌な感じがした。
「デランジェ伯爵、番探しの旅は中止になった訳では無い」
ガイナはレイチェルを突き飛ばした。そして少し離れた所にいたスミレの腕を引き寄せる。
「番は見つかったのだが、拒否られているので口説き中だ。失礼する」
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「まさか、その女が?ふさわしく無いわっ!ガイナード殿下の番がそんな小汚い騎士なんてっ!!」
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