花笑みの庭で

ゆきりん(安室 雪)

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 等々力さんに言われた通り、下のカフェでリーフのチャイティーラテを2つ頼むとスタッフの子が『?』何それ。みたいな顔をする。

 確かにこないだメニュー見た時には載ってなかったよね。でも、等々力さんに教えてもらったんだからあるはずなんだけどなぁ?

 奥にいたベテランスタッフさんが飛んでくる。

「等々力さんのお使いですか?」

 と尋ねられる。

「まぁ、そんな感じです。等々力さんに教えてもらいました」

「シークレットメニューなので、把握してるスタッフ少ないのよ、ごめんなさいね。もっと徹底するわね~」

 愛想良く謝ってくれる。

 さっきのアイツとは大違い。

「袋はどうします?」

「あ、上なんでそのままでいいです。ありがと~」

 と答えたが、後悔した。

 セキュリティカードをかざしたいのに、両手が塞がってる・・・。
 
 今度からは1つの時は袋を断り、2つの時は入れてもらおう。



 スタジオに入り、アヤトにチャイティーを1つ手渡し、もう一つはブースの中に持って入る。

「とりあえず昨日の聞いてみて」

 ヘッドフォンからでは無く部屋に流れる。

 うん、昨日のこの感じ好きだなぁ~と思っていると

「俺も、さっき聞き直してコレでまとめようと思う」

 エスパーですか。

 ブースを出てアヤトの横に座る。

「じゃあ、コレは完了?次はスノスタバージョン?」

 予想より早く終わった。

 ちょっと嬉しいかも。

 忘れていたチャイティーを飲む。

 何コレ?

 めっちゃ美味しいっ、次も頼もっ!

「ああ。スノスタの方は若干ロック調にしようと思って。彩音バージョンはCMのイメージでゆったり目にしたから、同じ曲でも対照的になるようにしようと考えた。歌い方もさっきまでのは一旦忘れてくれ」

 アヤトがポチッとボタンを押し、次の曲を流し始める。

 「ボーカルは俺と彩音で入るから、パートの割り振りも一応出来てる。楽譜で追ってみて」

 流れている曲を聴きながら譜面を見る。歌詞は頭に入ってるから多分大丈夫。

 うっ、難しい。

 部分的に拓哉とハモった事はあるけど、コレは難易度高すぎる。

 ちゃんと歌えるのか、私っ!

 憧れのアヤトとの曲なのに・・・。

 思わず不安な顔をしてしまったら

「大丈夫、1日分日程に余裕が出来たからしっかり合わせれるよ」

 頭をポンポンしながら宥める様に言われる。

「うん。かなり心配だけど」

「彩音なら何とかなるよ、きっと。じゃ、歌い方詰めようか?」

 と早速アヤトの歌い方指導が始まる。彩音バージョンの時よりも時間がかかる。今回は2人のバランスが重要なのだ。音程は勿論、音の長さ・強弱・ブレス等々。

 かなり時間が経った頃、アヤトの携帯が鳴る。

「じゃあ、すぐに戻ります」

 電話を切り、彩音に部屋に戻るから片付ける様に言う。
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