花笑みの庭で

ゆきりん(安室 雪)

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 にゃ!?

 アヤトにキスされてるっ!?

 ど、ど~してこんな状況になってるの~っ!?

 アヤトは目を閉じるとそのまま、また眠ってしまった。

 ど~ゆ~事!?

 ソファーで寝ちゃったら運べないし。

 突然の出来事にワタワタしていると『ピンホール♪』とインターフォンが鳴る。

 こんな時間に?

 ドアスコープを覗くと、先程料理を作ってくれた颯さんが普段着に着替えて佇んでいる。

「颯さん、食事美味しかったです。ご馳走様でした。どうしたんですか?忘れ物ですか?」

 「あ、いや。困った事が起きて無いかと。大丈夫ならいいけど」

 ふいっと横を見る顔が少し照れている。

「アヤト、ソファーで寝ちゃって。ベッドに運べなくて、どうしようかなと。困ってました」

「ま、子供じゃ無いんだから毛布でも掛けときゃ大丈夫だろ。んな事より、あれだ、あれ。あれはされなかったか」

「あれ?」

「あれだよ、あれ。・・・接吻せっぷん

「せっぷん?せっ!・・・」

 あ・・・、キスだよね。

「え~と、あの~」

「されたんだな」

 真面目な顔で聞かれているので、誤魔化すのは失礼だよね。

「はい、さっき寝ぼけてたみたいで」

 苦笑いする。

 心のこもったキスだったら良かったのに。

「アイツ、キス魔だから。気にするな」

「えっ」

「酒入るとたまにな。機嫌がいい時は特にヤバイな」

「今日、私のレコーディングが一つ終わったから機嫌良かったのかな。ま、役得でラッキーと思っときます」

 ニコッと笑う。

「ま、割り切って思えるならいいけど。ホラ、彩音ちゃんまだ若いから色々気にするだろ?」

「大丈夫ですっ。何だか私、からかわれてキスされたりするんでっ」

 気を使わせちゃいけないと思って言った言葉が余計だったと気づいたけど、口から出た言葉は取り消せない。

「・・・。じゃ」

 と颯さんは玄関を出る。

「あのっ、心配してもらって、ありがとうございました」

 後ろ姿に声をかけると振り返る事なく、左手を挙げて去っていく。

 


 お風呂に入りながら先程の颯さんを思い出す。

 心配して様子を見に来てくれるなんていい人だなぁ~。

 顔はちょっと強面だけど。

 ふふふっ。

 あ~、でもアヤトってキス魔なんだ。

 むむ~ん、さっきのキス複雑な気分だな。



 お風呂から上がってリビングのソファーを見るとアヤトはまだそこで寝ていた。そっと毛布をかけて『おやすみ』と声をかける。

 アヤトの部屋のベッドで1人で寝るのはじめてだ。アヤトは側にいないのにアヤトの匂いがする。ベッドに潜ると更に・・・。なんだかアヤトに包まれてる感じがする。

 さっきのキスを思い出して切なくなる。

 憧れだったアヤトが近くにいすぎて、欲張りになりそう。

「アヤト大好き・・・」

 呟いて布団をかぶるとすぐに睡魔がやってくる。

 
 
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