花笑みの庭で

ゆきりん(安室 雪)

文字の大きさ
上 下
51 / 80

51

しおりを挟む
 バイトが終わり部屋に帰ると母・美緒子とアヤトがリビングにいた。

「彩音ちゃん、チャイ飲みたいから入れてね?」

「ごめん、彩音。チャイの話ししたら美緒子さんも飲みたいって」

 あ~はいはい。

 作りますよ~。

 すぐにキッチンに向かい作り始める。もう何度も作っているし、スパイスは一杯毎に小分けしてあるので簡単に仕上がる。

 「はい母さん、アヤト」

 マグカップを2人の前に置き、自分のマグカップも持ってくる。

「でね~、彩音ちゃん。アヤトから聞いたんだけど、3作目の話し。いいの?アヤトで」

「えっ、あ、う、うん」

「ふ~ん、彩音ちゃんがいいならいいけど。クライアント喜ぶと思うし。でも、彩音ちゃん、3作目のキスは唇なんだよ~。いいの?アヤトなんかで」

「何か酷い言いようだね、美緒子さん」

 ムスッとしながらアヤトが答える。

「ま、いいけど。それなら絵コンテ見せるからね。大体こんな感じで撮ろうと思ってるの。まあ、撮影までに練習しといて?あっ、もう行かなきゃ。彩音ちゃん、チャイご馳走様~っ」

 バタバタっ走り去って行き、部屋は急に静かになる。

 絵コンテを手に取り、撮影の流れを見ているアヤトがふと顔を上げ、『彩音も見るだろ?』と手招きする。

 アヤトの横に座る。

 ペラペラと紙をめくってくれる。

 そして問題のキスシーンはやはり唇だ!

 あっ、でも2秒って書いてある。

「良かったぁ、短い」

 思わず声に出してしまった。



しおりを挟む

処理中です...