花笑みの庭で

ゆきりん(安室 雪)

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 アヤトと彩音はスタジオで曲を作っていた。

「彩音、正直かなり曲の依頼あるんだけど、どうする?断るか?全部受けたら俺も彩音も死ぬと思うぞ」

「う~、等々力さん何とかしてくれないの?」

「アイツ、新事業の方行ったしなぁ~、てソコの部署に振ればいいのか」

 電話をかけ、等々力さんを呼び出す。

 しかも『今すぐココに来い!』



「同じビルにいるし、俺もスタジオ周辺にはいるけど、でもあの呼び出しは無いんじゃない?」

「でも、等々力さん。私達死にそうで。いくら小回り利く会社でも、曲作りは直ぐには出来ないですっ。1から作成なんですよ?歌詞の『か』の字も浮かんでないんですよ?」

 珍しく彩音が等々力に食ってかかる。

「この仕事の振りおかしくないですか!?」

「ん?見せてみて・・・、おかしいね。予定が被りまくり。確認するよ」

 


 そして、数分後。

 営業成績を上げたい新人が、来た依頼を片っ端から受けた結果が、アノ状態の予定らしい。

「リョウ、お前部下の躾間違えたんじゃないか?あり得ないだろう」

 アヤトが不機嫌を前面に出して言う。

「俺と彩音っ歌詞書いて曲作るのに限界あるから、リョウの部署で作れよCMの曲作ってるんだろ?」

「いや、でも俺の所はCM用の短いヤツばっかりだからさ~」

「この際、いいんじゃないか?サビだけとか鼻歌で数十秒とかでも。じゃないと、死ぬ」

「私もそろそろ大学始まるんで、昼間はいないんで・・・」

「彩音、俺の嫁さんに来るんだから大学なんて行かず、ずっと俺のそばにいていいんだよ?」

 微笑みながら言うが。

「あ、いや、まだ決定じゃないし・・・」

 濁してみる。

「あ、報告。俺正式に婚約したから」

 サラリとリョウが言う。

「えっ!?等々力さん、お付き合いしてる人いたんですか!よく時間ありましたねっ」

 あれだけアヤトや仕事に振り回されても、恋人がいて、更に婚約まで進めてしまうなんて、1日24時間の流れるペースが違うのだろうか?

「子猫ちゃん、可愛いんだ~。彩音ちゃんにはまた今度紹介するねっ。じゃ、曲については考えて明日、方向性練ろうな」

 足早に部屋を去って行く。

「等々力さんの婚約者って、人間?」

 彩音はボソリと呟く。

 


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