婚約破棄ですか?畏まりました(はい、喜んでっ!)

ゆきりん(安室 雪)

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 国王に呼ばれた日、父と一緒に王宮に向かった。両家の関係者が集められるのだ。正直言って、かなり行きたくない。だって、何となくダンが自分の非を認めず、喚き散らしそうな気がするのだ。きっとアイシャもいるのだろう。

 呼び出しに書いてあった部屋へ向かう。

 入りたく無いが、今日で全てに決着をつけたい。父と共に部屋に入って行くが当事者が誰もいない。指定時間ギリギリで入ったのだ。呼び出したボービン家が先に来ているのが常識なはずなのに。

 「まだ、ボービン家は来ていないようだな」

 父の声に、室内にいる速記官も呆れ顔をしている。もちろん争事担当官も微妙な顔をしている。争事担当官とは、文字通りで申し立てのあった争い事を、双方納得させたり、国の法律に則り解決していく人だ。

 15分程過ぎたが、来る気配が無いし連絡も無い。

 父が争事担当官に向かい

 「当事者が片方いないが始めて欲しい」

 と伝え、始める事になった。

 「ローゼリア・シャーロック伯爵令嬢の婚約破棄騒動でしたね。私も当日は会場で問題が起きないか見回っておりました。そして、偶然にも凄く側にいて全て見ておりました。ですので、提出頂いた『婚約破棄受け入れ書』は問題なく認められ、婚約破棄になりました。その際、会場内で『真実の愛』を叫ばれてーーー」

 「婚約破棄は無しだぁ!!」

 争事担当官の言葉を遮り、ダンが入って来る。まずは遅れた事の、お詫びから入るのでは無いか?ダンの後ろからは、ボービン伯爵・夫人・アイシャの姿が見える。

 「静かにしで下さい。あなた方が遅刻してきたので、既に始まっています」

 争事担当官は淡々と言う。

 「婚約破棄は認められました。次にーーー」

 「俺が破棄を認め~な~い~~~っ!!」

 「私も、認めないわっ!ローズはダン様と結婚するべきよっ」

 ダンが叫び、アイシャも叫ぶ。

 「いえ、認めないではなく、あなたからの婚約破棄宣言でした。私も会場内で見ております。ローゼリアさんからの書類の提出もすんでおります」

 「俺は認めないっ!」

 「私も認めないわっ、!!」

 「言い出した方から認めないと言われても、それこそ認められません!次っ!!次に、ダン・ボービンとアイシャ・シャーロックの『真実の愛、了承届』についても、私が目撃しておりますので、認められました。2人は結婚して下さい。既に入籍の手続きは、済んでいます。離婚は認められません」

 「イヤ~っ、貧乏伯爵家なんてイヤっ!!イヤなの~っ!!」

 アイシャが相変わらず叫んでいるが、争事担当官補佐が2人に猿轡をはめた。

 「次に、『援助の覚え書き』によりレーゼリアさんが貸し付けていた6億ルビー並びに慰謝料5億ルビーの合わせて11億ルビーを、ボービン家は支給支払いなさい。支払えない場合には『貸し付け金取立て書』により、土地・建物・領地などを売り、返済に充てて貰います」

 「払える訳がない・・・」

 それまで黙って聞いていた、ボービン伯爵が呟く。

 「でしょうね。ローゼリアさんに援助してもらっていてもカツカツの財政のようですからね。なので、こちらで不動産の価格を調べました。良かったですね、ご先祖様が条件の良い土地に屋敷を遺してくれて。王都にある屋敷と土地で6億、避暑地の別荘3棟で4億で合計10億ルビーになります。領地の建物は老朽化が進んでますのでそのままでは売れませんので、そちらに住まれてはいかがでしょうか?領地はそのまま残ります。足りない分の1億につきましては、屋敷内の美術品や調度品、夫人の宝石類を売りに出せば何とかなるでしょう」

 「・・・、何もかも無くなるのだな。このっ、バカ息子が~っ!!」

 ボービン伯爵がダンを張り倒していた。伯爵の横では夫人がシクシクと何も言わず泣いていた。

 「10億の支払いはその見積もりでお願いします。美術品や調度品も従いますが、宝石類は値段を出して貰いながら検討しても良いでしょうか?色々、思い出や代々伝わってきたモノもありますので・・・」

 「わかりました、鑑定人を後日手配します。ローゼリアさんには来月の頭にこちらから清算金をお支払いします。以上でよろしいでしょうか?はい、では、終わります」

 ダンとアイシャは猿轡をしたまま室外に出された。ボービン伯爵が

 「ローゼリアさん、今まで申し訳ない事をした。アレのせいで迷惑をーーー」

 「いいえ、私にとっても社会勉強になりました。10年間の婚約期間中、お世話になりました」

 ローゼリアは綺麗なお辞儀をした。
 



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