指輪に導かれて

ゆきりん(安室 雪)

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 暖かい腕の中にいると、頭はパニックしていても眠くなるものだ。不覚にもあまりにも心地良かったので二度寝してしまった。

 

「まあ、アレクサンドル様。その子供は?」

 甲高い声が聞こえる。

「ああ、昨日城から帰る時に森で倒れてたから拾ってきた。風呂には一応入れたんだが、何か着るものを用意してやってくれ」

「まあ、昨夜お呼び頂ければ・・・」

「かなり遅かったからな。俺は今日も早くに出かけなければならないし、面倒見てやってくれ。育ちは多分悪くないと思うんだが」

 着ていたものは一風変わっていたが、身に着けていたネックレス、指輪、そして魔力。平民とは思えない。

 アレクサンドル(アレク)は準備されていた朝食を手早く食べ、愛獣のグリフィン、ギンに乗り城へと向かった。



「お嬢ちゃん、そろそろ起きて。朝御飯ですよ」

 う~、お嬢ちゃんて誰?

 私、1人暮らしだし。

「お嬢ちゃん」

 今度は身体を揺さぶられる。

「とりあえず、この服を着てね。お昼位には合うサイズのを準備するからね」

 目を開けると、見た事のない30代位のメイド服を着た女性が寝ているベッドの上に何やら服を置いてくれる。

「1人で着替える?」

「大丈夫です」

 何その子供扱い。

「私はエマ、着替え終わったら呼んでね」

 と部屋を出て行ってしまった。

 色々聞くタイミングを逃してしまった。

 ベッドから起き上がり、床に降りようと思うが、このベッド何だかとても高い?足が着かないのだ。何で?その足を見て何だか違和感。手を見ても違和感。部屋を見回すと鏡があるので走って行き、自分の姿を映す。

「何これ!?夢!?もう一度寝ればいいの!?」

 鏡に映るのは、どう見ても7、8歳位の女の子なのだ。しかも、すっぽんぽん。

 いやいや、夢でも裸はダメでしょ。

 ベッドに置いてある服を着ると丁度、さっきのエマさんがやって来た。

「呼んでくれないから来ちゃったわ。あら、ちゃんと服は着れているわね。じゃあ、付いて来てね」

 部屋の外に出るように促される。

 ダークブラウンの壁に赤い絨毯。長い廊下、下に降りる階段にエマさんが差し掛かり、振り返る。ちゃんと付いて来ているかの確認の様だ。

 広いダイニングに通され、椅子に座らせられると、パン・ベーコンエッグ・スープ・サラダ・オレンジジュースが運ばれてくる。

「どうぞお召し上がり下さい」

 エマさんに言われ、オズオズと手を伸ばす。

 ふんわりと焼き上がったパンはまだ焼きたてなのか暖かくいい香りがする。ペロリと朝食を平らげるとエマさんに連れられ、庭の散歩をする。色とりどりの花が咲いていて、公園の様だ。振り返り今までいた建物を見ると、貴族の館然りと言った感じた。

 夢の中よね!?想像力抜群。

 23歳、派遣社員。現実逃避する癖は無いはずだけど、夢の中の妄想が凄いかも!?





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