指輪に導かれて

ゆきりん(安室 雪)

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 その日の夜遅くにアレク様は城から戻る。すでにアレク様のベッドで眠りに就いていた優は微かなベッドの振動で起きる。

「アレク様、お帰りなさい」

「ただいま、優。大変な事になりそうだ」

 アレク様が暗い声で呟く。

「何があったんですか?アレク様」

 起き上がりながらたずねる。

「せっかく農村部を再生したのに、ラトニアか略奪行為を働いているらしいんだ」

「えっ。せっかく皆さん喜んでくれたのに」

「ああ。ストニアの国境警備は廃止して、その分をラトニアの警備にと、ストニアに騎馬隊を貸し出していたのだが、午後報告が入った」

「そんなっ!」

「明日から援助にグリフィン騎士団も行く事になった。そして優。優にも再生の手伝いをと陛下から勅令が出てる。危険な場所だから行かせたくはないのだが・・・」

「行きますっ。再生のお手伝いしたいですっ」



 翌日、ストニアに向けて出発する。ライ様も一緒に遠征だ。前回と違い、今回は騎士達からピリピリした緊張が伝わってくる。

 途中で、以前と同じ場所で休憩をとる。先に来ていた騎馬隊と合流し、状況の確認などを行う。

 ライ様と優は一行から少し離れた場所に行き、魔術の指導を受けていた。それはシールドと呼ばれる防御壁を作る方法。尾根伝いにシールドを作り、ラトニアからの侵入を防ぐというやり方だ。

「おれ1人だと無理があるけど、優もいるから多分大丈夫だと思うんだ。範囲は広いけどな~」

 ライ様の魔術と優の魔術を合わせ、2人で1つの魔術にする。そうする事で、ライ様も優もシールドに異変があった際にすぐに感知出来るようにする。

 休憩が終わり、グリフィン騎士団は空から、騎馬隊は陸から移動を開始する。



 朝から出発したグリフィン騎士団は午後にはストニアに到着する。前回使い勝手が良かった館をまた借りる事になった。

「とりあえず、現地がどうなったか確認しないとな」

 ライ様の声に、

「すぐに行くか」

 とアレク様が言う。グリフィンから荷物を下ろし、ライ様、アレク様、優、グリフィン騎士3名で行く事にした。

 農村部はまだ穏やかな所が多いが、国境近くの森に近づくにつれ、黒煙が上がっていたり、怒声があがったりしている。

「再生したのは、ついこの間なのにっ!」

 優は怒りを露わにする。農村部の人は飢えからやっと解放され、元の生活が送れるのを喜んでいたのに、こんな事って!

 優は紅に乗ったまま、魔力を発動させる。ストニアの端から3国の国境、そしてラビリオの端まで。一気にシールド!!普通の人には何ら変わって見えないが、ライ様は

「優、倒れるからっ!いきなりなんて事やりだすのっ!!」

「大丈夫ですよ~、ライ様っ!守らないとっ!!」

 そう言ったかと思うと、優の身体はグラリと揺れ、紅から落ちて行く。

「優っ!」

 異変に気付いたアレク様が素早く銀を移動させ、優を受け止める。

「優っ!優!?」

 アレク様の呼びかけに、優はピクリとも動かなかった。




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