黒猫は愛されたい

ゆきりん(安室 雪)

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3 〜泉とリク〜

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 眠りに就いた透を部屋に残し、泉は医務室に向かう。今日のこの時間、リクは医務室にいると言っていたな。

「リク、今いいか?」

「ああ、泉、あの黒猫起きたのか?」

「黒猫って・・・。お粥食べてまた寝てるよ。で、どうする?ああ、彼、黒崎 透君。ウチのアイドルグループの1人。『Link LIfe』って知らない?訳して『リン』なんだけど、アイドルは知らないよね?」

「知らないな~、関わりないし。俺、診た事ないし。黒猫、ヤられてただろ?男なのに。かなり抵抗したみたいだな、体に擦過傷や打撲痕凄かった。顔も殴られたんだろうな、口切れてたし、かなり腫れてた。もしかしたら、複数人にヤられたかも知れないな。どうする?警察に話すか?一応、証拠になりそうなモノ、体液とかコートは残してあるぞ」

「そこなんだよな。当日、黒崎君は音楽番組の収録後から行動が不明なんだよ。もしかしたらスタジオから拉致された可能性あるんだよね。今、先輩の等々力さんに相談してるんだ。方針決まるまで、黒崎君、預かってくれない?自分の部屋に戻ってもらうのも心配だし。リク、医務室以外は時間、都合付くだろ?な、頼むよ」

「黒猫の1匹位いいけどな」

「だから、黒崎だって」




 リクが部屋に戻ると、ベッドには黒猫が丸まって寝ていた。うなされているようだ。

 そうだよな、酷な体験した後だもんな。

 頭を撫ででやると安心したように、静かな寝息にかわる。ホント、黒猫だな、コイツ。

 リクは、ふふっと笑みがこぼれる。

 ベッドに黒猫を残し、リクはリビングでアコースティックギター(アコギ)を手に作詞・作曲をはじめる。

 リクの職業は、ギタリスト。副業が医者なのだ。だから、部屋に連れ帰った黒猫を真っ先に検分し、証拠保存、怪我の撮影をした後、風呂に入れ手当もしたのだ。

 あんな細い体で暴力に耐えたのか。

 ギリッと奥歯を噛みしめる。

 エレベーターでの、怯えて助けを求める黒猫が頭から離れない。今日は曲は作れないなと諦め、グラスに氷とグランザグラムを入れ、ちびちびと舐める様に呑む。

 気持ち良くは酔えそうにないな。

 一杯でやめ、ベッドで黒猫の横で眠りに就いたのだった。


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