運命って信じますか??

あささ

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馴れ初め、膝枕にて。

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 手作りとは思えないレベルの、美和さん特性フルコースを堪能し、夕食の時間はたわいない話で盛り上がった。
 「いや~、それにしても2人が打ち解けてくれるのが早くて助かったわ~。」
 「そうそう、しかもお互い下の名前で呼びあって。」
 美和さんと父がにやにやしながら言ってくる。
僕と華玲は恥ずかしがりながらお互い顔を合わせた。

 そんなこんなで夕食を終え、お風呂の時間となった。
...と言うよりもこの家ではという方が正しいのかもしれない。
この家は山を少し上がって開けた場所に立てられているためたまたま効能がある温泉を引けたらしく、そのまま旅館のような造りに仕上げたらしい。
時間制で男女を分けていて、まだギリギリ男子の時間なので急いで入りに行くことになった。
何故、男女で分けられているかはメイドや執事も住み込みだからである。
 脱衣場でさっさと服を脱ぎちゃっちゃと体を洗い温泉にザッバーンと入った。
この温泉の効能は硫酸塩泉で、主に関節や筋肉痛に効くらしい。
ちなみになんだかんだで馴染めなかったストレスなのかニキビがポツポツとあるのでそれも治ってくれるとありがたい。
  
 「俺はそろそろ上がるとするかな。」
長風呂が苦手な父は数分入ってもう上がってしまった。
 「うぃー、僕はもう少し入っとく。」
父が上がり、見上げれば広がる星空を眺めていると、よほど疲れていたのか眠気がして気づいたら居眠りをしていた。

 「ガラガラ」
扉の開く音が聞こえハッと目を覚ます。
執事の誰かだろうか?
誰だろうと後ろを振り返った...その瞬間に耳を劈くような悲鳴が温泉中に響く。
 「どうしたんですか!?」
ん...、華玲の声?...あ、終わった。
華玲の声が聞こえた瞬間、一瞬で悟った。
そう、僕が居眠りをしていた間に女子の入浴時間に変わっていたのだ。
 「よ、よお...」
状況的にどうすることも出来ず弱気に手をあげる。
 「樹希くん!?なんでまだいるんですか!?もしかしてそういう趣味が...!?」
 「ち、違うんだ、聞いてくれ!疲れて居眠りしてたらこの時間まで寝過ごしてしまったんだよ!」
 これは紛れもなく本当のことだ。僕に覗きの趣味なんてない。興味無い事はないが、ポリシーには従う主義なので、そこまで非常識なことをしようとは思わない。
「本当なんだ!」と僕を見て悲鳴をあげたメイドは鋭い目付きで睨んできたが、華玲には伝わったようで渋々と許して貰えた。

 「明日からは気をつけてくださいね...?」
 「あぁ、本当に申し訳なさ無かった。」
そう言って扉をあけ、脱衣場に入ろうとした瞬間、目の前がボヤけ次第に意識が飛びその場に倒れ込んでしまった。

                   ⚅⚅⚅⚅⚅⚅⚅⚅⚅⚅⚅⚅⚅⚅⚅⚅
 
 「う、うぅ。」
 「やっと目を覚ましましたね。もう樹希くんったらどれだけ温泉で居眠りしていたんですか?」
どうやら僕はのぼせて倒れていたらしい。
甘い香りと柔らかい肌...って、ええ?!
膝枕されていたことに気がついた僕は急いで頭をあげる。
 「ああ~、もう少し膝枕していたかったです。」
残念そうにしている華玲がかわいい。
どうやらリビングのソファに運ばれそこで膝枕をされていたらしい。
起き上がってふと身体を触ると服はちゃんと着せてあった。...ん?ということは?
 「あ、あの、確認なんだけどもしかして僕に服着せてくれたのって...」
そう聞くと華玲は顔を赤くしてそっぽを向いた。
 「もしかして、もしかしなくても見たのか...?」
 「だってしょうがないじゃないですか!
それはお嬢様の仕事だってメイドさんがみんな逃げちゃったんですから!」
 「あー、いいんだいいんだ。というかむしろ助けてくれてありがとうな。」
見られて興奮する趣味は生憎持っていないが今回の件は完全に僕が悪いことなので僕がとやかく言う筋合いはないと、必死にあやす。
 「じゃ、じゃあ私がお礼を求めるのもなんですが、もう少し膝枕をさせて貰えませんか?」
恥ずかしかったがそこは何とか仕方なく飲み込んで正直に膝枕されることにした。

 「樹希くんって髪サラサラですね~」
と、髪を撫でながら言ってくる。
今この瞬間すごくドキドキしている。
けどやっぱりこの感情に疑心暗鬼な僕は素直に照れることは出来ず、「ありがとう」と一言。
 
 「そういえば2人は?」
 「お母さん達ですか?2人はなんか、『2人の夜の時間をを楽しんでくるわね~』とか言って寝室に行きましたよ。何をするのか分かりませんが。」
何をするか分からないかあ~。
何をするかすぐに大体わかってしまった自分が悔しい。
そんな華玲に、僕は意地悪で質問した。
 「夜の時間ってなんだと思う?」
 「えっとぉ...例えば...う~ん、薄暗い部屋でロマンティックにアロマを焚きながら、ワインとかでしょうかね。」
うん。ピュアだこの子。質問したことに少し後悔した。ピュアピュアピュアピュアだ。
 
 その後もなんだかんだで会話が盛り上がり、その間に僕自身も膝枕されることに居心地を覚えてしまいいつの間にか寝落ちしてしまっていた。
  ┄  ┄  ┄  ┄ 
 数時間後、ハッと目が覚める。時計を見るともう3時を回っていた。
どうやら、そのまま寝落ちしてソファで寝ていたのかと理解し当たりを軽く見回す。
電気は消されている。多分メイドさんが気をつかって起こさず電気を消してくれたのだろう。おまけにタオルケットも丁寧にかけてあった。
華玲はいなかったため、もう自分の部屋に戻ったのだろう、そう思っていた矢先背中に当たる柔らかいものを確認した。
 「え?嘘だよな...?」
すっと後ろを振り向くと案の定華玲が寝ていた、しかもバックハグをした状態で。この柔らかい感触は紛れもなく華玲のたわわなあれだ。
当然起こしてしまうのは申し訳ないため、ハグをされた状態で体を向き合う形に回転してこっそり起こすことにした。
 「お、おーい華玲さーん。」
何度頬をぽんぽんと叩いてみても起きる気配がない。
その瞬間だった。
華玲がギュッとさらに抱きしめて、その反動で唇と唇が触れ合ってしまった。
なんだこのプルっとした感触は...
じゃなくて、何考えてるんだ僕!?
ばっと顔を離した、突然華玲は寝言を言い出した。
 「樹希くん...やっと会えましたね...へへ」
やっと会えた?なんの事だ?と疑問に思ったが寝言にいちいち干渉できるほど心に余裕がなくすぐにこのことを忘れてしまった。
 それから何度か起こしたがそれ以後抱きついたまま寝息だけを響かせピクリとも動くことは無かった。
 「しょうがないけど、このまま寝るしかないのか。」
まあ、起きたら多少は緩んでるだろうし少し早く起きて華玲を起こさないように抜ければいいか...
 『そういえば、俺ファーストなんだな...』
と、さっきのキスを思い出しながらそのまま深い眠りに落ちていった。

                  ⚅⚅⚅⚅⚅⚅⚅⚅⚅⚅⚅⚅⚅⚅⚅
 
 華玲side

 ミーンミーンとセミの鳴き声が聞こえ目が覚める。窓の外は既に外は明るいが明るさ的にまだ6時ぐらいであろう。
夏休みもまだ始まったばかり。
 「2度寝でもしようかな...」
窓に向けていた目線を目の前に戻す、と。

 『あれあれあれあれ???』
そう目の前に居たのはどこからどう見ても樹希であった。しかも樹希が抱きつく状態で顔もキスできそうなほど近かった。
すると突然、「あ...」と昨日のことを思い出す。

 遡ること昨日の夜。
樹希を膝枕して盛り上がっていたが、やはり相当疲れていたのか樹希は話の途中でいきなり寝てしまった。
無意識に頭を撫でていたことに気づき、ぱっと手を離す。
すぅ~すぅ~と寝息を立てている樹希を眺めながらまたふとした自分の心情に気づく。
 『まただ...。何なのだろう、この胸の痛み。』
お互い、打ち解けるのが早すぎて出会って1日目でもう膝枕までしちゃってるが、それと並行して樹希といる時のこの胸の痛みも強くなる。

 「うぅ...」
突然樹希が唸りだした。
 「樹希くん、大丈夫ですか?!」
声をかけるも起きる気配はなく、だが。
次は樹希の目から涙がこぼれ膝を濡らした。
 『どうすれば?どうすれば!?』
こういう場面に遭遇したことがないためあたふたとして軽いパニック状態となった。
そして、、、
焦った結果、とりあえず抱きしめてみた。
 「何で泣いているのか分からないけど私が、守ってあげますからっ!」

...ってなった後居心地が良くなり寝てしまった、という訳だ。
 『私はなんてことを...!』
樹希くんが起きないうちに...と彼の腕から抜け出そうとした瞬間。
ガバッと樹希が力を込めて更に抱きしめてくる。
 「ひゃっ?!」
思わず変な声を出してしまったが反応がないため彼はまだ寝ているようだ。
―その時だった
 『?!?!?!』
引き寄せられた瞬間、キスをしていた。
驚いた反動でばっと樹希を突き放していた。
さすがにこれでは樹希も起きたようで、
 「いてて...あれ?華玲...は?」
樹希を突き放したあと勢いでそのまま走って自分の部屋まで来た。
 「ききききき、キス?!」
そう、初恋がまだな華玲にとってはもちのろん、ファーストであるため「キス」というものの感触にあたふたしてた。
 そしてまた胸が痛む感覚に襲われる...
 「この感情、やっぱりモヤモヤする。相談しよう。」
と言った具合に親友に電話をして相談しようと決意するところから新しい生活での2日目が始まったのである。


 
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