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第4話 またしても罠に跳び込む伯爵家

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 見事ロハーナの罠にハマったウリアは、今度はジェンマリア侯爵家を訪れていた。
 
 伯爵家と侯爵家は、お互いの仕事のこともあってか、それなりに密接な関係性である。
 そして、今回のウリアには味方がいた。

「ウリア。酷い目に遭ってしまったね。だがもう大丈夫だ。僕がなんとかするから」

 伯爵家の当主、レンフロー・ケイトハーグである。

 二人は侯爵家の執事に案内され、狭い部屋へと案内された。
 
「お父様。どうしてこのような部屋なのでしょう……」
「使用人にも訊かれたくない話だ。こういった狭い部屋の方が適しているとお考えになったのだろう」

 レンフローは好意的に解釈をした。
 しかし、ウリアは納得いっていない様子である。
 伯爵家と侯爵家の関係性を考えれば、最も豪華な部屋で出向かえるのが普通だと思っているからだ。

 これほどに狭い部屋は、男爵家を叱りつける時にこそふさわしい。
 そんなことを考えていると、ジェンマリア侯爵家の当主、コベルク・ジェンマリアが姿を現した。

「コベルク様……。突然の来訪、申し訳ございません」
「良い良い。おおウリアも一緒か」
「はい。立派な当主となるために、日々学ばせていただいておりますので」

 レンフローが事情を説明すると、コベルクは同情したように頷いた。

「それは困ったことだ。私に任せなさい。手は打っておこう」
「ありがとうございます!」
「コベルク様……。感謝いたしますわ」

 ウリアがコベルクの手の甲にキスをした。

「ははっ。とんでもないプレゼントを頂いてしまった」

 満足そうな表情を浮かべたコベルクに、ウリアは頬を赤く染めた。

 こうして、交渉は大成功。
 ケイトハーグ家は、意気揚々と帰って行ったのだが……。

 
「はぁ……」

 二人が去った後、コベルクは必死で手の甲を拭っていた。

 執事に布を返してから、まだ少し気になるのか、息をふきかけている。

「厚い紅を引いておったな。まだ15歳だと言うのに呆れてしまう」
「甘やかされて育ったのでしょう」
「間違いない。……にしても、我が家と男爵家の結びつきを知らんのか? あいつらは」
「あの様子を見る限りそうでしょうね。歴史など学ばぬ家庭のようですから」
「バモットから手紙を受け取っておったが……。それでも驚いてしまった。私はきちんと騙された演技をしていたか?」
「十分でしたよ」
「それは良かった」

 コベルクは立ち上がり、自分の部屋へと戻った。
 これから何枚も手紙を書く必要があったからだ。

 内容は……。

 ――ケイトハーグ家との取引の中止を命ずる。

 侯爵家の抱えているいくつもの会社。
 その全てが、ケイトハーグ家との取引をしなくなる。

 ケイトハーグ家の崩壊は、着々と進んでいた。
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