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第9話 働きすぎは禁物
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伯爵家の崩壊からしばらく経ち、着々と旧ケイトハーグ領での、式場の建設が始まっていた。
「確かに君の言う通り、太陽が照りつける自然豊かで心地の良い場所だね……」
「そうでしょう?」
ケイトハーグ家から解放してくれた。その礼がしたいとのことで、多くの領民が建設の手伝いをしている。
男爵、子爵両家は、領民への配慮も忘れない。
一日の労働時間は、多くても五時間。
終われば報酬を毎日配り、港で採れた新鮮な魚も提供した。
まさに地獄から天国。領民の仕事が捗らないはずがなかった。
当初の予定を大きく上回るほどの作業スピードで、建設を行うことができている。
こうした領民の意識のコントロールは、男爵家の得意分野だった。
その指示のほとんどを、令嬢であるロハーナが出しているのだ。
「君は本当にすごいよ。……婚約者である僕が情けなくなるほどに」
「何を言っているんですか? 私は……。あなたとの婚約が決まったその日から、あなたを幸せにしたくて、これだけ頑張ることができているのです」
「ロハーナ……」
「そして……。幸せのために働くことができているというのは、とても幸運なことなのですよ?」
ロハーナは笑みを浮かべながらそう言うが、マイクの表情は優れなかった。
「だけど、頑張りすぎは良くないよ。昨日も三時間ほどしか眠っていないんだろう? 毎日毎日、使用人たちよりも早く起きて、仕事をしているそうじゃないか」
「あまり眠りすぎると、逆に頭が重くなってしまうのです。心配せずとも、食事に気を使い、昼寝もしていますから。倒れることはありません」
「そうかもしれないけど……」
そんな二人の元に、一人の男が近づいてきた。
元々ケイトハーグ家に仕えていた執事だ。
「……全ての引き渡しが完了いたしましたことを報告します」
「ありがとうございます。あなたも達者で……」
ケイトハーグ家の使用人を何人か連れ戻し、報酬を与える代わりに、諸々の整理をさせた。
こうした敵側への配慮も欠かさない。
これすらもロハーナの仕事だった。
「目元にクマが……。やはり疲れているんだよ。君は」
「そういうあなただって、起きている間はずーっと働いているじゃないですか」
「僕は五時間は眠っているよ。どれだけ忙しくてもね」
「私は私のできる範囲で、全力を尽くしているだけですから。ご心配なさらず」
ロハーナは立ち上がり、マイクの頭を撫でた。
「では、仕事に戻りますので」
「……うん」
マイクはロハーナの背中を見送りながらも、心配していた。
「確かに君の言う通り、太陽が照りつける自然豊かで心地の良い場所だね……」
「そうでしょう?」
ケイトハーグ家から解放してくれた。その礼がしたいとのことで、多くの領民が建設の手伝いをしている。
男爵、子爵両家は、領民への配慮も忘れない。
一日の労働時間は、多くても五時間。
終われば報酬を毎日配り、港で採れた新鮮な魚も提供した。
まさに地獄から天国。領民の仕事が捗らないはずがなかった。
当初の予定を大きく上回るほどの作業スピードで、建設を行うことができている。
こうした領民の意識のコントロールは、男爵家の得意分野だった。
その指示のほとんどを、令嬢であるロハーナが出しているのだ。
「君は本当にすごいよ。……婚約者である僕が情けなくなるほどに」
「何を言っているんですか? 私は……。あなたとの婚約が決まったその日から、あなたを幸せにしたくて、これだけ頑張ることができているのです」
「ロハーナ……」
「そして……。幸せのために働くことができているというのは、とても幸運なことなのですよ?」
ロハーナは笑みを浮かべながらそう言うが、マイクの表情は優れなかった。
「だけど、頑張りすぎは良くないよ。昨日も三時間ほどしか眠っていないんだろう? 毎日毎日、使用人たちよりも早く起きて、仕事をしているそうじゃないか」
「あまり眠りすぎると、逆に頭が重くなってしまうのです。心配せずとも、食事に気を使い、昼寝もしていますから。倒れることはありません」
「そうかもしれないけど……」
そんな二人の元に、一人の男が近づいてきた。
元々ケイトハーグ家に仕えていた執事だ。
「……全ての引き渡しが完了いたしましたことを報告します」
「ありがとうございます。あなたも達者で……」
ケイトハーグ家の使用人を何人か連れ戻し、報酬を与える代わりに、諸々の整理をさせた。
こうした敵側への配慮も欠かさない。
これすらもロハーナの仕事だった。
「目元にクマが……。やはり疲れているんだよ。君は」
「そういうあなただって、起きている間はずーっと働いているじゃないですか」
「僕は五時間は眠っているよ。どれだけ忙しくてもね」
「私は私のできる範囲で、全力を尽くしているだけですから。ご心配なさらず」
ロハーナは立ち上がり、マイクの頭を撫でた。
「では、仕事に戻りますので」
「……うん」
マイクはロハーナの背中を見送りながらも、心配していた。
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