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第8話 伯爵家、終了。
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「はぁ……」
懲りずに屋敷を訪れたウリアを見て、ロハーナはため息をついた。
しかし以前のように、ウリアが声を荒げることはなかった。
「こんにちはロハーナ。私はケイトハーグ家の当主、ウリア・ケイトハーグよ」
「えぇ。何の用事ですか?」
知っていたが、一応聞いておく。
「あなたの領地を譲り受けにきたのよ!」
「そうですか」
ウリアに連れられ、ロハーナは港まで向かうことになった。
「ふふっ。せっかくだから教えてあげる。昔私のお母様は、ラゼーロ様の命を救ったことがあるのよ?」
嘘に嘘を塗り重ね、とうとうここまできたかと、ロハーナはむしろ感心していた。
その後も自慢話は続き、港へ到着。
そこには、公爵家の雇っている騎士が複数人待っていた。
「お待ちしておりました。ロハーナ様」
ウリアには軽い会釈のみ。
イラっとしたが、自分は当主であるから余裕がある。
こういうこともあるだろうと、自分を冷静に抑え込んだ。
「見なさいロハーナ! 騎士様がすでに領地を抑えておいてくれたの!」
ウリアは自分のために公爵家が騎士を送ってくれたと勘違いしているが、実際はロハーナのために送られてきたのである。
「この領地は私のものよ!」
「そうですね……」
騎士が取り囲んでいる箇所がある。
ウリアが来たので、そこから離れた。
……砂浜に、小さい四角形が彫られており、中央におもちゃの旗が刺してある。
旗には、伯爵家の領地であることを示す模様が書かれていた。
本来、領地を示すために置かれる旗は、もっと大きいものであるはずなのだが……。
首を傾げながらも、ウリアは自分なりに解釈をした。
「わかったわ! あまりに領地が広大すぎるから、ここに一つ旗を立てることで済ませようとしたのね! その方が良いわ! だって仕事も少なくて済むんだから!」
「あははっ!」
ついに堪えきれなくなったのか、ロハーナが笑い始めた。
「なにがおかしいのよ!」
こちらも堪えきれず、大声で怒鳴り始める。
「ウリア様。ここがあなたの新たな領地ですよ」
そう言いながら、ロハーナは小さな四角形を指差した。
「は……?」
「公爵家の命令です。伯爵家の領地は全て没収され、新たにこの領地が送られることになりました」
「なにを――」
「良かったですね! 念願の港の領地です! この四角形の中であれば、自由にしていただいて構わないのですよ!」
ウリアは、何がなんだかわからず、頭を抱えた。
するとそこに、一台の馬車が現れた。
降りてきたのは……。
「お、お父様ぁ!?」
下着姿になったレンフローだった。
「ふふっ。屋敷から追い出されたのでしょう」
「そんな……」
レンフローはショックのあまり気絶していた。
「どうしてこんな酷いことするのよ!」
「お教えしましょう。伯爵家は横暴な態度で男爵家の領地を奪い取ろうとしました。それだけではありません。領民への法外な税の押収や、酷い暴力。まだまだありますよ? 闇組織との裏やり取り、それから……」
「うるさい! 黙れぇ!」
ロハーナに殴りかかろうとしたウリアを、騎士が羽交い絞めにした。
「国民全員が、伯爵家の崩壊を望んでいたのです。不幸にもその引き金を自ら引いたのが、あなたですよ。ウリア・ケイトハーグ」
「いやああぁああ!!! 離せぇ!」
広い砂浜に、ウリアの叫び声が響いた。
こうして伯爵家は、全てを失ったのである。
懲りずに屋敷を訪れたウリアを見て、ロハーナはため息をついた。
しかし以前のように、ウリアが声を荒げることはなかった。
「こんにちはロハーナ。私はケイトハーグ家の当主、ウリア・ケイトハーグよ」
「えぇ。何の用事ですか?」
知っていたが、一応聞いておく。
「あなたの領地を譲り受けにきたのよ!」
「そうですか」
ウリアに連れられ、ロハーナは港まで向かうことになった。
「ふふっ。せっかくだから教えてあげる。昔私のお母様は、ラゼーロ様の命を救ったことがあるのよ?」
嘘に嘘を塗り重ね、とうとうここまできたかと、ロハーナはむしろ感心していた。
その後も自慢話は続き、港へ到着。
そこには、公爵家の雇っている騎士が複数人待っていた。
「お待ちしておりました。ロハーナ様」
ウリアには軽い会釈のみ。
イラっとしたが、自分は当主であるから余裕がある。
こういうこともあるだろうと、自分を冷静に抑え込んだ。
「見なさいロハーナ! 騎士様がすでに領地を抑えておいてくれたの!」
ウリアは自分のために公爵家が騎士を送ってくれたと勘違いしているが、実際はロハーナのために送られてきたのである。
「この領地は私のものよ!」
「そうですね……」
騎士が取り囲んでいる箇所がある。
ウリアが来たので、そこから離れた。
……砂浜に、小さい四角形が彫られており、中央におもちゃの旗が刺してある。
旗には、伯爵家の領地であることを示す模様が書かれていた。
本来、領地を示すために置かれる旗は、もっと大きいものであるはずなのだが……。
首を傾げながらも、ウリアは自分なりに解釈をした。
「わかったわ! あまりに領地が広大すぎるから、ここに一つ旗を立てることで済ませようとしたのね! その方が良いわ! だって仕事も少なくて済むんだから!」
「あははっ!」
ついに堪えきれなくなったのか、ロハーナが笑い始めた。
「なにがおかしいのよ!」
こちらも堪えきれず、大声で怒鳴り始める。
「ウリア様。ここがあなたの新たな領地ですよ」
そう言いながら、ロハーナは小さな四角形を指差した。
「は……?」
「公爵家の命令です。伯爵家の領地は全て没収され、新たにこの領地が送られることになりました」
「なにを――」
「良かったですね! 念願の港の領地です! この四角形の中であれば、自由にしていただいて構わないのですよ!」
ウリアは、何がなんだかわからず、頭を抱えた。
するとそこに、一台の馬車が現れた。
降りてきたのは……。
「お、お父様ぁ!?」
下着姿になったレンフローだった。
「ふふっ。屋敷から追い出されたのでしょう」
「そんな……」
レンフローはショックのあまり気絶していた。
「どうしてこんな酷いことするのよ!」
「お教えしましょう。伯爵家は横暴な態度で男爵家の領地を奪い取ろうとしました。それだけではありません。領民への法外な税の押収や、酷い暴力。まだまだありますよ? 闇組織との裏やり取り、それから……」
「うるさい! 黙れぇ!」
ロハーナに殴りかかろうとしたウリアを、騎士が羽交い絞めにした。
「国民全員が、伯爵家の崩壊を望んでいたのです。不幸にもその引き金を自ら引いたのが、あなたですよ。ウリア・ケイトハーグ」
「いやああぁああ!!! 離せぇ!」
広い砂浜に、ウリアの叫び声が響いた。
こうして伯爵家は、全てを失ったのである。
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