悪役令嬢の妹の罠で、体を奪われました。だけど私は、諦めません……!

冬吹せいら

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魔女の呪い。

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「ここに、リオロ・エンラベルと、ナンナ・セラピーニャの結婚を祝して……!光の粉を振りまく!」

司会の魔法使いの掛け声で、王宮のバルコニーから、たくさんの光が振りまかれた。

「わぁ……。綺麗だね!ママ!」
「そうね!まるで二人の結婚を、世界が喜んでいるかのようだわ!」

後ろの方で和やかに会話する親子の会話を聞き、私は思わず頬が緩んだ。民を楽しませるため、リオロ様と何日もかけて話し合ったサプライズ。成功して良かった。

「……リオロ様。綺麗ですね」
「そうだね……」
「……」

光を眺めるリオロ様の顔は、この輝かしい景色に、とても似合っている。私なんかが結婚するのは、本当にもったいないと思うほど、美しいお方だなと、改めて思ってしまった。

「ん?どうしたんだいナンナ。僕の顔に、何かついているのかい?」
「い、いえ……。その……。リオロ様のお顔が、あまりに素敵だったものですから」
「……嬉しいよ。だけど、今はこの景色を見よう。ほら、二回目が来るよ」
「はい……!」

魔法使いの掛け声で、光の数がさらに増した。大勢集まってくれた民の歓声が上がる。



こうして、結婚式は大成功という結果に終わり、私は満足していた。

――ただ一つ。妹のレーンが、姿を見せなかったことを除けば。

☆ ☆ ☆

「レーン。どうして来てくれなかったの?」
「だから、今こうして部屋に呼んだのよ。ほら、結婚おめでとう」

私は……。呪いの指輪をナンナに渡した。
ナンナは泣きそうな顔になりながら、何の疑いも無く、それを指に嵌めると、私を抱きしめた。

「ありがとうレーン……。私、とっても幸せよ」
「そうでしょうね。あれだけの民に祝われて……」

……羨ましい。
部屋にまで聞こえるほどの歓声が、耳障りだった。

だけど、それも今日で終わりだ。

「ごめんね。ナンナ」
「え?どうしたのレーン。謝ることなんて、なにもないはずよ」
「違うの……」

私が合図をすると、魔女が姿を現した。

「誰!?」
「哀れなご令嬢じゃ……。その指輪は、嵌めた者の魂の所有権を奪うアイテムなのじゃよ」
「魂の……。所有権?」
「魔女。細かいことはいいのよ。さっさと始めて」
「くっくっく。この時間が楽しいと言うのに。これじゃから子供はいかんわいな……」
「いいから!」
「レーン。これは一体……」
「ナンナが悪いんだよ?私と違って、なんだってできて、可愛くて……。痩せてて!」
「そ、そんな。私は」
「こんな体に……。なってみなさいよ!!!!」

魔女が杖を振った瞬間。意識が途絶えた。

☆ ☆ ☆

「えっ……」

身体が急に重くなった。それだけじゃない、目の前に……。私がいるのだ。

「鏡を見てごらんなさい。ナンナ」

私がそう言うので、フラフラになりながら、鏡を見ると……。

――そこには、レーンが立っていた。

「そんな……。体が?」
「ひっひっひ。行く末が楽しみだよぉ……」

魔女は不気味な発言をして、消えてしまった……。

「レーン。これは……?」
「わかるでしょ?今日からは、私がナンナ。あなたがレーンよ」
「悪い冗談でしょう?結婚を祝して、サプライズを……」
「じゃあね。醜い豚。床に這いつくばって、餌を待ちなさい」
「レーン!」

レーンが行ってしまった……。まさか本当に、こんなことってあるのだろうか。
何度確認しても、レーンにしか見えない。せっかく可愛い顔をしているのに、顔についた肉が、それを邪魔している。
歩くだけで息が切れるほど、お腹に肉がついていた。そして、肌が汚い。そこら中にかきむしって赤くなった箇所があり、見ているのも痛々しかった。

「……本当に、レーンになってる」

……レーンは、私を憎んでいたのだろうか。

何度だって歩み寄ろうとした。でも、レーンの方から、拒んできて……。

……ダメよ。私。人のせいにすることは、何よりの恥。

とりあえず、心を落ち着かせることから、始めましょう。
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