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ナンナの周りは愛が満ち溢れている。

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体が軽い!
思わずスキップしてしまう。まるで世界が変わったみたいな気分。

……いや、本当に変わったのか。

魔女の呪いによって、私はナンナの体を手に入れることができた。ずっとずっと、このタイミングを狙っていたのだ。

魔女の存在を知ったのは、五歳のころ。最初はパパとママの買ってくれた絵本のお話。だけど、それから興味を持って、古い書物が保管されている施設……。時には隣国まで出向いて、ありとあらゆる魔女の情報を収集した。

様々な情報に触れる中で、どうしたら一切努力せず、それでいて楽に、ナンナのような女になれるのか……。そればかりを考えていた。

魔女の呪いで、魂を入れ替える。この方法は、大金さえ払えば実行できることを知った私は……。ナンナの結婚を待ち望んでいた。

私だってバカじゃない。何の努力もしてこなかった私だから、例えナンナの体を得ることができても、そこから先の人生が心配だった。彼女にできることのほとんどを、私はすることができない。正体がバレてしまう可能性だって、否定できなかったのだ。

……だから、このタイミング。
この国では、一度結婚した夫婦は、どちらかが死なない限り離縁できない。さらに、妻となった女は基本的に、夫をサポートするだけの人生を送ることになる。その方法は様々だ。別に、魔法が使える必要はない。ただ……。そばにいて、癒しを与える。それだけでも、文句を言う人はいないだろう。

つまり私は、何一つできることなんてないけれど、夫のそばで、ただ ボーっと過ごしていれば……。それでいいということになる。

「あら?お嬢様。随分とご機嫌ですね!」

ナンナに付いているメイドのフェンシアが、笑顔で話しかけてきた。彼女は素晴らしい性格の持ち主で、醜い姿である私にも、同じような笑顔で接してくれる。私に付いているメイドのカレンは……。すごく冷たいのに。

思わず、フェンシアに抱き着いてしまった。今日からは……。この優しい子が、私のメイドだ。

「お、お嬢様!?いかがなされましたか!」

戸惑いながらも、フェンシアが抱きしめ返してくれた。カレンだったら、多分突き返されている。甘えないでください……。そんな風に言いながら。

「ちょっと……。抱きしめたくなったの」
「えへへ……。嬉しいです。いつもはお嬢様、頭を撫でてくれるくらいなのに……」
「色々、良いことがあったの。頂いた愛を、こうして他の人にも分け与えているだけよ?」
「まぁ……。なんてお優しいの!」
「ふぇ、フェンシア……。苦しいわ?そんなに抱きしめないで?」

ナンナの周りは、愛に満ちている。
……今日からは、これが私。

――私が、ナンナ・セラピーニャよ。
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