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レーン改造計画。

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「レーン様。お食事の時間です」
「ありがとうカレン。そこへ置いてくれる?」
「……は?」

レーンに付いているメイドのカレンが、驚いた表情をしている。
しまった。レーンはきっと、食事が運ばれて来た瞬間に、食べ始めるのだろう。

「い、いえ。ちょっとだけ体調が優れなくて」
「そうですか……」
「……」
「……あの、お薬か何か、お持ちしましょうか」
「いえ。大丈夫よ」
「……」

カレンが近づいてきて、私の顔を覗き込んでくる。
まさか、もう気がついたの?

魔女の呪いは、自分から体が入れ替わったことについて、言及できないようになっている。だから、誰かに気が付いてもらうしかないのだ。

「……いつもより、目がしっかりと開いているような」
「え、えぇそうなの。少し眠って、スッキリしたからかしら」

これは嘘だ。レーンの体になってしまってから、だいたい二時間程度、今後の予定を考えていた。

カレンは首を傾げ、私の目をじ~っと見つめてくる。

「……まぁ、いいですけど」

しかし、そう冷たく言い放って、部屋を出てしまった。……さすがに、そう簡単には気が付けないか。

レーンがいつもカレンの悪口を言っていたから、どんなに怖い人なんだろうって、ちょっぴり警戒していたけど……。意外と優しそうな人で、安心した。
フェンシアも、カレンはとっても良い子なんですよ!なんて言っていたし、きっとレーンを想うあまり、言葉が厳しくなることがあったんだと思う。

……さて、今後の作戦。

まず、この体をどうにかしないといけない。運ばれてきた食事は、どれも体に悪いものばかりだ。明日からのメニューは、全部変更させてもらおう。

あとは運動。いきなり激しいのは無理だけど、適度にこの部屋で体を動かすくらいなら、耐えられると思う。

だいたい二週間あれば……。外での運動が可能になるくらいのレベルには到達できるはず。

それから、肌のケア。レーンはあまり風呂に入っていなかったみたいだから、その頻度の改善をしていこう。肌荒れは……。レーンと私で、合う薬と合わない薬がそれぞれ違うかもしれないから、しばらくは色々試してみる必要があるかもしれない。

あとは髪型。運動しやすいものがいいだろう。明日にでもカレンに整えてもらいたい。

「……頑張ろう。レーン」

私は鏡に向かって、そう呟いた。

今日から私は、レーン・セラピーニャとして生きていく。

レーンには、自分で気が付けていない魅力が、たくさんあるのだ。
それを彼女に示したい。努力すれば、人は変わることができるんだということを――。
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