4 / 12
優しい家族
しおりを挟む
「ごちそうさまでした」
ウシャーラの母、カムシアの作る料理は、ウシャーラの言う通り、ものすごく美味しかった。
客人ながら、かなりの量食べてしまって、少し恥ずかしかったが、久々に食べる手の込んだ食事だったので、仕方ないと思うことにした。
「パパは今、遠くの国に遠征に行ってるんだよ!」
食後、ウシャーラが、父の話をし始めた。
「僕もいつか騎士になって、人を守るんだ!」
「頼もしいね」
キャロに頭を撫でられ、ウシャーラは頬を綻ばせた。
「ところでキャロさんは、一体どこからいらっしゃったのですか? 随分気品があるというか……。まるで、お嬢様みたいだなぁって」
さて、どう答えるべきか。
濁すこともできたが、これから先のことを考えれば、正直に話して、仕事ができそうな場所を教えてもらった方が良いのかもしれない。
迷ったが、キャロは、全てを話すことにした。
「えぇっ!? 子爵家のご令嬢!?」
「そ、そんなに驚かなくても……」
「驚きますよ! しまったわ。あんなお粗末な料理を、食べさせてしまって……。もっと高級な肉だとか、使うべきでしたよね。申し訳ございませんでした……」
「いえ……。あの、今日食べた料理の方が、よっぽどごちそうでしたから、ご安心ください」
妹のマーシュは、贅沢に様々な料理を振る舞われていたが、キャロの場合、なぜか贅沢をしてはいけないという教育を受けさせられ、質素な食事しか、与えられなかった。
……シチューなんてものを食べたのは、去年のクリスマス以来だ。
「ねぇママ。令嬢って何?」
「すごく偉い方って意味よ!」
「へぇ! キャロって、すごい人だったんだ!」
「呼び捨てしちゃダメよ! すいませんキャロ様……」
「いえ。その……。もう、家を追い出されているわけですから。貴族でもなんでもないですよ」
「ママ。そうやって言ってるよ?」
「しかし……。……あの、明日、王宮に行きましょう。事情を説明すれば、間違いなく、支援を受けられるはずです」
カムシアが、キャロの手を握った。
「カ、カムシアさん?」
「……私も実は、両親がちょっと変わった人で。あの、同じ目線で語るのは、失礼かと思うのですが、家を追い出されて、それで今の夫に拾われて……。少しだけ、近いものを感じたんです」
気が付けば、カムシアの目が潤んでいる。
「理不尽を許す必要も、受け入れる必要もありません。我が国の国王、リカメロ様は、非常に慈悲深いお方ですから、きっとキャロ様を受け入れるでしょう」
「……ありがとうございます」
キャロとカムシアは、強く抱きしめ合った。
――そして。
翌日、王宮へと向かったキャロは、運命の再会を果たすこととなる。
それは、キャロの逆転人生、及び……。キャロを追い出した、ブリジット家の没落の始まりでもあった。
ウシャーラの母、カムシアの作る料理は、ウシャーラの言う通り、ものすごく美味しかった。
客人ながら、かなりの量食べてしまって、少し恥ずかしかったが、久々に食べる手の込んだ食事だったので、仕方ないと思うことにした。
「パパは今、遠くの国に遠征に行ってるんだよ!」
食後、ウシャーラが、父の話をし始めた。
「僕もいつか騎士になって、人を守るんだ!」
「頼もしいね」
キャロに頭を撫でられ、ウシャーラは頬を綻ばせた。
「ところでキャロさんは、一体どこからいらっしゃったのですか? 随分気品があるというか……。まるで、お嬢様みたいだなぁって」
さて、どう答えるべきか。
濁すこともできたが、これから先のことを考えれば、正直に話して、仕事ができそうな場所を教えてもらった方が良いのかもしれない。
迷ったが、キャロは、全てを話すことにした。
「えぇっ!? 子爵家のご令嬢!?」
「そ、そんなに驚かなくても……」
「驚きますよ! しまったわ。あんなお粗末な料理を、食べさせてしまって……。もっと高級な肉だとか、使うべきでしたよね。申し訳ございませんでした……」
「いえ……。あの、今日食べた料理の方が、よっぽどごちそうでしたから、ご安心ください」
妹のマーシュは、贅沢に様々な料理を振る舞われていたが、キャロの場合、なぜか贅沢をしてはいけないという教育を受けさせられ、質素な食事しか、与えられなかった。
……シチューなんてものを食べたのは、去年のクリスマス以来だ。
「ねぇママ。令嬢って何?」
「すごく偉い方って意味よ!」
「へぇ! キャロって、すごい人だったんだ!」
「呼び捨てしちゃダメよ! すいませんキャロ様……」
「いえ。その……。もう、家を追い出されているわけですから。貴族でもなんでもないですよ」
「ママ。そうやって言ってるよ?」
「しかし……。……あの、明日、王宮に行きましょう。事情を説明すれば、間違いなく、支援を受けられるはずです」
カムシアが、キャロの手を握った。
「カ、カムシアさん?」
「……私も実は、両親がちょっと変わった人で。あの、同じ目線で語るのは、失礼かと思うのですが、家を追い出されて、それで今の夫に拾われて……。少しだけ、近いものを感じたんです」
気が付けば、カムシアの目が潤んでいる。
「理不尽を許す必要も、受け入れる必要もありません。我が国の国王、リカメロ様は、非常に慈悲深いお方ですから、きっとキャロ様を受け入れるでしょう」
「……ありがとうございます」
キャロとカムシアは、強く抱きしめ合った。
――そして。
翌日、王宮へと向かったキャロは、運命の再会を果たすこととなる。
それは、キャロの逆転人生、及び……。キャロを追い出した、ブリジット家の没落の始まりでもあった。
71
あなたにおすすめの小説
せっかく家の借金を返したのに、妹に婚約者を奪われて追放されました。でも、気にしなくていいみたいです。私には頼れる公爵様がいらっしゃいますから
甘海そら
恋愛
ヤルス伯爵家の長女、セリアには商才があった。
であれば、ヤルス家の借金を見事に返済し、いよいよ婚礼を間近にする。
だが、
「セリア。君には悪いと思っているが、私は運命の人を見つけたのだよ」
婚約者であるはずのクワイフからそう告げられる。
そのクワイフの隣には、妹であるヨカが目を細めて笑っていた。
気がつけば、セリアは全てを失っていた。
今までの功績は何故か妹のものになり、婚約者もまた妹のものとなった。
さらには、あらぬ悪名を着せられ、屋敷から追放される憂き目にも会う。
失意のどん底に陥ることになる。
ただ、そんな時だった。
セリアの目の前に、かつての親友が現れた。
大国シュリナの雄。
ユーガルド公爵家が当主、ケネス・トルゴー。
彼が仏頂面で手を差し伸べてくれば、彼女の運命は大きく変化していく。
婚約破棄されたけど、どうして王子が泣きながら戻ってくるんですか?
ほーみ
恋愛
「――よって、リリアーヌ・アルフェン嬢との婚約は、ここに破棄とする!」
華やかな夜会の真っ最中。
王子の口から堂々と告げられたその言葉に、場は静まり返った。
「……あ、そうなんですね」
私はにこやかにワイングラスを口元に運ぶ。周囲の貴族たちがどよめく中、口をぽかんと開けたままの王子に、私は笑顔でさらに一言添えた。
「で? 次のご予定は?」
「……は?」
私を見下していた婚約者が破滅する未来が見えましたので、静かに離縁いたします
ほーみ
恋愛
その日、私は十六歳の誕生日を迎えた。
そして目を覚ました瞬間――未来の記憶を手に入れていた。
冷たい床に倒れ込んでいる私の姿。
誰にも手を差し伸べられることなく、泥水をすするように生きる未来。
それだけなら、まだ耐えられたかもしれない。
だが、彼の言葉は、決定的だった。
「――君のような役立たずが、僕の婚約者だったことが恥ずかしい」
悪役令嬢ですが、今日も元婚約者とヒロインにざまぁされました(なお、全員私を溺愛しています)
ほーみ
恋愛
「レティシア・エルフォード! お前との婚約は破棄する!」
王太子アレクシス・ヴォルフェンがそう宣言した瞬間、広間はざわめいた。私は静かに紅茶を口にしながら、その言葉を聞き流す。どうやら、今日もまた「ざまぁ」される日らしい。
ここは王宮の舞踏会場。華やかな装飾と甘い香りが漂う中、私はまたしても断罪劇の主役に据えられていた。目の前では、王太子が優雅に微笑みながら、私に婚約破棄を突きつけている。その隣には、栗色の髪をふわりと揺らした少女――リリア・エヴァンスが涙ぐんでいた。
婚約破棄された途端、隣国の冷酷王子に溺愛されました
ほーみ
恋愛
「――本日をもって、レイラ・アストレッドとの婚約を破棄する!」
玉座の間に響き渡る鋭い声。
それは私の元婚約者である王太子・ユリウスの宣告だった。
広い空間にざわめきが広がる。
私はゆっくり顔を上げ、冷たい笑みを浮かべた。
「あら、そう。ようやく?」
「……なに?」
「婚約破棄してくれてありがとう」って言ったら、元婚約者が泣きながら復縁を迫ってきました
ほーみ
恋愛
アラン王太子の訪問から三日後。私の屋敷には、まるで王都中が興味津々とでも言わんばかりに、招かれざる客がひっきりなしに現れていた。
「ごきげんよう、レティシア様。少しだけお時間を――」
「申し訳ありません、ただいまお嬢様は“療養中”ですので」
メルの冷ややかな切り返しに、来客の顔が強ばるのを窓越しに見て、私はくすりと笑った。
(ふふ、いい気味)
婚約破棄された女に、ここまで関心を寄せるなんて皮肉な話だけど――貴族社会なんてそんなもの。誰かが落ちれば、その跡地を漁ろうと群がる。
婚約破棄された瞬間、隣国の王子が「その人、僕がもらいます」と言った
ほーみ
恋愛
婚約破棄された瞬間、隣国の王子が「その人、僕がもらいます」と言った
「――メアリー・グランツ。お前との婚約は破棄する」
王城の大広間に響いたその声に、空気が凍りついた。
周囲にいた貴族たちがざわめき、侍女たちが息を呑む。
私――メアリーは、胸の奥がきゅっと痛んだ。
けれど、それでも背筋を伸ばして、婚約者である王太子エドガーをまっすぐ見据えた。
婚約破棄?はい、どうぞお好きに!悪役令嬢は忙しいんです
ほーみ
恋愛
王国アスティリア最大の劇場──もとい、王立学園の大講堂にて。
本日上演されるのは、わたくしリリアーナ・ヴァレンティアを断罪する、王太子殿下主催の茶番劇である。
壇上には、舞台の主役を気取った王太子アレクシス。その隣には、純白のドレスをひらつかせた侯爵令嬢エリーナ。
そして観客席には、好奇心で目を輝かせる学生たち。ざわめき、ひそひそ声、侮蔑の視線。
ふふ……完璧な舞台準備ね。
「リリアーナ・ヴァレンティア! そなたの悪行はすでに暴かれた!」
王太子の声が響く。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる