なんでも私のせいにする姉に婚約者を奪われました。分かり合えることはなさそうなので、姉妹の関係を終わらせようと思います。

冬吹せいら

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なんでも妹のせいにする姉

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「あなたのせいよ。リズ」

 またか……。
 そう思いながら、侯爵家令嬢――リズ・ワグナーはため息をついた。

「お姉様。毎度毎度部屋に呼び出され、説教を受けるのはこりごりです。良い加減やめてくれませんか?」
「だって、あなたが悪いんだもの」
「……どうして、お姉様が痩せられないことが、私のせいになるんですか?」

 リズが尋ねると、姉のミゼス・ワグナーは腕を組んだ。

「ふんっ。また同じ説明をさせるつもり?」
「いえ。結構です」
「いいわ。説明してあげる」
「結構ですと申しましたが……」
「私の方が絶対に可愛いのに、あなたがちょっと勉強できるからって調子に乗っているのがムカつくの。だから私はストレスで太ってしまうのよ」

 改めて聞いても、酷い言いがかりだと思った。
 しかし、あまり反論すると、ミゼスは泣き喚きながら物を投げつけてくるので、できれば刺激したくない。
 ……もう十八歳になる姉の幼稚さに、リズは呆れていた。

「ですから……。そこまで太っているようには見えませんよ?」

 これは本心だった。 
 ミゼスはむしろ、付くべき場所に肉が集まっている印象すらある。
 しかし、ミゼスは首を横に振った。

「男性はね。あなたみたいなスラっとした体形が好みなのよ。……お茶会でも、あなたの方がよほど人気じゃない」
「それは……」

 何も容姿だけが原因ではない。
 と、言いたかったが、言葉を飲み込んだ。

「良いから謝りなさいよ。あなたが全部悪いの」
「……申し訳ございません」

 こうして謝ってしまえば、すぐに終わる。
 リズはできるだけエネルギーを使いたくなかった。
 しかし、その素直な姿勢が、逆にミゼスの神経を逆なでしてしまったらしい。

 今日のミゼスは、他にもストレスになるような場面にいくつも直面していたのだ。

「朝からジャムを塗ったパンをカーペットの上に落としたの。家を出れば鳩の糞がお気に入りの服にポトン。お茶会では事前に呼んだ友人が数人キャンセルで盛り上がらない。帰りに奴隷を蹴飛ばしたら足を怪我して……。全部あなたのせいよ! この疫病神!」

 ミゼスが、リズの肩を思いっきりどついた。

「……痛いです」
「それが私の心の痛みよ! ……反省してる?」
「……」

 さすがにこの態度には、リズも黙っていられない。
 ミゼスを睨みつけ、拳を握りしめている。

「へぇ。反抗的な態度を取るじゃない。良いわ……。そろそろ姉の強さを見せつけてやるわよ」
「そうですか」

 リズはドアを雑に開け、部屋を出て行った。

「見てなさいよ? 私が本気を出せば、あなたなんて……」

 ドアを睨みつけながら、ミゼスは呟いた。
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