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最後のチャンスを手放す姉
「どうされましたか? お姉様。こんなところで」
「……あんたの仕業でしょ?」
「なにがですか?」
「とぼけないで!」
ミゼスは立ち上がり、リズの胸倉をつかんだ。
しかし、リズは余裕の表情をミゼスに向ける。
「何のことだか、さっぱりです」
「……北の国の令息から、送金が止まったのよ」
「へぇ。それは困りましたねぇ」
「あんた、しばらく姿が見えなかったけど、どこに行ってたの?」
「さぁ」
「くっ!」
ミゼスはリズの体を思いっきり押した。
リズの方が軽いので、地面に倒されてしまう。
「……すぐそうやって、暴力を振るいますよね」
「黙りなさい!」
上に馬乗りになろうとしたミゼスから、慌てて距離を取った。
ここ数日、メイドや奴隷への八つ当たりが増えているミゼスは、危険な状態だ。
もはや令嬢ではなく、動物のように獰猛である。
「どうやら、随分お金に困っておられるようですね?」
「……そんなことないわよ。借りられる相手なんて、いくらでもいるんだから」
「借りようとしている時点で、困っているということですが?」
「うるさい!」
隙あらば、暴力を振るおうとしてくる姉に、リズは呆れてしまった。
何も、喧嘩をするために、わざわざミゼスの前に現れたわけではないのだ。
「お姉様。……停戦しませんか?」
「は?」
「私たちは姉妹です。争うことが適当とは思えません。もしお姉様が、今までの過ちを反省し、私に謝罪してくれるのであれば……。私も考えを改めることができます」
「何を言ってるの? 私が謝罪?」
ミゼスは鼻で笑った。
「バカ言うんじゃないわよ! あんたのせいでこうなったのに! どうして私が謝罪しなきゃならないのよ!」
「……まだ抵抗するつもりですか。信用を金で買っていたお姉様が、その金を失ったのです。一体どうやってこれから戦うつもりなのですか?」
「……見てなさい。侯爵令嬢の長女の力を甘く見たことを、後悔させてやるんだから」
それだけ言って、ミゼスは立ち去って行った。
リズはそのまま、伯爵家の門を叩く。
◇
「……申し訳ございません」
ギャレンは、ただ謝るばかりだった。
「私とあなたの婚約は、まだ破棄されたわけではありません」
ギャレンが目を見開いた。
「本当ですか……?」
「当然です。まだ幸い、私と姉のことは明るみになっていませんから。黙っていれば済む話です。……そろそろ目が覚めたでしょう? あの最悪な女と私、どっちが良いですか?」
リズは、ギャレンの目を真っすぐ見つめながら尋ねた。
ギャレンの答えは決まっている。
「……もちろん、リズ様です」
「良い子です。よく言えましたね」
リズに頭を撫でられ、ギャレンは涙を流した。
「……あんたの仕業でしょ?」
「なにがですか?」
「とぼけないで!」
ミゼスは立ち上がり、リズの胸倉をつかんだ。
しかし、リズは余裕の表情をミゼスに向ける。
「何のことだか、さっぱりです」
「……北の国の令息から、送金が止まったのよ」
「へぇ。それは困りましたねぇ」
「あんた、しばらく姿が見えなかったけど、どこに行ってたの?」
「さぁ」
「くっ!」
ミゼスはリズの体を思いっきり押した。
リズの方が軽いので、地面に倒されてしまう。
「……すぐそうやって、暴力を振るいますよね」
「黙りなさい!」
上に馬乗りになろうとしたミゼスから、慌てて距離を取った。
ここ数日、メイドや奴隷への八つ当たりが増えているミゼスは、危険な状態だ。
もはや令嬢ではなく、動物のように獰猛である。
「どうやら、随分お金に困っておられるようですね?」
「……そんなことないわよ。借りられる相手なんて、いくらでもいるんだから」
「借りようとしている時点で、困っているということですが?」
「うるさい!」
隙あらば、暴力を振るおうとしてくる姉に、リズは呆れてしまった。
何も、喧嘩をするために、わざわざミゼスの前に現れたわけではないのだ。
「お姉様。……停戦しませんか?」
「は?」
「私たちは姉妹です。争うことが適当とは思えません。もしお姉様が、今までの過ちを反省し、私に謝罪してくれるのであれば……。私も考えを改めることができます」
「何を言ってるの? 私が謝罪?」
ミゼスは鼻で笑った。
「バカ言うんじゃないわよ! あんたのせいでこうなったのに! どうして私が謝罪しなきゃならないのよ!」
「……まだ抵抗するつもりですか。信用を金で買っていたお姉様が、その金を失ったのです。一体どうやってこれから戦うつもりなのですか?」
「……見てなさい。侯爵令嬢の長女の力を甘く見たことを、後悔させてやるんだから」
それだけ言って、ミゼスは立ち去って行った。
リズはそのまま、伯爵家の門を叩く。
◇
「……申し訳ございません」
ギャレンは、ただ謝るばかりだった。
「私とあなたの婚約は、まだ破棄されたわけではありません」
ギャレンが目を見開いた。
「本当ですか……?」
「当然です。まだ幸い、私と姉のことは明るみになっていませんから。黙っていれば済む話です。……そろそろ目が覚めたでしょう? あの最悪な女と私、どっちが良いですか?」
リズは、ギャレンの目を真っすぐ見つめながら尋ねた。
ギャレンの答えは決まっている。
「……もちろん、リズ様です」
「良い子です。よく言えましたね」
リズに頭を撫でられ、ギャレンは涙を流した。
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